填塞物の製造方法
投稿日: 2019/04/15 23:22:51
今日は、平成28年(ワ)第11694号 損害賠償請求事件について検討します。
1.検討結果
(1)本件発明は発破作業において発破孔に爆薬を装填した後に発破孔を塞ぐための填塞物の製造方法に関するものです。脱水汚泥にベントナイト粉末を混錬し、それを押し出し成型するというものです。
(2)争点となったのは被告製造方法において「ベントナイト粉末」が用いられているか否かでした。本件特許明細書にはベントナイト粉末についての明確な定義はないようですが、判決文によると、一般的には「粘土鉱物の一種であるモンモリロナイトを主成分として、石英、α-クリストバライトなどのケイ酸鉱物を副成分として、長石、マイカ、イライト、ゼオライトなどのケイ酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、さらにパイライトなどの硫化鉱物を随伴するアルカリ性粘土岩の名称」だそうです。
(3)判決では構成要件Bにおけるベントナイト粉末はベントナイト単体とそれ以外との混合物を含むものではなく、ベントナイト単体で構成されるものである、と認定しました。そして原告が被告製造方法においてベントナイト粉末に相当すると主張するスーパーソイルは「粘土岩」ではないのでベントナイト粉末とは言えない、認定し、さらにダメ押しで、仮に、スーパーソイル中の粘土分がベントナイト単体で構成されているとしても、スーパーソイル自体は、その大半が粘土分以外のものから構成されているなど、ベントナイト単体だけで構成されているわけではないから、スーパーソイルが「ベントナイト粉末」に当たるとは認められない、と認定しました。
(4)被告製品にモンモリロナイトが用いられていたことは確かだったので、本件特許の特許請求の範囲において「ベントナイト粉末」ではなく「モンモリロナイトを含む粉末」といった表現だったらもう少し違った展開になった、という考えもあるかもしれません。ただ、本件特許出願時にベントナイト粉末以外にモンモリロナイトを含む原料が市販されていたのかわかりませんし、明細書の記載からすると産業廃棄物と安価な原料を利用して製造することを目的とする発明のようなので、主成分だけ取り出して上位概念化するというのは難しいかもしれません。
2.手続の時系列の整理(特許第3458131号)
① 本件特許権は既に消滅しています。なお、存続期間満了日は2014年1月27日ですが年金不納のため2013年8月8日に消滅しました。
3.本件発明
A マサの破砕汚泥や砕石汚泥を脱水した脱水汚泥(含水率20~25%程度)に
B ベントナイト粉末(含水率7~20%程度)を、
C 含水率が20~25%になるように絶乾重量比で2~4対1の割合で加えたものを混練し、
D 次いで25~50mmの直径で押出機から押し出し成型し10~30cmの長さに切断することを特徴とする発破用填塞物の製造方法。
4.被告製造方法
(1)原告主張
a 岩石由来と考えられる破片を含んだ脱水スラッジ(含水率20~25%程度)に
b ベントナイト(含水率7~20%)を含む粘土を
c 含水率が23%程度になるように絶乾重量比でスラッジとベントナイトを約3対1の割合で加えたものを混練し
d 次いで26~33φの直径で、押出し成型し、10cmの長さに整えることを特徴とする発破用込物の製造方法
(2)被告の行為等
ア 昭和35年に設立された(被告とは別法人である)旧「エスビー工業株式会社」は、発破用込物の製造販売を行っていたが、昭和48年に、新たに設立した現在の「エスビー工業株式会社」という商号の会社(被告)に販売部門を分離するとともに、自らは「サンド・バング工業株式会社」に商号を変更して製造部門を担うこととし(以下、この商号変更した会社を「サンド・バング工業」という。乙1、弁論の全趣旨)、以降、サンド・バング工業が九州工場、中部工場及び東北工場で「SB・クレイタンパー」という商品名の発破用込物(以下「被告製品」という。)を製造し、被告(エスビー工業株式会社)が被告製品を販売している(甲4、乙1、弁論の全趣旨)。
イ このように被告製品はサンド・5 バング工業の九州工場、中部工場及び東北工場でそれぞれ製造されているところ、原告が本件特許権を侵害すると主張する製造方法は、サンド・バング工業の東北工場における被告製品の製造方法(以下「被告製造方法」という。)である。
(3)被告製品等の分析等
ア 島根県産業技術センターは、平成27年3月19日付けで原告から依頼を受けて、原告が本件訴訟の提起前に入手した被告製品の定性分析等を実施した(甲5。以下、この分析等を「甲5分析」という。)。
イ 株式会社KRI解析研究センターは、本件訴訟の提起後である平成29年6月21日頃に被告から依頼を受けて、後述するとおり被告が被告製品の原料であると主張する有限会社根本産業(以下「根本産業」という。)製の根本粘土、安倍川開発株式会社(以下「安倍川開発」という。)製のスーパーソイル及びいわき粘土に加え、対照用としてベントナイト製品である出雲ベントナイトの定性分析を実施した(乙10。以下、この分析を「乙10分析」という。)。
ウ 島根県産業技術センターは、平成29年9月12日付けで原告から依頼を受けて、原告が本件訴訟の提起後に入手した被告製品の定性分析等を実施した(甲12。以下、この分析等を「甲12分析」という。)。
エ 原告は、本件訴訟中に、被告から、乙10分析に試料として供された残りとして被告訴訟代理人が保管していた根本粘土、スーパーソイル及びいわき粘土と、被告が改めて各社から取り寄せた根本粘土、スーパーソイル及びいわき粘土の提供を受けて、平成30年4月2日付けで島根県産業技術センターに分析を依頼し、同センターはそれら試料の定性分析等を実施した(甲22ないし24。以下、この分析等を「甲22等分析」という。)。
5.争点
(1)技術的範囲の属否(争点1)
(2)原告の損害額(争点2)
6.裁判所の判断
1 本件発明の技術的意義(甲7の1)
(1)本件発明は、新規な発破用填塞物の製造方法に関するものであり、産業廃棄物であるマサの破砕汚泥、砕石汚泥等を有効利用するものである(本件明細書【0001】)。
すなわち、発破孔に爆薬を装填した後発破孔を隙間なく密閉して発破効率を高めるための発破用填塞物については、大量に消費することから安価に大量生産する必要があるにもかかわらず、2社程度しか生産しておらず、運送に多大な手間と費用が掛かることが問題になっていた一方、生コン用の骨材に使用するために花崗岩が風化したマサを破砕して水樋選別した後のマサの破砕汚泥や、各種骨材用に硬質な各種の岩石を破砕する装置を水洗したり破砕品を水樋したりしたような場合に生じる砕石汚泥については、その処理が問題になっていた(同【0002】ないし【0006】)。そこで、本件発明は、入手が容易で安価なマサの破砕汚泥や砕石汚泥を脱水した脱水汚泥(通常含水率は20~25%程度)等を発破用填塞物の原料に用いる工程を採用すること(構成要件A)により、これら産業廃棄物の有効利用を図るとともに、発破用填塞物を安価に大量生産することを可能にした(同【0007】、【0024】)。
もっとも、発破用填塞物の原料は、可塑性に富んで軟らかく、粘着性があって填塞作業がし易い物である必要があるところ、マサの破砕汚泥や破砕汚泥を脱水した脱水汚泥等は、これまで用いられていた緑泥石等の粘土と比較して粘着性等が劣っている(同【0002】、【0004】、【0008】)。そこで、本件発明は、優良粘土であり、粘性や保水性に富んでいるベントナイト粉末(通常含水率は7~20%程度)をこれらの汚泥に加えて混練する工程を採用すること(構成要件B)により、従来のものと変わらない品質の発破用填塞物を得られるようにした(同【0009】、【0011】、【0024】)。そして、脱水汚泥とベントナイトを3対1程度の割合で混ぜて混練すると、含水率が20~24%程度で、耳たぶ程度の軟らかさを持ち、可塑性や粘着性も申し分なく、発破用填塞物の素材として最適なものが得られるが、発破用填塞物として適する含水率20~25%程度にするために、混合物の含水率がこれより低ければ水を加え、高ければ脱水汚泥やベントナイトを幾分乾燥させてから混練するとよく、また、両者の絶乾重量比は、2~4対1程度、より好ましくは2.5~3対1程度であれば、目的を達する(同【0011】)。
(2)このように本件発明の構成要件を全て充足するというためには、発破用填塞物の製造に当たって、(「ベントナイト粉末」にベントナイトを含む粘土も含まれるか否かはともかく)少なくとも「ベントナイト粉末」に相当する物を原料として加えるという工程を経ることが必要である(構成要件B)。
これを踏まえて、原告は、被告製品自体又は被告が被告製品の原料であると主張する物質の分析結果に基づいて、被告製品が「ベントナイト粉末」に相当する物を原料として加えて製造されたものであるから、被告製造方法は構成要件Bを充足すると主張している。そこで、被告製品等の分析結果を明らかにした(後記2)上で、被告製造方法が構成要件Bを充足すると認められるか否かを検討する(後記3)こととする。
2 被告製品等の分析結果
(1)被告製品の分析1(甲5分析〔甲5〕)
甲5分析に供されたのは、原告が本件訴訟提起前の平成27年3月19日頃に入手した被告製品である。甲5分析では、以下のとおり、各種分析が実施されるとともに、考察が示されている。
ア X線回折による定性分析(全体試料)
試料(全体試料)を110℃で乾燥した後、粉砕して粉末状にした上で実施されたX線回折による定性分析では、非粘土鉱物である石英及び斜長石に該当する各結晶相が同定された(甲5の3)。
イ 粒度分布測定(全体試料)
試料(全体試料)の粒度分布は、別紙「粒度分布測定結果一覧表」の「甲5分析」欄記載のとおりであった(甲5の1)。
ウ X線回折による定性分析(定方位試料)
2μm以下の粒子を粘土と定義する土壌学会の定義(乙12参照)により、試料(全体試料)を水ひ処理した2μm以下の試料(全体試料の31%、定方位試料)を対象に実施されたX線回折による定性分析では、粘土鉱物であるモンモリロナイト及びカオリナイトに該当する各結晶相が同定された(甲5の3。なお、甲5の3における「スメクタイト」との記載は、甲24により「モンモリロナイト」と読み替える。)。
粘土鉱物に固有の陽イオン交換容量を用いて、上記の2μm以下の粘土分の試料の陽イオン交換容量に基づき、全体試料の粘土分に含まれる粘土鉱物の陽イオン交換容量を推計し、かつ、全体試料に含まれる粘土鉱物がモンモリロナイトとカオリナイトのみであるという仮定の下、両者の陽イオン交換容量の文献値を基に含有割合を計算すると、試料(全体試料)全体のうち、モンモリロナイトの含有量が5.3~14%、カオリナイトの含有量が17~26%であると推測された(甲5の4)。
エ 実体顕微鏡による観察(甲5の2及び4)
試料(全体試料)を実体顕微鏡によって観察すると、850μm以上の粒子に、①岩石に由来すると考えられる破片と②粒子の角が取れた丸い形状のものが見つかり、②については、堆積物に由来すると推察された。
また、③150~250μmに篩い分けされた試料の形状と④堆積層に由来する硅石の形状を比較したところ、③については、個々の粒子が不規則な形状をしているものが多かったのに対し、④については、比較的球形に近かった。
これらのことに、上記アの全体試料において石英及び斜長石が検出された分析結果を加味して、試料(全体試料)の砂分は、マサの破砕汚泥や砕石汚泥と同類のものと、堆積物に由来するものの混合物に由来するものであると推察された。
(2)被告製品の分析2(甲12分析〔甲12〕)
甲12分析に供されたのは、原告が本件訴訟提起後の平成29年9月12日頃に入手した被告製品である。甲12分析では、以下のとおり、各種分析が実施されるとともに、考察が示されている。
ア X線回折による定性分析(全体試料)
試料(全体試料)を乾燥した後、粉砕して粉末状にした上で実施されたX線回折による定性分析では、石英に該当する結晶相と斜長石に該当する結晶相が同定された(甲12の3)。
イ 粒度分布測定(全体試料)
試料(全体試料)の粒度分布は、別紙「粒度分布測定結果一覧表」の「甲12分析」欄記載のとおりであった(甲12の1)。
ウ X線回折による定性分析(定方位試料)
試料(全体試料)を水ひ処理した2μm以下のもの(全体試料の28%、定方位試料)を対象に実施されたX線回折による定性分析では、粘土鉱物であるモンモリロナイト、カオリナイト及び雲母粘土鉱物に該当する各結晶相が同定された(甲12の3。なお、甲12の3における「スメクタイト」との記載は、甲24により「モンモリロナイト」と読み替える。)。
試料(全体試料)の粘土分に含まれる粘土鉱物がモンモリロナイト、カオリナイト及び雲母粘土鉱物のみであるという仮定の下、雲母粘土鉱物はメチレンブルーをほとんど吸着しないことから、モンモリロナイトとカオリナイトのメチレンブルー吸着量の文献値を基に含有割合を計算すると、試料(全体試料)全体のうち、モンモリロナイトの含有量が4.8~11%、カオリナイトの含有量が17~23%であると推測され、さらに、ベントナイト(日本を代表するベントナイト製品の1つとされるクニゲルV1〔甲14参照〕)におけるモンモリロナイトの含有割合(50%程度)を基にベントナイトの含有割合を計算すると、試料(全体試料)全体のうち、ベントナイトの含有量が9.6~22%であると推測された(甲12の1)。
エ 実体顕微鏡による観察(甲12の2)
試料(全体試料)を実体顕微鏡によって観察したところ、850μm以上の粒子に、①石英、長石、②岩片状の粒子が確認され、一部には角が取れた丸い形状のものもあったが、基本的には角張った形状であった。また、150~250μmに篩い分けされた試料は、角張った粒子のものが卓越していた。
これらのことに、上記アの全体試料において石英及び斜長石が検出された分析結果を加味して、試料(全体試料)の砂分は、マサの破砕汚泥や砕石汚泥と同類のものと推察された。
(3)被告が被告製品の原料であると主張する物質の分析1(乙10分析〔乙10〕)
乙10分析に供されたのは、被告が被告製品の原料であると主張する①根本粘土、②スーパーソイル、③いわき粘土の3つの物質に加えて、対照試料となるベントナイト製品の1つである④出雲ベントナイトである。乙10分析では、以下のとおり、分析が実施されるとともに、考察が示されている(乙10)。
ア 根本粘土
試料(全体試料)を粉砕した上で実施されたX線回折による定性分析の結果は、以下のとおりであった。
(ア)石英については、主たるピークが顕著に確認でき、構成成分と認められるとされた。
(イ)長石及びカオリナイトについては、主たるピークは弱いが確認でき、構成成分として認められるとされた。
(ウ)角閃石及びバーミキュライトについては、主たるピークは非常に弱いが、構成成分として存在する可能性があるとされた。
イ スーパーソイル
試料(全体試料)を粉砕した上で実施されたX線回折による定性分析の結果は、以下のとおりであった。
(ア)石英及び長石については、主たるピークが顕著に確認でき、構成成分と認められるとされた。
(イ)角閃石及びスメクタイトについては、主たるピークは非常に弱いが、構成成分として存在する可能性があるとされた。
ウ いわき粘土
試料(全体試料)を粉砕した上で実施されたX線回折による定性分析の結果は、以下のとおりであった。
(ア)石英については、主たるピークが顕著に確認でき、構成成分と認められるとされた。
(イ)長石及びカオリナイトについては、主たるピークは弱いが確認でき、構成成分として認められるとされた。
(ウ)バーミキュライト及び雲母については、主たるピークは非常に弱いが、構成成分として存在する可能性があるとされた。
エ 出雲ベントナイト
試料(全体試料)を粉砕した上で実施されたX線回折による定性分析の結果は、以下のとおりであった。
(ア)石英及び長石については、主たるピークが顕著に確認でき、構成成分と認められるとされた。
(イ)スメクタイト及びモルデナイトについては、主たるピークは弱いが確認でき、構成成分として認められるとされた。
(4)被告が被告製品の原料であると主張する物質の分析2(甲22等分析〔甲22ないし24〕)
甲22等分析に供されたのは、本件訴訟中に、被告から原告に提供された、乙10分析に試料として供された残りとして被告訴訟代理人が保管していた根本粘土、スーパーソイル及びいわき粘土、被告が改めて各社から取り寄せた根本粘土、スーパーソイル及びいわき粘土である。甲22等分析では、以下のとおり、各種分析が実施されるとともに、考察が示されている。
ア X線回折による定性分析(全体試料)
試料(全体試料)を乾燥した後、粉砕して粉末状にした上で実施されたX線回折による定性分析の結果は、以下のとおりであった(甲22の4、23)。
(ア)乙10分析に供された根本粘土
石英に該当する結晶相と斜長石に該当する結晶相が同定された。
(イ)甲22等分析のために提供された根本粘土
石英に該当する結晶相、斜長石に該当する結晶相、クリストバライトに該当する結晶相及び角閃石に該当する結晶相が同定された。
(ウ)乙10分析に供されたスーパーソイル
斜長石に該当する結晶相と石英に該当する結晶相が同定された。
(エ)甲22等分析のために提供されたスーパーソイル
石英に該当する結晶相、斜長石に該当する結晶相及び角閃石に該当する結晶相が同定された。
(オ)乙10分析に供されたいわき粘土
石英に該当する結晶相と長石に該当する結晶相が同定された。
(カ)甲22等分析のために提供されたいわき粘土
石英に該当する結晶相と斜長石に該当する結晶相が同定された。
イ 粒度分布測定(全体試料)
試料(全体試料)の粒度分布は、別紙「粒度分布測定結果一覧表」の「甲22等分析」欄記載のとおりであった(甲22の3)。
ウ X線回折による定性分析(定方位試料)
試料(全体試料)を水ひ処理した2μm以下のもの(定方位試料)を対象に実施されたX線回折による定性分析の結果は、以下のとおりであった(甲22の4、23)。
(ア)乙10分析に供された根本粘土(全体試料の25%)
モンモリロナイトに該当する結晶相(甲24)とカオリン鉱物に該当する結晶相が同定された(なお、甲22の4における「スメクタイト」との記載は、甲24により「モンモリロナイト」と読み替える。)。
(イ)甲22等分析のために提供された根本粘土(全体試料の23%)
モンモリロナイトに該当する結晶相(甲24)とカオリン鉱物に該当する結晶相が同定された。
(ウ)乙10分析に供されたスーパーソイル(全体試料の9%)
モンモリロナイトに該当する結晶相(甲24)が同定された。
(エ)甲22等分析のために提供されたスーパーソイル(全体試料の6%)
モンモリロナイトに該当する結晶相(甲24)が同定された。
(オ)乙10分析に供されたいわき粘土(全体試料の26%)
カオリナイトに該当する結晶相、雲母粘土鉱物に該当する結晶相及びモンモリロナイトに該当する結晶相(甲24)が同定された。
(カ)甲22等分析のために提供されたいわき粘土(全体試料の25%)
カオリナイトに該当する結晶相、雲母粘土鉱物に該当する結晶相談及びモンモリロナイトに該当する結晶相(甲24)が同定された。
エ 根本粘土に関する考察(甲23)
上記ウ(ア)、(イ)の分析結果から、試料(2μm以下の定方位試料)中には粘土鉱物としてカオリン鉱物が卓越し、モンモリロナイトは副次的な存在であると判断されること、水中に縣濁した際のpHも低いこと(甲22の2)から、ベントナイトの定義(粘土鉱物であるスメクタイト〔甲24からここではモンモリロナイトと同義として用いられていると認められる。)を主成分とした弱アルカリ性の岩石)とは一致しない。
外観から、花崗岩等の一般の岩石が風化した土壌、そのような風化物を破砕したもの、そこから微粒分を回収した破砕汚泥、それらの成分の混合物である可能性が推察される。
オ スーパーソイルに関する考察(甲23)
上記ウ(ウ)、(エ)の分析結果から、試料(定方位試料)中に存在する粘土鉱物はモンモリロナイトのみであること、水中に縣濁すると高いpHを示すこと(甲22の2)、他方で、2μm以下の粘土分が少ないことから、ベントナイトは含まれても低含有量であると推察される。
3 「ベントナイト粉末」に当たる物質が被告製品の原料として加えられているか否か(構成要件Bの充足性)の検討
(1)「ベントナイト」の意義
ベントナイトとは、日本粘土学会編「粘土ハンドブック(第三版)」(平成21年年4月30日発行、乙4)の「ベントナイト」の項では、「粘土鉱物の一種であるモンモリロナイトを主成分として、石英、α-クリストバライトなどのケイ酸鉱物を副成分として、長石、マイカ、イライト、ゼオライトなどのケイ酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、さらにパイライトなどの硫化鉱物を随伴するアルカリ性粘土岩の名称である。」、「ベントナイトと同様にモンモリロナイトを主成分とし、同様な副成分鉱物を随伴しながら弱酸性を呈する粘土岩は、ベントナイトと区別して国内では酸性白土と称している。」とされており、また、ベントナイト製品を取り扱っている業者も、自己のウェブサイトにおいて、ベントナイトについて同旨の説明をしている(乙25)。そうすると、本件発明における「ベントナイト」もこの意味であると解するのが相当である。
なお、「ベントナイト、酸性白土、活性白土などはスメクタイトを主成分とする粘土」と述べられることもある(前記「粘土ハンドブック(第三版)」の「スメクタイト」の項、乙11)。しかし、スメクタイトは、粘土鉱物の族(グループ)の名称であり、そこに含まれる代表的な種としては、モンモリロナイトのほか、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトがあるとされており(前記乙11。上原誠一郎「粘土の構造と化学組成」〔粘土科学第40巻第2号100頁〕、乙12)、上記業者も、自己のウェブサイトにおいて、スメクタイトについて同旨の説明をしている(乙25)から、スメクタイトはモンモリロナイトの上位概念である。したがって、上記のベントナイトの説明は、先のベントナイトの定義を、上位の族の名称を用いて述べたものであるということができ、このことは、一般的にはスメクタイトとして多くはモンモリロナイトであり、粘土鉱物の分析報告では鉱物名ではなくその鉱物が属する族で同定する旨の甲24の記載とも整合的である。したがって、上記の文献の記載は、「ベントナイト」の意義を前記のとおり解すべきことを左右するものではない。
(2)「ベントナイト粉末」の意義
ア 原告は、「ベントナイト粉末」の意義に関して、原料とする物質中の粘土分の主成分がモンモリロナイトで、アルカリ性であれば、粘土分全体としてはベントナイトといえるから、当該原料物質に占める粘土分の割合を問わず、当該原料物質は「ベントナイト粉末」に相当する旨主張する趣旨であると解される。
イ そこで、「ベントナイト粉末」がベントナイト単体以外に、ベントナイト単体とそれ以外との混合物が含まれることを許容するものであるかについて検討する。
(ア)まず、特許請求の範囲の記載についてみると、「ベントナイト粉末」という語は、「ベントナイト」の「粉末」を意味すると解されるところ、「ベントナイト」とは、前記(1)のとおり、モンモリロナイトを主成分とし、他の副成分を随伴するアルカリ性の「粘土岩」の名称とされているから、そのような粘土岩全体の主成分がモンモリロナイトであるものであり、そのような粘土岩として存在するもの自体の単体の粉末が「ベントナイト粉末」であると解するのが自然である。
また、「ベントナイト粉末」として想定されている含水率「7~20%程度」というのが、各地で産出されて各社から販売されている「ベントナイト」の含水率(甲14)と同程度の数値であることからも、上記のように解するのが技術常識に沿うといえる。
さらに、本件発明に係る請求項である請求項1では、「マサの破砕汚泥や砕石汚泥を脱水した脱水汚泥(含水率20~25%程度)にベントナイト粉末(含水率7~20%程度)を、含水率が20~25%になるように絶乾重量比で2~4対1の割合で加えたものを混練し」とあるのに対し、請求項2では、「マサの破砕粉や砕石粉(含水率2~7%程度)にベントナイト粉末(含水率7~20%程度)を絶乾重量比で2~4対1の割合で加えたものに、全体の含水率が20~25%になるように水を加えて混練し」とある(甲7の2)。このように「ベントナイト粉末」の含水率が「7~20%程度」であることを前提として、もう一方の主原料の含水率との兼ね合いから、混練後の全体の含水率を所望のものとするために、ⅰ単に「ベントナイト粉末」単体を加えるのか(請求項1)、ⅱ「ベントナイト粉末」単体を加えたものに水を加えるのか(請求項2)が書き分けられている。このことも、「ベントナイト粉末」を、「ベントナイト」として存在する粘土岩単体の粉末をいうと解することに整合的である。
以上からすれば、「ベントナイト粉末(含水率7~20%程度)」は、粘土岩であるベントナイト単体で構成されているものをいうと解するのが自然である。
(イ)もっとも、特許請求の範囲の記載の中には、「ベントナイト粉末(含水率7~20%程度)」に、ベントナイト単体とそれ以外との混合物が含まれることを積極的に排除する記載もない。
そこで、本件明細書の記載も見てみると、混練する「ベントナイト粉末」に関して、【課題を解決するための手段】の項では、「これらの汚泥(脱水物)にベントナイト(粉末)を加え適宜水分を調整して混練すると、従来の緑泥石粘土製のものと変わらない軟らかさと、可塑性、粘着性を持ったものが得られた。これは、ベントナイトが優良粘土であり、粘性や保水性に富むことを利用したものである。しかし、ベントナイト単体では粘着性があり過ぎるし軟らか過ぎて、発破用填塞物には適さない。」(【0009】)とされ、そのように「優良粘土」であり、「単体では粘着性があり過ぎるし軟らか過ぎて、発破用填塞物には適さない」ものとして、「ベントナイトの粉末は、含水率が7~20%程度である。」(【0011】)とされているから、ここでは、通常の粘土岩としてのベントナイトの単体が想定されているといえる。また、【実施例】の項でも、8例の実施例に用いた原料について、「粉末ベントナイト(含水率14.5%)」という以上に格別の記載はなく(【0015】ないし【0023】)、【発明の効果】の項でも、「ベントナイトも安価で容易に入手できる」(【0024】)とあり、市場で容易に入手し得るものが想定されている。そうすると、これらの本件明細書の記載からしても、本件発明の「ベントナイト粉末」について、先に(ア)で検討した技術常識に基づく意味と異なる趣旨が記載されているとは認められない。
(ウ)以上より、本件発明における「ベントナイト粉末(含水率7~20%程度)」とは、モンモリロナイトを主成分として存在するアルカリ性粘土岩単体の粉末をいうと解すべきである。これに反し、原告の上記主張は、原料が含有する粘土分中でモンモリロナイトが主成分となっていれば足りるというものであると解されるから、上記に照らして採用できない。なお、原告の主張は、ベントナイトとそれ以外のものを含む「ベントナイトを含む粘土」も「ベントナイト粉末」に当たるとする趣旨にも思われるが、その主張も上記に照らして採用できない。
そこで、被告製品にこのような「ベントナイト粉末(含水率7~20%)」が原料として加えられているか否かを検討する必要がある。
(3)被告製品自体の分析からの推認の可否
上記2(1)ウ及び(2)ウのとおり、甲5分析及び甲12分析のいずれにおいても、X線回折による定性分析の結果、被告製品からモンモリロナイトの結晶相が同定され、被告製品から検出されたモンモリロナイトとカオリナイトの陽イオン交換容量やメチレンブルー吸着量等を用いた推計によれば、被告製品にはモンモリロナイトが5.3%~14%(甲5分析)、4.8%~11%(甲12分析)含有されているとされており、ここから、原告は、被告製品にはベントナイトが原料として加えられていると主張する。
しかし、仮に上記の推計値が正確であったとしても、それは被告製品全体の中でのモンモリロナイトの含有量を示すものであるにすぎない。モンモリロナイトの上位概念であるスメクタイトを主成分鉱物ないし副成分鉱物として含む粘土は、ベントナイト以外にも多数存する(乙13)ところ、一般的にはスメクタイトとして多くはモンモリロナイトであること(甲24)を踏まえると、モンモリロナイトを成分として含む粘土も多数存在すると考えられる。したがって、上記分析結果に係るモンモリロナイトがベントナイトに由来するものと直ちに推認することはできない。
(4)被告製品の原料に関する被告の主張について
ア 被告は、被告製品の原料は時期により異なり、別紙「被告製品の原料の変遷状況(被告主張)」記載のとおりであると主張することから、まず、その信用性について検討する。
(ア)乙17ないし21及び31によれば、被告は、①安倍川開発との間で、少なくとも平成21年3月以降、仕入取引をしており、平成22年9月以前は大久産業産の粘土を単価3000円で、同年10月以降は東北サンド産のスーパーソイルを単価2000円で仕入れていること、平成27年9月以降はさらにいわき粘土(第一石産産)を仕入れていること、②株式会社深作瓦工場から、平成19年3月から平成20年6月までの間、「粘土」(被告はこれをみなもと窯業の粘土であると主張している。)を仕入れていたこと、③根本産業から平成20年6月以降、根本粘土を仕入れていることが認められる。
このように被告は、被告製品の原料であると主張するものを現に仕入れている。
(イ)被告製品と被告主張原料の含有成分を比較すると、次のとおりである。
原告が平成27年3月19日頃に入手した被告製品に係る甲5分析では、全体試料の分析では石英と斜長石が検出され、2μm以下の定方位性試料の分析ではモンモリロナイトとカオリナイトが検出されたところ、被告の主張を前提とすれば、同時期の原料はスーパーソイルと根本粘土となる。また、原告が平成29年9月12日頃に入手した被告製品に係る甲12分析では、全体試料の分析では石英と斜長石が検出され、2μm以下の定方位性試料の分析ではモンモリロナイトとカオリナイトと雲母粘土鉱物が検出されたところ、被告の主張を前提とすれば、同時期の原料はスーパーソイルと根本粘土といわき粘土となる。
他方、被告主張原料の各全体試料の甲22等分析では、根本粘土については石英と斜長石のほかクリストバライト、角閃石が、スーパーソイルでは石英と斜長石のほか角閃石が、いわき粘土では石英と長石・斜長石が検出されたから、全体試料の成分分析は甲5分析及び甲12分析による被告製品の全体試料の分析と整合している。なお、被告主張原料の各全体試料の分析は、乙10分析でもされているが、これも甲22等分析と整合的である。
また、被告主張原料の各2μm以下の定方位試料の甲22等分析では、根本粘土についてはモンモリロナイトとカオリン鉱物が、スーパーソイルではモンモリロナイトが、いわき粘土についてはカオリナイトと雲母粘土鉱物とモンモリロナイトが検出されたから、これについても甲5分析及び甲12分析による被告製品の2μm以下の定方位試料の分析と整合的である。
(ウ)被告製品と被告主張原料の粒度分布について、原告は、甲5分析や甲12分析における被告製品の粘土分(2μm以下の粒子)の含有率と甲22等分析における被告主張原料の各粘土分の含有率が整合しないと指摘する。
しかし、被告主張原料の粘土分の含有率は、乙10分析に供されたものと甲22等分析のために採取されたものの間でも1%から3%のばらつきがあることや、被告製品の甲5分析と甲12分析でも、3%のばらつきがあることに照らせば、被告製品の原料であるとされる根本粘土、スーパーソイル及びいわき粘土は、その時々によって粒度が異なる状態で自然界に存在する可能性がある。
また、被告の説明によれば、被告製品のサンド・バング工業の東北工場での製造工程には、原料土を混ぜ合わせた後に、かく拌機でかく拌したり、二軸混練押出機で混練して棒状に押し出したりする工程がある(乙8)ため、製造工程で粒子が細かくなる可能性もあるところ、被告製品の粒度分布の方が、被告が被告製品の原料であると主張する物質の粒度分布よりも、全体的に細かな粒度の側に分布していることは、このような可能性と整合的である。
これらの点に加え、甲5分析及び甲12分析における被告製品の粒度分布と甲22等分析における根本粘土、スーパーソイル及びいわき粘土の粒度分布の差が許容できないほどに大きいとはいえないから、被告製品の原料に関する被告の主張を、この点をもって虚偽と断じて排斥することは困難である。
(エ)被告の元役員であるP1は、平成18年9月1日の社内会議の席上で、東北営業所の従業員が、被告製品もスラッジを混ぜていると発言したのを聞いたと陳述する(甲9)。しかし、その陳述書(甲9)によっても、同従業員が、スラッジに粘土(特にベントナイト)を混ぜると発言したとまでは記載されていない。また、スラッジを用いていたとの点については、安倍川開発の従業員の陳述書(乙17)によれば、スーパーソイルは山砂を山から採取し、これを洗浄プラントで洗浄して砂や砂利を選別し、その余を機械で搾ってできた粘土であるとされており、このとおりであるとすると、スーパーソイルは一種のスラッジであるといえ、このことからするとその前身とされる大久産業産の粘土も同様と考えられる。そうすると、上記のP1が聞いたとする東北営業所の従業員の発言は、被告の主張と矛盾するわけではない。
(オ)以上からすると、被告製品の原料に関する被告の主張の信用性を否定することはできないというべきである。
イ(ア)そこで、原告が入手して分析した被告製品のうち、本件特許の存続期間内のものである甲5分析の試料に対応する時期の被告主張原料である根本粘土とスーパーソイルについて検討する。
まず、原告が「ベントナイト粉末」に当たると主張するスーパーソイルについてみると、甲22等分析における粒度分布に照らせば、その大半が粒径2μm以上である(上記2(4)イ)から、当事者間に争いがない粘土分の定義(粒径が2μm以下の粒子、甲5、乙12)を踏まえると、前記のような自然界に存在する状態での粒度分布のばらつきを考慮しても(なお、前記のとおり被告製品の製造工程で粒径が細かくなるとしても、本件発明の「ベントナイト粉末」は混練工程前の原料として定められているから、混練による細粒化は考慮すべきでない。)、そもそもスーパーソイルのことを粘土が固結してできた「粘土岩」というのは困難であり、その意味で、スーパーソイル自体が粘土岩であるベントナイトの粉末であるとは言い難い。また、スーパーソイル中の粘土分ではなく、スーパーソイルそのものの分析であるといえる、乙10分析及び甲22等分析における全体試料を対象とするX線回折の結果を見ると、モンモリロナイトが結晶相として同定されているわけではなく、他の鉱物のみが結晶相として同定されているのに対し、乙10分析で対照用試料とされた出雲ベントナイトでは、長石、石英のほかに粘土鉱物の構成成分としてスメクタイトが顕著に検出されたのが特徴的であるとされている(乙10)から、スーパーソイル全体の主成分がモンモリロナイトであるとは認められないし、甲22等分析でも、スーパーソイルには粘土分が少ないため、ベントナイトはあっても低含有量だと推測されるとされている(甲23)。したがって、仮に、スーパーソイル中の粘土分がベントナイト単体で構成されているとしても、スーパーソイル自体は、その大半が粘土分以外のものから構成されているなど、ベントナイト単体だけで構成されているわけではないから、スーパーソイルが「ベントナイト粉末」に当たるとは認められない。
これに対し、原告は、スーパーソイルの粘土分の分析であるといえる、甲22等分析における定方位試料を対象とするX線回折の結果において、モンモリロナイトの結晶相が同定されていることを指摘する。しかし、上記分析結果を原告に最大限有利に考えても、上記のとおり、スーパーソイルの粘土分全体がベントナイトであるということを意味するにすぎず、スーパーソイルがベントナイトと粘土分以外のものから構成されていることを左右するものではない(原告が依拠する甲22等分析のスーパーソイルにおける考察のうち、ベントナイトの含有量について言及する部分〔上記2(4)オ〕は、正にこのことを指摘するものである。)。
なお、原告の主張は、スーパーソイル自体をベントナイトに他の原料を加えたものと捉えた上で、ベントナイトを原料として用いているとの趣旨を含むものとも思われる。しかし、前記のとおり安倍川開発の従業員の陳述書(乙17)では、スーパーソイルは山から採取した山砂から砂利等を取り除いて機械で搾ったものであるとされており、これを排斥し得る証拠はないから、スーパーソイルが複数の原料の混合物であると認めることはできない。また、本件明細書の【課題を解決するための手段】において、「脱水汚泥とベントナイトを3対1程度の割合で混ぜて混練すると、含水率が20~24%程度で、耳たぶ程度の軟らかさを持ったものができる。しかも、可塑性や粘着性も申し分ない。即ち、発破用填塞物の素材として最適なものが得られる。尚、発破用填塞物としては、含水率が20~25%程度が丁度よいが、混合物の含水率がこれより低ければ水を加え、高ければ脱水汚泥やベントナイトを幾分乾燥させてから混練するとよい。」(【0011】)とされており、他の成分としても粘結剤や保水剤を1%から2.5%添加することが記載されている(【0014】)にすぎないことからすると、本件発明は、マサの破砕汚泥や砕石汚泥とベントナイトの2原料のほかに岩石原料を用いることを想定しないものであると解するのが相当である。したがって、原告の主張が上記のようなものであるとしても、その主張は採用できない。
(イ)同様に、根本粘土についても、甲22等分析における粒度分布、乙10分析及び甲22等分析におけるX線回折の結果に照らせば、「ベントナイト粉末」に当たるとは認められない。
ウ また、被告が主張する他の時期の原料のうち、「ベントナイト粉末」に当たるものがあることをうかがわせる証拠はない。
(5)小括
以上のとおり、被告製品自体の分析からしても、被告主張原料の分析からしても、「ベントナイト粉末」に当たる物質が被告製品の原料として加えられていると認めることはできない。
したがって、被告製造方法は構成要件Bを充足しない。