洗濯ネットのファスナ事件

投稿日: 2018/10/30 4:16:07

今日は、平成29年(ワ)第22041号 差止等請求事件について検討します。原告である株式会社は、判決文によると、ダイヤコーポレーションは家庭用品等の製造販売を営む株式会社だそうです。一方、被告である株式会社ワイズは、生活用品の製造販売を営む株式会社だそうです。

 

1.手続の時系列の整理(特許第3523141号)

2.本件発明

A ネット状袋体に務歯よりなる開口部(6)とスライダ(3)と引き手とを備えたスライドファスナー(7)により開閉自在な洗濯用ネットであって、

B 引き手(2)にはそれより大きく摘みやすい逆台形状のリング形状を有し、かつ合成樹脂又はゴム材で形成された拡大把持体(1)を設け、

C 開口部(6)の閉口端(8)には、閉口された状態において、スライダ(3)と引き手(2)と拡大把持体(1)とで構成されるスライダ構成体(K)を10~50%露出させ、

D かつ少なくともスライダ(3)の肩部が露出し、

E 拡大把持体(1)が収まった状態になるように弾圧的に覆うカバー体(4)を設け、

F 拡大把持体(1)が基部(11)を備え、該基部(11)がスライドファスナー(7)の引き手(2)を内挿して該引き手(2)に設けられた切抜き穴(21)及び頭部に不可逆的に係止するための係止爪(14)及び止め部(17)を備えた

G ことを特徴とする洗濯用ネット。


3.被告製品


4.争点

(1)構成要件充足性

ア 構成要件Bの充足性(争点1-1)

イ 構成要件Cの充足性(争点1-2)

ウ 構成要件Dの充足性(争点1-3)

エ 構成要件Eの充足性(争点1-4)

(2)無効理由の有無

ア 乙9を主引用例とする進歩性欠如の有無(争点2-1)

イ 明確性要件違反の有無(争点2-2)

(3)差止め等の必要性(争点3)

(4)損害額(争点4)

4.争点

(1)構成要件充足性

ア 構成要件Bの充足性(争点1-1)

イ 構成要件Cの充足性(争点1-2)

ウ 構成要件Dの充足性(争点1-3)

エ 構成要件Eの充足性(争点1-4)

(2)無効理由の有無

ア 乙9を主引用例とする進歩性欠如の有無(争点2-1)

イ 明確性要件違反の有無(争点2-2)

(3)差止め等の必要性(争点3)

(4)損害額(争点4)

5.検討

(1)本件発明は、洗濯用ネットのファスナーに関するものです。判決では、被告製品が本件発明の構成要件B、C及びEを充足しない、と認定されました。構成要件のうちの一つでも充足しなければ当然非抵触なので、通常は一つの構成要件についてのみ検討しているケースが多いのですが、本件では珍しくわざわざ三つの構成要件について検討しています。

(2)被告製品が本件発明のポイントと思われる構成要件Cを充足しないということは、被告製品は本件明細書に記載された開口手順を採用しておらず、そもそも技術的思想が異なる可能性が高いように思われます。