ロボット便座事件(その1)

投稿日: 2017/05/18 9:02:59

今日は平成28年(ワ)第2818号 特許権侵害行為差止等請求事件について検討します。

原告である株式会社岡田製作所は介護・健康用品の製造、販売等を業とする株式会社です。一方、被告であるP1(個人)は、P2の屋号で介護用の臀部拭き取り装置(ロボット便座)の研究・開発を行う者であり、原告の有する特許権のうち後記本件発明の発明者です。また、同じく被告である株式会社日本アシストは、被告P1と共同して温水洗浄便座を使用した臀部拭き取り装置の製造、販売を計画していた株式会社です。

今日は各手続の時系列の整理まで投稿します。なお、基礎出願はいずれも平成23年以前なので、特許法第30条は平成23年改正前の条文が適用されます。

 

1.各手続の時系列の整理

 

◎ 最初に書いたように本事件の被告の一人(P1)は本件発明の発明者です。そして、2017年5月18日現在の原告企業のホームページによると原告企業の代表取締役とこのP1が同姓同名です。

◎ 前回の判例に引き続きこの事件でも発明の新規性喪失の例外規定が複数回適用されています。原告企業はそれぞれについてキチンと証明書を作成しています。ちょっとJ-PlatPat検索してみたら原告企業の出願は発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けているものが多いようなので慣れているようです。しかし、本件特許出願のように平成23年改正前でもこれだけ出願前に公開しているので、平成23年改正により制限が緩和された状況下ではものすごい数の証明書を用意することになるかもしれません。

◎ 本件特許出願は第二世代に当たる分割出願です。被告が厚生労働省の平成26年(2014年)度及び平成27年(2015年)度障害者自立支援機器等開発促進事業の費用助成を受けロボット便座βを開発し成果報告を行っている点、国際福祉2015にロボット便座βを出展している点及び第二世代の分割出願と同時に早期審査請求している点からすると、原告は被告製品の存在を認識したうえで対応していると考えられます。

◎ 一方、原告企業のホームページによると原告も介護ロボット便座「楽々きれっと」を開発中であり、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の平成27年(2015年)度「ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)」に採択されたそうです。