畦塗り機事件(その2)

投稿日: 2017/08/07 22:21:33

平成27年(ワ)第8517号 特許権侵害差止請求事件の続きです。

2.特許の内容

「本件発明1(請求項1記載の発明)」

1A:元畦を修復する整畦体(6)を備えた畦塗り機であって、

1B:前記整畦体(6)における側面修復体は、回転軸を中心として周方向に等間隔に配設された複数の整畦板(27a)を相互に連結して構成され、

1C:隣接する整畦板(27a)の境界部分に沿って設けられた連結片(27c)で前記隣接する整畦板(27a)を相互に連結することにより、一体の前記側面修復体が構成され、

1D:前記隣接する整畦板(27a)の境界部分に段差部(27d)が形成され、

1E:前記隣接する整畦板(27a)のうち、回転方向前側に位置する整畦板(27a)の回転方向後側の側縁が、直線状であり、

1F:前記連結片(27c)は、前記隣接する整畦板(27a)のうち、回転方向前側に位置する整畦板(27a)の整畦面の裏面に固定され、回転方向後側に位置する整畦板の整畦面に延在しない

1G:ことを特徴とする畦塗り機。

「本件発明2(請求項2記載の発明)」

2A:前記複数の整畦板(27a)の基端部は、前記回転軸を中心とする取付け基部に取付けられている

(ことを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機)

「本件発明3(請求項3記載の発明)」

3A:前記側面修復体の外周縁を構成する各整畦板の外端が、円弧状部分と直線状部分とを有する

(ことを特徴とする請求項1又は2に記載の畦塗り機。)

「本件発明4(請求項4記載の発明)」

4A:前記隣接する整畦板の境界部分では、回転方向前側に位置する整畦板の外端が、前記円弧状部分になっている

(ことを特徴とする請求項3に記載の畦塗り機。)


3.被告製品

3.1 被告製品1

1a:元畦を修復するディスク部を備えたあぜぬり機であって、

1b:ディスク部におけるウィングディスクは、ディスク軸(ディスクジク)の中心を通る回転軸を中心として周方向に等間隔に配設された8枚の整畦板を相互に連結して構成され、

1c:隣接する整畦板は、連結部材によって相互に連結されることにより、一体のウィングディスクが構成され、

1d:前記隣接する整畦板と整畦板との間に段差が形成され、

1e:前記隣接する整畦板のうち、回転方向前側に位置する整畦板の回転方向後側の側縁が、直線状であり、

1f:前記連結部材は、前記隣接する整畦板のうち、回転方向前側に位置する整畦板のディスク面の裏面及び回転方向後側に位置する整畦板のディスク面の裏面にそれぞれ固定されており、

2a:前記複数の整畦板の基端部は、前記ディスク軸(ディスクジク)の中心を通る回転軸を中心とする部材に取付けられ、

3a:前記ウィングディスクの外周縁を構成する各整畦板の外端が、円弧状部分と直線状部分とを有し、

4a:前記隣接する整畦板の境界部分では、回転方向前側に位置する整畦板の外端が、前記円弧状部分になっている

1g:ことを特徴とするあぜぬり機。

3.2 被告製品2

被告製品2は、被告製品1の一部を構成するディスクであり(消耗部品)、そのディスク径によって対応する被告製品1が異なるものの、本件各発明と対比されるべき構成及び作用効果は、実質的に同一であり、被告製品2を対応する被告製品1に使用した場合の構成は、被告構成1a、同1b、同1c、同1d、同1e、同1f、同2a、同3a、同4a及び同1gと一致する。

4.争点

(1)被告製品1は本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)

ア 被告製品1は構成要件1Cを充足するか(争点1-1)

イ 被告製品1は構成要件1Dを充足するか(争点1-2)

ウ 被告製品1は構成要件1Fを充足するか(争点1-3)

エ 被告製品1は構成要件2Aを充足するか(争点1-4)

(2)本件各発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものか(争点2)

ア 無効理由1(新規性欠如。ただし本件発明1についての特許及び本件発明2についての特許に限る。)は認められるか(争点2-1)

イ 無効理由2(進歩性欠如)は認められるか(争点2-2)

ウ 無効理由3(補正要件違反)は認められるか(争点2-3)

エ 無効理由4(分割要件違反による新規性又は進歩性欠如)は認められるか(争点2-4)

オ 無効理由5(実施可能要件違反)は認められるか(争点2-5)

カ 無効理由6(サポート要件違反)は認められるか(争点2-6)

キ 無効理由7(明確性要件違反)は認められるか(争点2-7)

ク 無効理由8(同一発明の同日出願。ただし本件発明2についての特許に限る。)は認められるか(争点2-8)

5.裁判所の判断

5.1 本件各発明の意義

-省略-

5.2 争点1(被告製品1は本件各発明の技術的範囲に属するか)について

(1)被告製品1の構成について

証拠(甲4ないし20、乙41)及び弁論の全趣旨によれば、本件各発明の技術的範囲に属するかの判断に関連する被告製品1の具体的構成は、次のとおりと認められる。

ア 被告製品1における「ウィングディスク」の具体的構成を上面図により図示すると、次の〔図1〕のとおりとなる。ここで、隣接する2枚の整畦板は、その境界付近において、各整畦板の側縁と略同じ長さを有する細長い板状の連結部材

(〔図1〕の赤色着色部分)により、相互に連結されている。

イ 被告製品1における隣接する整畦板相互の連結態様を部分拡大図により図示すると次の〔図2〕のとおりとなる。ここで、回転方向前側の整畦板(〔図2〕の下側に図示された整畦板)と回転方向後側の整畦板(同上側に図示された整畦板)とは、そのさかい目付近において段差を形成しているものの、重なり部分を有していない。両整畦板は、そのさかい目付近において、連結部材により相互に連結されているが、同連結部材は、回転方向前側の整畦板の裏面と、回転方向後側の整畦板の裏面とにそれぞれ固定されており、回転方向後側の整畦板のディスク面側に延びてはいない。

ウ 被告製品1における整畦板の取付け態様を図示すると次の〔図3〕及び〔図4〕のとおりとなる。ここで、各整畦板の基端部(扇形状の整畦板の根本部分)は、「取付け基部」(〔図3〕〔図4〕の緑色着色部分)という部材にそれぞれ取り付けられている。「取付け基部」は、被告製品1のウィングディスクを回転させる回転動力の回転中心が、その「取付け基部」の中心を通っており、回転動力が「取付け基部」を介して各整畦板に伝えられて「ウィングディスク」が回転する。また、「取付け基部」には、「スパイラルローラー」(〔図4〕の紫色着色部分)がさらに取り付けられている。「スパイラルローラー」は、「ウィングディスク」と共に回転することにより、元畦の上面を修復し、「ウィングディスク」は、元畦の側面を修復する。他方、「取付け基部」も、「スパイラルローラー」及び「ウィングディスク」と共に回転して、元畦と接し、元畦の一部を修復するが、修復する部分は元畦の上面と側面との境界付近である。


(2)争点1-1(被告製品1は構成要件1Cを充足するか)について

ア 構成要件1Cは、「隣接する整畦板の境界部分に沿って設けられた連結片で前記隣接する整畦板を相互に連結することにより、一体の前記側面修復体が構成され、」とするところ、被告製品1における「ウィングディスク」は、構成要件1Cにいう「側面修復体」に該当するものと認められる(この点は、被告も争わないところである。)。

イ 「連結片」について

(ア)構成要件1Cにいう「連結片」とは、特許請求の範囲の記載に照らせば、隣接する整畦板を相互に「連結」する「片」であるといえるところ、「連結」とは「つらねむすぶこと。むすびあわせること。」という意義を有し(広辞苑第六版)、「片」とは「ひときれ。きれはし。」という意義を有することから(広辞苑第六版〔甲22〕)、「隣接する整畦板を互いに結び合わせるひときれの部材」という意味であると解するのが相当である。しかるところ、前記前提事実及び前記(1)に認定したところによれば、被告製品1の「連結部材」は、隣接する整畦板の各裏面にそれぞれ固定されて両整畦板を互いに結び合わせており、かつ、その形状からして「ひときれの部材」ということができる。そうすると、被告製品1の「連結部材」は、構成要件1Cにいう「連結片」に該当するものと認められる。

(イ) この点について、被告は、「連結片」については、特許請求の範囲の記載のみではその意義が明らかでなく、本件明細書の発明の詳細な説明中、「連結片」について記載された唯一の文章を参酌してもなお、その意義が明らかでないとして、本件明細書の【図8】に図示された構成を意味すると限定解釈すべきである旨主張する。しかし、上記のとおり、「連結片」の意義は、特許請求の範囲の記載自体から明確であって、その技術的範囲を確定するために本件明細書の記載を参照するにしても、その意義を一実施例として【図8】に図示された構成に限られると解すべき理由はない。

被告は、上記限定解釈の根拠として、本件特許の原出願日の3日後である平成13年9月6日に原告がした別の出願(特願2001-270226号。本件特許の原々々出願を分割したものではない。)に係る特許第4541608号公報(以下「乙16公報」という。)の記載や、本件明細書の段落【0024】の記載にも言及する。しかし、そもそも、本件特許とは別の出願に係る乙16公報の記載は、本件各発明の構成要件を限定解釈すべき根拠となるものではない(なお、乙16公報には、本件明細書の【図8】と略同一の図面である【図4】が記載され、【図4】が示す実施例に係る部分拡大断面図として【図6】が記載されているところ、【図6】に図示された「連結片15c」は、回転方向後側の整畦板の回転方向前端面と一体となっており、かつ、回転方向前側の整畦板の裏面に固定されている構成となっていることが認められるが、本件明細書には、乙16公報の【図6】に相当する図面は、記載されていない。)。また、本件明細書の段落【0024】には、「図8(a)、(b)に示す第5実施例の整畦ドラム27は、図5の第2実施例における整畦ドラム24の連結部材24c、24dに代えて、整畦ドラム27のドラムの内側において、各整畦板27aの重なり部分27bに沿って設けた2つの連結片27c、27cにより固着している。」(判決注:下線を付した。)との記載があるところ、本件明細書の【図5】に図示された「連結部材24c、24d」は、整畦ドラム24を構成するすべての整畦板を1つ又は2つの部材により一括して連結する部材であるから、本件明細書の段落【0024】の記載は、【図5】に図示されたような「すべての整畦板を一括して連結する連結部材」という構成に代えて、【図8】に図示された「隣接する整畦板を相互に連結すべく、当該隣接する2つの整畦板の境界付近に連結片を設ける」構成を説明する記載であるとはいえる。しかし、同記載をもって、特許請求の範囲における「連結片」との記載の意義を【図8】に図示された構成に限定解釈すべきものとは解されない。

したがって、「連結片」の意義を「その基端部が整畦板の回転方向前端面に連続して一体的になった連結片」とか、「隣接する整畦板同士をつなぎ合わせる小さな切れ端の部材であって、その長さが整畦板の側縁に比べてかなり短い部材」に限定解釈すべきであるとの被告主張は、採用することができない。

ウ 「境界部分」について

(ア) 構成要件1Cにいう「境界部分」とは、特許請求の範囲の記載に照らせば、「隣接する整畦板の境界部分」であるといえるところ、「境界」とは、「物事のさかい目」という意義を有し(大辞林第三版〔甲38〕)、「部分」という語が「全体の中の一ヵ所」をいう意義を有することから(広辞苑第六版)、「隣接する整畦板のさかい目付近の箇所」という意味であると解するのが相当である。しかるところ、前記前提事実及び前記(1)に認定したところによれば、被告製品1の「連結部材」は、隣接する整畦板のさかい目付近の箇所に沿って設けられているのであるから、「隣接する整畦板の境界部分に沿って設けられた」ものであるいうことができる。

(イ) この点について、被告は、「境界部分」については、特許請求の範囲の記載のみではその意義が明らかでない、本件明細書には、各整畦板により形成された「重なり部分」に沿って設けられた連結片が記載されているにとどまり、「重なり部分を有しない境界部分に沿って設けられた連結片」は記載されていない、整畦面が重なり部分を有することは、本件各発明の作用効果を奏するために不可欠の構成であるなどとして、「境界部分」は、「重なり部分を有する境界部分のうちその重なり部分」を意味すると限定解釈すべきである旨主張する

しかし、上記のとおり、「境界部分」の意義は、特許請求の範囲の記載自体から明確であって、その技術的範囲を確定するために本件明細書の記載を参照するにしても、その意義を本件明細書に一実施例として記載された構成に限られると解すべき理由はない。

また、本件明細書の段落【0031】には、「整畦ドラムの隣接する整畦板は相互に所定の重なりを有し、その重なり部分に垂直段部を形成したので、土盛体により供給された泥土を、回転しながら各垂直段部により間欠的に叩打しながら泥土を固めて元畦に塗りつけ、良好な畦を形成することができる。しかも整畦板の重なり部分により泥土が整畦ドラムの内面側に侵入するのを少なくすることができる。」との記載があるが、本件明細書の<効果>欄(段落【0029】ないし【0033】)には、上記「泥土が整畦ドラムの内面側に侵入することを少なくすることができる」との効果のみならず、整畦板に垂直段部を形成したことによる効果や、複数の整畦板を複数の連結部材により連結したことによる効果なども記載されているのであって、本件各発明が解決しようとする課題である「所望の(十分な)元畦修復が行えない」ことや、「その形状や製造上、作用等において改良すべき点があった」ことを解決するために、「整畦板が重なり部分を有すること」が必須であるとはいえないし、ましてや「境界部分」を「重なり部分を有する境界部分のうちその重なり部分」に限定解釈すべきであるとは認め難い。

したがって、被告の主張は、採用することができない。

エ 争点1-1の小括

以上によれば、「隣接する整畦板のさかい目付近の箇所に沿って設けられたひときれの連結部材で前記隣接する整畦板を相互に連結することにより、一体のウィングディスクが構成され」た被告製品1は、構成要件1C「隣接する整畦板の境界部分に沿って設けられた連結片で前記隣接する整畦板を相互に連結することにより、一体の前記側面修復体が構成され、」を充足するというべきである。

(3)争点1-2(被告製品1は構成要件1Dを充足するか)について

構成要件1Dにいう「境界部分」とは、先に争点1-1について認定説示したとおり、「隣接する整畦板のさかい目付近の箇所」という意義を有するところ、前記認定事実によれば、被告製品1は、隣接する整畦板と整畦板との間、すなわち「境界部分」に段差が形成されていることが認められる。したがって、被告製品1は、構成要件1D「前記隣接する整畦板の境界部分に段差部が形成され、」を充足するというべきである。

(4)争点1-3(被告製品1は構成要件1Fを充足するか)について

先に争点1-1について認定説示したところによれば、被告製品1の「連結部材」は、構成要件1Fにいう「連結片」に該当する。

そして、構成要件1Fにいう「整畦面」とは、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の段落【0027】等の記載によれば、「整畦をする面」、すなわち、「整畦板の表面(側面修復体の外側部分を構成し、元畦と接する面)」を意味すると解される。

しかるところ、前記前提事実及び前記(1)に認定したところによれば、被告製品1の「連結部材」は、回転方向前側の整畦板の裏面と、回転方向後側の整畦板の裏面とにそれぞれ固定されており、回転方向後側の整畦板のディスク面(ウィングディスクの外側部分を構成し、元畦と接する面)側に延びて存在してはいない(すなわち、「延在しない」)のであるから、被告製品1は、構成要件1F「前記連結片は、前記隣接する整畦板のうち、回転方向前側に位置する整畦板の整畦面の裏面に固定され、回転方向後側に位置する整畦板の整畦面に延在しない」を充足するというべきである。

(5)争点1-4(被告製品1は構成要件2Aを充足するか)について

ア 構成要件2Aにいう「回転軸を中心とする取付け基部」とは、本件各発明が畦塗り用の泥土を回転しながら元畦に塗り付けて元畦を修復するドラム状の整畦体を備えた畦塗り機に係る発明であること(本件明細書の段落【0001】等)、「基部」という語が「基礎となる部分。ねもと。どだい。」との意義を有すること(広辞苑第六版)からして、「回転するドラム状の整畦体の回転中心となる軸(必ずしも部材としての「軸」に限られない。)を中心とする部材であって、特定の部材を取り付ける根本となる部材」という意味であると解される。

しかるところ、前記前提事実及び前記(1)に認定したところによれば、被告製品1の「取付け基部」は、ウィングディスクを回転させる回転動力の回転中心が、その中心を通っており、かつ、各整畦板が取り付けられる根本となる部材であることが認められる。

イ この点について、被告は、「回転軸を中心とする取付け基部」については、特許請求の範囲の記載のみではその意義が明らかでないところ、本件明細書には、上面修復体16a以外に、整畦板15aの基端部を取り付けている部材は図示されていないとして、「回転軸を中心とする取付け基部」は、「回転軸を中心とする円筒形状の上面修復体」を意味すると限定解釈すべきであり、被告製品1における「取付け基部」は、上面修復体とは異なる部材である(元畦の側面部分を修復しており、上面部分を修復しない)から、これに当たらない旨主張する。

しかし、上記のとおり、「回転軸を中心とする取付け基部」とは、「回転するドラム状の整畦体の回転中心となる軸(必ずしも部材としての「軸」に限られない。)を中心とする部材であって、特定の部材を取り付ける根本となる部材」をいうことが特許請求の範囲及び本件明細書の記載から明らかであり、整畦板を取り付けるという機能のほかに、元畦の上面部分を修復する機能を必須とするものであると解すべき根拠はない。

なお、本件明細書の段落【0021】には、「上記整畦ドラム15は、上記図4の第1実施例のように、回転中心の取付け基部に・・・整畦板15aの基端部を・・・取付け」があり、【図4】には、「上面修復体16a」とは独立した「取付け部材」なる部材が独立して図示されているわけではないが、これらの記載をもって、「取付け基部」につき、直ちに元畦の上面部分を修復する機能を必須とするものであると解することは、相当とは認め難い。

したがって、被告の主張は、採用することができない。

ウ 争点1-4の小括

以上によれば、「ウィングディスクを回転させる回転動力の回転中心が、その中心を通っており、かつ、各整畦板が取り付けられる根本となる部材」である取付け基部を有する被告製品1は、構成要件2A「前記複数の整畦板の基端部は、前記回転軸を中心とする取付け基部に取り付けられている」を充足するというべきである。

(6)争点1の小括

前記前提事実及び上記認定説示したところによれば、被告製品1は、本件各発明の構成要件をすべて充足し、本件各発明の技術的範囲に属するものと認められる。

5.3 争点2(本件各発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものか)について

-省略-

6.検討

(1)本事件の侵害論(抵触論及び無効論)については特に意見はありません。おそらく原告は被告製品を十分調べたうえで分割出願したと思われ、非抵触主張が難しい内容だと思います。また、情報提供が多数されているので今さら文献で新規性・進歩性の欠如を立証することは難しいように思われます。

(2)このように分割出願が繰り返されている場合に無効主張の候補に挙がるのは記載不備や分割違法です。本事件でもこれらに基づく無効主張が幾つか行われましたが、認められませんでした。

(3)原告は2001年の出願をベースに9件の分割出願を行うことで被告製品を含む特許を取得しました。両者は本事件以前にも別の特許の特許無効審判でも争っているようですし、将来的に別の特許で侵害事件の第2ラウンドがあるかもしれません。