平成28年(ネ)第10092号 特許権侵害差止等請求控訴事件(その1)

投稿日: 2017/01/23 3:06:26

今年の1月17日に判決言い渡しがあった侵害訴訟事件について検討してます。

今日は、以下の4つまで書きます。

(1)訴訟の経緯

(2)特許の内容

(3)被告製品の内容

(4)判決の内容

(1)訴訟の経緯

1審:大阪地裁 平成27年(ワ)第6380号 特許権侵害差止等請求事件

原告(特許権者)の請求はいずれも棄却されたので被告の勝ち

⇒原告が控訴

2審:知財高裁 平成28年(ネ)第10092号 特許権侵害差止等請求事件

控訴が棄却されたので被控訴人(1審被告)の勝ち

(2)特許の内容

特許番号:第3409299号

【請求項1】

A 互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材(4)と、

B これら複数の短尺クッション材(4)の表面側を被覆する長尺表面側シート部(2)とこれら複数の短尺クッション材(4)の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部(3)とからなる帯状被覆部材(20)と、

C 前記長尺表面側シート部(2)の外面に設けられ、明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様(5)と、

D 前記長尺裏面側シート部(3)の外面に設けられた粘着材層(6)とを有してなり、

E 全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッション(1)であって、

F 前記長尺裏面側シート部(3)同士の間から、前記複数の短尺クッション材(4)が露出している

G ことを特徴とするコーナークッション。

注)請求項は1から4まであるが請求項1のみ争われた。また、AからGまでの分説は判決に準じ、各構成の括弧付き番号は図面と対照しやすくするために筆者が付した。

特許発明の構成は添付図面参照。

特許発明の内容を簡単に言うと、複数の短尺クッション材を並べ、それらの一面(表面)側を斜め方向縞模様の長尺表面側シートで覆い、反対面(裏面)側の両端からそれぞれ一定の長さまで長尺裏面側シートで覆い、2つの長尺裏面側シート間に隙間を設けたクッションシートというものです。

(3)被告製品の内容

被告製品の構成も添付図面参照

被告は、被告製品が特許の請求項1の構成要件A~E及びGまでは備えていることを認めているが、構成要件Fは異なると主張している。すなわち、被告製品は裏面全体が粘着シール(粘着材層)で覆われているので短尺クッション(4)は露出していない、というものである。

(4)判決の内容

①原告の主張

被告製品においては、裏面側シート部は、両側部を一定幅で被覆しているだけであり、短尺クッション材を完全に覆うものではなく、その覆っていない中央部分から、短尺クッション材が「露出」している。したがって、被告製品は、本件発明の構成要件Fを充足している。

被告製品における短尺クッション材には粘着材が貼られているが、本件発明は、短尺クッション材の表面にどのような処理がなされているかについては触れていないことから、被告製品における短尺クッション材に粘着材が貼られていても、「露出」を充足する。 

②被告の主張

国語辞典において「露出」とは、「あらわれでること、あらわしだすこと」と定義されている。また、本件明細書【0030】の記載からすると、構成要件Fの「露出」の意味は、短尺クッション材が膨張した空気が放出され得る態様で外気と触れていることを示している。 

しかし、被告製品は、裏面の全面を覆うようにして1枚の粘着シールが裏面の全体に貼られており、かつ、短尺クッション材はコーナークッション内部で密封されて外気と触れておらず、膨張する空気が放出されることはない。 したがって、被告製品の裏面は、「露出」には当たらず、また、本件発明の効果を奏する構造にはなっていないから、構成要件Fを充足しない。

③裁判所の判断

「露出」とは、「あらわに,むき出しになること」(広辞苑第6版)を意味するが、本件発明の課題及び効果に照らせば、本件発明におけるその技術的意義は、コーナークッション内を通気性、透湿性が制限された状態から解放してその弊害を除去するというだけでなく、製品を長手方向に折り曲げても、クッション裏面の幅方向中央部周辺に裏面シート部と粘着材層がないことで、裏面シートと粘着材に皺やたるみが生じず、粘着材同士がくっつかず、その結果、製品をコーナー部に密着させやすくするという点にもあるものと解される。

そうすると、構成要件Fの「前記長尺裏面側シート部同士の間から、前記複数の短尺クッション材が露出している」とは、コーナークッション裏面において、複数の短尺クッション材の幅方向中央部周辺が長尺裏面側シートに覆われておらず、長尺裏面側シートの間から見える構成となっていることを指すのみならず、長尺裏面側シートに覆われていない幅方向中央部周辺の短尺クッション材が粘着材にも覆われていないことを指すと解するのが相当である。

次回、裁判所の判断についてもう少し詳しく書きます。