上位概念?

投稿日: 2017/03/11 1:30:14

サラリーマン時代に技術部門から知財部門に異動して最初に明細書の書き方の指導を受けたとき、特許請求の範囲の請求項は順に上位概念から下位概念になるように書くのが基本と教わりました(当時は特許請求の範囲は明細書の一部でした)。しかし、この上位概念というものが具体的にどのようなものか理解できなくて困りました。

周りに聞くと「意味が限定されすぎない表現」とか「包括的な表現」と言われ、中には具体例として「バネ」や「ゴム」を上位概念化して「弾性体」と書くようなものだよ、と教えてくれる人もいました。結局よくわからないまま、一時期は「~手段」といった機能的表現を多用していたことがあります。

その後、判例を調べたり権利化や特許係争をいくつかこなしていくうちに、いくら上位概念化したところで明細書の記載に限定されるケースが多いことに気づき、上位概念化によって特許請求の範囲の技術的範囲(権利範囲)を広くすることには限界があると気づきました。さらに均等論が認められるに従いむやみな上位概念化の必要性が薄れてきたと思いました。

そこで上位概念化以外に特許請求の範囲の技術的範囲を広くする方法を考えたところ、非常に効果的な方法がありました。それは書かないことです。オープン形式の場合には特許請求の範囲に記載されていない構成が被告製品に存在しても技術的範囲に属するという判断に影響を与えないからです。そして、もともと特許請求の範囲に書いていない構成なので被告も論点にしにくいのです。

自分で特許請求の範囲を書くときには省略可能な語句や言い回しや順番を変えることで書かなくて済むように検討しますし、判例を読む際には文言解釈の論点となった語句を省略する方法を考えたります。言うは易く行うは難しですが、効果的な手法です。