医療用ガイドワイヤ事件(その1)

投稿日: 2017/06/13 7:19:39

今日は平成27年(ネ)第10114号 特許権侵害行為差止等請求控訴事件(原審 東京地方裁判所平成26年(ワ)第25577号)について検討します。

本事件の控訴人(一審原告)である日本ライフライン株式会社はホームページの情報によると循環器領域を専門とする独立系の医療機器商社であり医療機器メーカーだそうです。1981年設立で当初は心臓ペースメーカを輸入販売していたそうです。1994年にPTCAガイドワイヤーを発売しています。なお、PTCAとは”percutaneous transluminal coronary angioplasty”の略で経皮的冠動脈形成術というそうで、PTCA治療とはカテーテル治療のことだそうです。J-PlatPatで日本ライフライン株式会社名義の特許を検索したところ113件ヒットしました。発明の名称にカテーテルやガイドワイヤが含まれるものが多いようです。

一方、被控訴人(一審被告)である朝日インテック株式会社はホームページの情報によるとガイドワイヤーをはじめとするカテーテル治療用製品を開発・製造・販売しているそうです。1972年設立で当社は産業用の極細ステンレスロープを製造・販売をしていましたが、1991年にメディカル開発部門を開設し医療器具の研究開発を始めたそうです。本社の所在地は名古屋市守山区で、私が1992年から2000年までの技術者時代に住んでいた住所から車で5分くらいのところです。J-PlatPatで朝日インテック株式会社名義の特許を検索したところ232件ヒットしました。こちらも(当然?)発明の名称にカテーテルやガイドワイヤが含まれるものが多いようです。

本事件については地裁判決を扱っていなかったので、地裁判決と高裁判決の両方を検討します。さらに、今回も判決中で被告製品が被告特許に基づいて実施しているとあるのでそちらにも目を通そうと考えてますし、対応海外出願も結構あるので、時間がかかりそうです。

 

2.手続の時系列の整理(特許第4354525号)

① 特許庁のOPD照会及びWIPOのPATENTSCOPEで検索したところ本件特許出願ともう1件の出願を優先権の基礎として国際出願がされており、その国際出願から少なくとも欧州、豪州、中国、韓国、米国、インドへ移行されています。このうち米国はRCEを複数回行っている状況でインドは新審査待ちです。

② 本件特許に関しては特許無効審判が2回請求されています。2回とも朝日インテックが請求人です。このうち1回目は訴訟前に請求不成立の審決が確定しています。朝日インテックが日本ライフラインからの警告に対する対抗手段として請求したのか、それとも単に要注意特許があるので自発的に請求したのかは不明です。