終端クランプ事件

投稿日: 2017/06/24 23:22:22

今日は平成26年(ワ)第10489号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。本事件の原告である株式会社電研社は、判決文によると、電力・通信用機材の製造、販売を業とする会社だそうです。J-PlatPatで会社の名称で検索したところ18件ヒットしました。被告であるヒエン電工株式会社も電力・通信用機材の製造、販売を業とする会社だそうです。こちらは22件ヒットしました。どちらも既に消滅している特許も含まれているので、実際はもっと少ないです。

 

1.手続の時系列の整理(特許第5485640号)

① 本件特許出願は出願後3年の期限近くに出願審査請求されています。また、出願請求後に早期審査請求などの手段を使って権利化を急いだ様子もありません。これからすると出願審査請求時点では被告製品を把握していなかったと思われます。しかし、特許が登録されてから訴訟を提起するまで1年もかかっていません。登録とほぼ同じ時期に被告製品の情報を入手した可能性があります。

② 判決文に「被告は、遅くとも平成26年3月以降、別紙イ号物件目録記載の製品(以下「イ号物件」という。)を製造し、販売し、販売のための展示をしている。」とありました。そうすると被告製品を入手した原告が非常に素早く行動した、ということだと思われます。

2.本件特許の内容

【請求項1】

A 所定のケーブルを電柱間に吊支するために、前記電柱間に渡した吊線(8)に巻き付けて取付けた螺旋ハンガー(9)の終端部を前記吊線(8)に固定するための螺旋ハンガー用クランプであって、

B 前記吊線(8)と前記螺旋ハンガー(9)とを交差させた状態で挟持する第1プレート(1)及び第2プレート(2)と、

C これら第1プレート(1)及び第2プレート(2)の各一端同士を緊締するボルト(4)及びナット(5)と、を備え

前記第1プレート(1)及び第2プレート(2)の各一端側に前記ボルト(4)を挿通させるボルト挿通孔(13、23)を形成するとともに、一端同士を前記ボルト(4)により連結される閉塞端とし、

E 前記第1プレート(1)及び第2プレート(2)の各他端を開放端とするとともに、他端同士を係合する係合部(20)が設けられており、

前記係合部(20)は、前記第1プレート(1)の他端を鉤形に形成するとともに、前記第2プレート(2)側へ折り返して起立状に形成したフック部(12a)と、

前記第2プレート(2)の他端に一側が開口するように形成した切欠部(22a)とからなる、こと

H を特徴とする螺旋ハンガー用クランプ。

3.被告製品(イ号物件)

【被告製品の構成】

a 所定のケーブルを電柱間に吊支するために、前記電柱間に渡した吊線に巻き付けて取付けた螺旋ハンガーの終端部を前記吊線に固定するための螺旋ハンガー用クランプであって、

b 前記吊線と前記螺旋ハンガーとを交差させた状態で挟持する上固定金具及び下固定金具と、

c これら上固定金具及び下固定金具の各一端同士を緊締するボルト及びナットと、を備え、

d 前記上固定金具及び下固定金具の各一端側に前記ボルトを挿通させるボルト挿通孔を形成するとともに、一端同士を前記ボルトにより連結される閉塞端とし、

e 前記上固定金具及び下固定金具の各他端を開放端とするとともに、他端同士を係合する係合部が設けられており、

f 前記係合部は、前記上固定金具の他端をT字形に形成するとともに、前記下固定金具側へ折り返して起立状に形成した係止部と、

g 前記下固定金具の他端に一側が開口するように形成した切欠部とからなる、こと

h を特徴とする螺旋ハンガー用クランプ。


4.争点

(1)イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否・争点1)

(2)イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するか(均等侵害の成否・争点2)

(3)本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか(争点3)

(4)訂正の再抗弁の成否(争点4)

(5)原告の損害額(争点5)

5.裁判所の判断

5.1 争点1(イ号物件は本件発明の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否))

イ号物件が構成要件Hを充足することについては当事者間に争いがないが、構成要件AないしGの充足については、争いがある。

(1)-省略-

(2)構成要件Aについて

原告は、イ号物件の構成aは構成要件Aを充足する旨主張するところ、被告は、構成要件Aの「螺旋ハンガーの終端部」が不明であるとして、その充足を争っている。

ところで、構成要件Aの「螺旋ハンガーの終端部」にいう「終端部」について、特許請求の範囲あるいは本件明細書において明確な定義はないが、本件明細書には、「本発明は、電柱間に渡した吊線に、通信ケーブル等を架設する際に用いる螺旋ハンガーの終端をクランプするための螺旋ハンガー用クランプに関するものである。」(【0001】)、「本発明は、所定のケーブルを電柱間に吊支するために、前記電柱間に渡した吊線に巻き付けて取付けた螺旋ハンガーの終端部を前記吊線に固定するための螺旋ハンガー用クランプであ」る(【0008】)、「本発明によれば、簡単な操作で確実に吊線と螺旋ハンガーとを挟持することができるため、螺旋ハンガーの架線作業において、当該螺旋ハンガーの終端部を、吊線に対して極めて容易に、かつ確実に連結固定することができる。」(【0010】)などの記載がある。そして、通常、「終端部」とは終わる端の部分を指すことからすれば、「螺旋ハンガーの終端部」とは、連続して吊線に巻き付けて取り付けられた螺旋ハンガーが途切れる箇所で、螺旋ハンガー用クランプで吊線に固定される部分を指すものとして用いられるものと解するのが相当である。

被告は、イ号物件のそれは、螺旋ハンガーの「終端近傍の一部」であり、「終端部」ではないと争うが、上記の意味での「終端部」とは、一点で捉えられるべき狭い部分ではなく、部品の部分として面で捉えるのが相当であるから、被告がいうイ号物件の螺旋ハンガーの「終端近傍の一部」も「終端部」といって差し支えなく、イ号物件は「螺旋ハンガーの終端部を前記吊線に固定するための螺旋ハンガー用クランプ」であるといえ、イ号物件の構成aは、構成要件Aを充足するものといえる。

(3)構成要件Bについて

原告は、イ号物件が別紙対比表「原告主張イ号物件の構成」欄における構成bのとおりであり、上固定金具が本件発明にいう「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当するとして、構成要件Bの充足を主張しているところ、被告は、本件発明の「第1プレート」が、①ボルト頭側に位置し、②吊線用溝部が形成されており、かつ③吊線が長手方向と略直交した状態であてがわれる、矩形形状のプレートであると理解され、また、「第2プレート」が、①ナット側に位置し、②螺旋ハンガー用溝部が形成されており、③反時計回りに回動することで他方のプレートとの係合を解かれ、時計回りに回動することで他方のプレートと係合させられるプレートであると理解される旨主張して原告主張を争っている。

ところで、本件明細書においては、「第1プレート」及び「第2プレート」についての定義はなく、説明も特に記載されていないところ、確かに、本件明細書における実施形態としては、被告が主張する実施形態が記載されている(【0013】、【0017】ないし【0019】、【0024】、【0034】)。

しかし、本件明細書において「本発明は上述してきた実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。」(【0038】)と記載されているように、実施形態に限定されるべき理由はないし、本件特許の特許請求の範囲に、二つのプレートと一端同士を緊締するボルト及びナットが記載され、その一方、形成される溝部の種類、螺旋ハンガー用クランプで吊線に固定した際の配置関係については規定されていないことからすると、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるものであればよいものと解されるから、被告がそれぞれ主張するような場合に限定されるものでないことは、むしろ明らかである。そして、この点は、被告主張に係る出願補正時の意見書(甲12)の記載を参酌しても同様である。

そうすると、イ号物件における上固定金具及び下固定金具の各一端には、ボルト挿通孔が形成されており、両者がボルト挿通孔に挿通されたボルト及びナットにより着脱可能な状態で把持され、前記ボルトを回転軸とするものであるから、上固定金具及び下固定金具は、「第1プレート」及び「第2プレート」に該当し、後記(7)及び(8)で検討する構成要件Fで定められる第1プレートの構成及び構成要件Gで定められる第2プレートの構成からすれば、イ号物件の上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当するといえる。したがって、イ号物件の構成bは構成要件Bを充足するものといえる。

(4)構成要件Cについて

イ号物件の上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当することは上記(3)のとおりであるから、原告主張のイ号物件の構成cは、本件発明の構成要件Cを充足するものといえる。

(5)構成要件Dについて

イ号物件の上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当することは上記(3)のとおりであり、その構成の表現について争いがあるものの、イ号物件における上固定金具と下固定金具の各一端がボルト及びナットにより把持された部分が、構成要件Dの「閉塞端」に該当することについては、当事者間に争いがないから、イ号物件の構成dは、構成要件Dを充足するものといえる。

(6)構成要件Eについて

原告は、イ号物件を構成eのとおり特定して、構成要件Eを充足する旨主張するところ、イ号物件の上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当することは上記(3)のとおりであるが、被告は、その特定の表現を争うとともに、構成要件Eの「開放端」の意義が明らかでないとして、その充足を争っている。

しかし、本件特許の特許請求の範囲の「第1プレート及び第2プレートの各一端側に前記ボルトを挿通させるボルト挿通孔を形成するとともに、一端同士を前記ボルトにより連結される閉塞端とし、前記第1プレート及び第2プレートの各他端を開放端とするとともに、他端同士を係合する係合部が設けられており、」との記載からすれば、「開放端」とは、第1プレート及び第2プレートの各一端側に形成されたボルト挿通孔に挿通されたボルトにより一端同士が連結された「閉塞端」の各他端で、他端同士を係合する係合部が設けられた部分を指すと解される。

本件明細書において、「前記第1プレートと第2プレートの各他端同士をボルト及びナットとで緊締する構造」が考えられるものの(【0005】)、この構造の欠点として、「第1プレート及び第2プレートにおいて、ボルト及びナットで緊締される各他端が可動する開放端となっているため、締め込むときに、端部同士がずれてしまったりして逆に弛みの原因ともなるおそれ」があることが課題とされている(【0006】)ことからしても、「開放端」とは、「ボルト及びナットで緊締された端」側の他端にあり、そのような緊締がなされておらず、可動する状態になっている部分として使用されていることにも合致するものであり、これが明らかでないとする被告の主張は採用できない。

そしてイ号物件は、上固定金具及び下固定金具の各一端近傍にはボルトを挿通させるボルト挿通孔が形成され、上固定金具及び下固定金具がボルト挿通孔に挿通されたボルト及びナットにより着脱可能な状態で把持されて、同ボルトを回転軸としている閉塞端であるから、構成要件Dを充足し、また、上固定金具及び下固定金具の閉塞端でない各他端は、回動自由であり、他端同士を係合する係合部が設けられているのであるから、その特定のための表現に争いがあろうとも、これを「各他端を開放端とするとともに、他端同士を係合する係合部が設けられて」いるというべきことは明らかであるから、構成要件Eを充足するものといえる。

(7)構成要件Fについて

ア 原告は、イ号物件の上固定金具の係合部側の形状を構成fのとおり主張して、これが構成要件Fを充足する旨主張するところ、イ号物件の上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当することは上記(3)のとおりであるが、被告は、その特定の表現を争うとともに、構成要件Fにおける「鉤形」、「起立状」、「フック部」について原告と異なる解釈を採ってその充足を争っている。

イ そこで、まず上記用語の意義を順に検討する。

(ア)「鉤形」、「フック部」について

「鉤形」及び「フック部」については、特許請求の範囲や本件明細書において定義されていない。

「鉤形」とは、その用語の普通の意味において、「①先の曲がった金属製の具。また、それに似たもの。②鉄の鉤に長い木の柄をつけた武器、③鉤括弧の略。」、また、「フック」とは、「①鉤。ホック。②ボクシングで、ひじを曲げて側面から打つ攻撃。」などとされている(広辞苑第6版)。

したがって、「鉤形」とは、鉤、すなわち先の曲がった金属製の具のように、直角に曲がった形を指すものであると解される。

この点、被告は、「鉤形」とは、「先」端が曲がった形であり、本件明細書中の図1等にある90度に曲がった凹部(第2屈折部分)の先端部がさらに90度曲がって下向きに伸びている部分(第1屈折部分)が構成要件Eにおける「鉤形」であり、このような形状は第2プレートが係合時の回動方向と逆方向に回動するのを防止し、確実な連結固定という本件発明の作用効果に寄与するものである旨主張する。

しかし、本件発明は、2つのプレートの一端同士を回動自在に連結し、ボルト及びナットで緊締された一端に対する各他端が可動する開放端が、締め込むときにずれたりして緩みの原因となるところを、他端を係合部とすることにより簡単な操作で確実に吊線と螺旋ハンガーとを挟持できる作用効果を生じるものであるところ、第1プレートの他端に90度に曲がった凹部(第2屈折部分)があれば当該作用効果を奏するものといえ、第1屈折部分が必須の構成であるとはいえない。また、第1屈折部分があることにより被告の主張するような効果があり得るとも考えられるが、本件明細書において第2プレートが逆方向に回動することを前提とする記述がないことからすれば、上記図1等に第1屈折部分がある実施形態が示されているとしても、本件発明における必須の構成ではないといえる。

さらに、被告は、本件特許出願時の補正の経緯(甲12、乙10)も含めて「フック部」及び「切欠部」が異なる用語を用いて明確に区別されているとして、「フック部」には第1屈折部分が必須である旨主張するが、本件明細書において両者の定義が記載されている部分はなく、また、同様の形状について異なる用語を用いる例は散見されることからすれば(甲13)、被告の主張は採用できない。

(イ)「起立状」について

本件発明において、クランプの上下は特に規定されておらず、第1プレートと第2プレートとの関係において「起立状」と表現されているにすぎない相対的なものであるから、「起立状」とは、第2プレート側に対して折り返されていることをいうものと解される。

ウ 以上の解釈を踏まえてみると、その特定の表現に争いはあるもののイ号物件において、上固定金具の他端は、両方の側部に凹部を設けてT字形に形成するとともに下固定金具方向へ折り返す係止部となっていることは当事者間に争いがなく、これによれば本件発明の構成要件Fにおける「鉤形に形成するとともに前記第2プレート側へ折り返して起立状に形成したフック部」に該当するといえるから、イ号物件の構成fは構成要件Fを充足するものといえる。

(8)構成要件Gについて

ア 原告は、イ号物件の下固定金具の係合部側の形状を構成gのとおり主張して、これが構成要件Gを充足する旨主張するところ、イ号物件の上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当することは上記(3)のとおりであるが、被告は、その特定の表現を争うとともに、構成要件Gにいう「他端に一側が開口する」との構成の解釈を争っている。

イ そこで、まず「他端に一側が開口する」との解釈について検討する。

(ア)まず「他端」も用いる「端」とは、その用語の普通の意味において、「①物の末の部分、先端。②中心から遠い、外に近いところ。へり。ふち。」(広辞苑第6版)などとされ、本件発明の構成要件Dにおいてもボルトを挿通させる部分を「一端」としていること等からすれば、「他端」とは、プレートの一端の反対側の先端に近い部分をいい、端外側の線や点をいうものではないと解される。したがって、「他端の一側が開口する」とは、そのような先端に近い部分の一つの側に開口された場所を備えていることをいうものと解するのが相当である。

(イ)これに対し、被告は、「他端」の「一側」が開口するとは、他端の端が開口していることをいい、また、開口した切欠部の先端が切欠部側に曲がっていないものである旨主張し、本件明細書の図や実施形態を指摘する。しかし、本件発明が本件明細書における図や実施形態に限定されるものではないから、切欠部の位置が被告主張の箇所に限定されるものではなく、被告のいう第1屈折部分がある形態が除かれているということもいえず、被告の上記主張は採用できない。

ウ イ号物件においては、その構成の特定の表現に争いがあるものの、上固定金具が本件発明の「第1プレート」に、下固定金具が「第2プレート」に該当することは上記(3)のとおりであり、下固定金具の他端近傍の一方の側部に凹部を設けて逆C字形にし、その先端に下固定金具の一端側へ略90度屈折させた屈折部分を形成しているが、C字型の凹部を形成している構成を有していることは明らかであるから、これらは「他端に一側が開口するように形成した切欠部」に該当するものといえ、したがって、イ号物件の構成gは構成要件Gを充足するものといえる。

(9)まとめ

以上によれば、イ号物件は、構成要件AないしHを充足し、本件発明の技術的範囲に属するものといえる。

5.2 争点3(本件特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)

-省略-

6.検討

(1)被告の主張に上固定金具が第1のプレート、下固定金具が第2のプレートとすると、本件特許出願の明細書及び図面におけるボルトの頭の位置関係と逆になる、というものがありました。

第三者の特許公報を手に取って図面と対象製品とを見比べたときに構成がほとんど同じですが、一部だけ位置関係が逆になっていることはよくあります。このような場合であって特許請求の範囲の記載上はその位置関係はどちらの場合も含みうるように書かれていると、何とかしてこの違いを基に非抵触主張できないか検討します。しかし、中々うまくいった試しがありません。

(2)また、同じく被告の主張に「鉤型」とは第1屈折部分である、という主張がありました。

しかし、本件明細書には「第1プレート1の他端12を鉤形に形成」とあるので、いきなり第2屈折部分を除いて第1屈折部分のみが鉤型に相当する、と主張することは難しいように思います。それならいっそ「本件発明では鉤型について特許請求の範囲では定義されていない。そのため明細書等を参酌すると「第1プレート1の他端12を鉤形に形成」と定義されている。ここで「第1プレート1の他端12」がどの範囲を指しているのか明細書及び図5(b)等に基づき明確にする。第1プレートの他端12は第2プレート2側へ折り返して起立状に形成したフック部12aを含むものであるといえる。そうすると、第1屈折部分及び第2屈折部分は両方とも起立状に形成したフック部12aに設けられているから、本件発明でいうところの「鉤型」は少なくとも第1屈折部分と第2屈折部分の両方を含むものと解される。仮に鉤型に屈折部が2つは不要と考えるのであれば、より第1プレート1の端の方と認識される屈折部が鉤部に相当すると解するべきである。したがって、いずれにしても第1屈折部を有しないイ号製品は非抵触である。」というような主張もあり、だったと思います。もちろん、裁判官がそれを否定するロジックを組み立てる可能性はありますが、少なくとも明細書や図面における第1プレート1の他端12に形成された鉤型という位置関係からすると第1屈折部分及び第2屈折部分の両方が鉤型に含まれるという主張は否定しにくいと思います。

(3)被告のホームページを見ると、被告製品の終端クランプ(TCOH-1)から終端クランプ(TCOH-2)に切り替わっていました。これは本件特許を回避した製品だと思われます。被告の製品の特性を考えると、設計変更するにも安全性等の性能面で顧客の了解を取ったり、場合によっては顧客の社内確認試験等をクリアする必要があると思われます。かといって設計変更せずに裁判所に侵害と認定されると顧客まで侵害者になってしまいます。かなり困難な対応を迫られた可能性があります。