負荷試験装置事件

投稿日: 2017/08/08 18:47:28

今日は平成28年(ワ)第5095号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。原告である株式会社辰巳菱機は、判決文によると、負荷試験装置の製造、販売、リース及び非常用発電機等の負荷試験等を業とする株式会社だそうです。J-PlatPatを使って会社名で検索したところ41件の特許がヒットしましたが、現在存続しているものは30件くらいだと思われます。一方、被告である株式会社アステックスは負荷試験装置の設計、製作、販売、リース、レンタル及び電気設備工事の設計施工等を業とする株式会社だそうです。こちらは2件ヒットしましたが、同名の会社が幾つかあるようなので、本事件の被告の特許か特定できませんでした。

なお、裁判所のホームページからダウンロードした判決文中では平成28年(ワ)第5095号となっていますが、裁判例情報の検索結果一覧表示画面には平成28(ワ)5085と表示されていました。そのため、5095で検索すると「該当する裁判例がありませんでした。」と表示されます。

 

1.1 手続の時系列の整理(特許第5702038号)

① 本件特許は国際出願(PCT/JP2014/004062)が国内移行されたものです。この国際出願はさらに国際出願(PCT/JP2014/000944)を優先権の基礎出願とするものですが、こちらの国際出願自体は国際公開されていません。おそらく国際公開前に取り下げたものと思います。

② 国際調査報告書では全請求項に対してカテゴリAの判断でした。国際調査報告書を作成した審査官と特許査定した審査官が同一なので拒絶理由無しで特許査定になるのは当然です。

1.2 以前の訴訟の経緯

両者のニュースリリースを読んだところ本事件の原告と被告の間で過去にも侵害事件が発生していました。気になったのでその経緯もまとめてみました。

① 平成25年(ワ)第30375号事件は被告が原告に和解金を支払うことで決着しました。

② 平成27年(ワ)第5542号事件は原告が訴えを取り下げることで決着しました。

2.特許の内容

「本件発明」

A-1:抵抗器が水平方向に並べられた抵抗器群が、

A-2:鉛直方向であるz方向に複数段並べられ、

A-3:絶縁素材で構成され前記抵抗器群の側面を覆う枠(21a~26a)を含む抵抗ユニット(21~26)が2以上設けられ、

B:冷却ファン(31~36)を内蔵した土台部(11~16)が、別体構成で2以上設けられ、

C:前記土台部(11~16)のそれぞれは、上部に少なくとも1以上の前記抵抗ユニット(21~26)が碍子(50)を介して取り付けられ、

D:前記枠(21a~26a)のうち、少なくとも他の抵抗ユニット(21~26)と対向する位置関係にあるものは、上から見て第1距離(d1)だけ、前記抵抗ユニット(21~26)を取り付けた土台部(11~16)の側面よりも内側に配置され、

E:前記2以上の抵抗ユニット(21~26)は、隣り合う抵抗ユニット(21~26)間の絶縁のために、隣り合う抵抗ユニット(21~26)における前記(21a~26a)枠の間隔が第2距離(d2)以上になるように、並べられ、

F:前記第2距離(d2)は、前記第1距離(d1)の2倍であり、

G:前記第1距離(d1)は、45mm以上である

H:ことを特徴とする負荷試験機。


3.争点

(1)被告物件は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)

具体的には、次の点が争われている。

ア 被告物件の構成はいかなるものか(争点1-1)

イ 被告物件は、文言上本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件A-3、同D、同E、同F及び同Gの充足性)(争点1-2)

ウ 被告物件は、本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか(争点1-3)

(2)本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものか(争点2)

具体的には、仮に、被告物件が本件発明の技術的範囲に属する場合に、被告物件に係る発明が本件優先日前に公然知られた発明又は公然実施された発明であるかが争われている。

(3)被告は被告物件を販売しているか(販売の差止めの必要性)(争点3)

(4)原告の損害及びその額(争点4)

4.裁判所の判断

4.1 争点1(被告物件は本件発明の技術的範囲に属するか)について

(1)争点1-1(被告物件の構成はいかなるものか)及び争点1-2(被告物件は、文言上本件発明の技術的範囲に属するか)について

ア 本件発明の技術的意義について

(ア)特許請求の範囲の記載は、前記前提事実等(2)のとおり、本件明細書等の記載は、別紙特許公報(甲2)の該当欄のとおりである。

これらによれば、本件発明は、概ね、以下のとおりのものと理解することができる(【】は、本件明細書等における段落番号等を示す。)。

(イ)本件発明は、「交流発電機などの電源に対する電気負荷試験に用いられる負荷試験機」(【0001】)に関し、「複数の抵抗ユニットで構成される負荷試験機で、運搬や設置が容易な負荷試験機を提供すること」(【0005】)を目的とし、構成要件A-1、同A-2、同A-3、同B、同C、同D、同E、同F及び同Gを備えることにより、「複数の抵抗ユニットで構成される負荷試験機で、運搬や設置が容易な負荷試験機を提供することができる」(【0025】)というものである。

(ウ)本件発明は、構成要件B及び同Cを備えることにより、「土台部は、他の土台部と別体で構成されるため、土台部に抵抗ユニットや冷却ファンが取り付けられ、且つ、他の土台部と連結されない状態で、各土台部を運搬することが可能になる」(【0007】)とされ、また、構成要件Dないし同Gを備えることにより、「それぞれの抵抗ユニットの枠は、土台部よりも内側に配置されるため、土台部同士が接触するように設置しても、抵抗ユニット同士は接触せず、第2距離以上の間隔が保たれる・・・ため、各土台部が別体でも、抵抗ユニット間の絶縁を維持した状態で容易に設置することが可能になる」(【0009】)ものであり、特に、「第2距離が90mm以上に出来るため、隣り合う2つの抵抗ユニットのそれぞれに6600Vの電圧が印加された場合でも、当該抵抗ユニット間の絶縁を維持することが出来る」(【0010】)とされている。

(エ)本件明細書等には、構成要件A-3の技術的意義について直接的に説明した記載は見当たらないが、これに関連するものとして、【発明を実施するための形態】につき、次の記載がある。

「第1抵抗ユニット21の第1枠21aの背面は、第3抵抗ユニット23の第3枠23aの前面と対向し、第1抵抗ユニット21の第1枠21aの側面の一方は、第2抵抗ユニット22の第2枠22aの側面の他方と対向する。」(【0037】)

「抵抗器群のそれぞれは、下部に設けられた冷却ファンからの冷風を上部に流すために、上面と下面が開口し、隣り合う抵抗ユニットとの絶縁性を高めるために、絶縁素材で出来た枠(第1枠21a~第6枠26a)で側面が覆われ、各抵抗器Rの両端子は当該枠の前面部分や背面部分によって保持される。」(【0045】)

「第1抵抗ユニット21の抵抗器群(第11抵抗器群R11~第18抵抗器群R18)の側面を覆う第1枠21aのうち、少なくとも他の抵抗ユニット(第2抵抗ユニット22や第3抵抗ユニット23)と対向する位置関係にあるものが、上から見て(水平方向に)第1距離d1(45mm以上)だけ、第1土台部11の側面よりも内側に配置されるように、第1土台部11と第1抵抗ユニット21の寸法や位置関係が決定される。」(【0046】)

「第2抵抗ユニット22の抵抗器群(第21抵抗器群R21~第28抵抗器群R28)の側面を覆う第2枠22aのうち、少なくとも他の抵抗ユニット(第1抵抗ユニット21や第4抵抗ユニット24)と対向する位置関係にあるものが、上から見て(水平方向に)第1距離d1だけ、第2土台部12の側面よりも内側に配置されるように、第2土台部12と第2抵抗ユニット22の寸法や位置関係が決定される。」(【0047】)

「第3抵抗ユニット23の抵抗器群(第31抵抗器群R31~第38抵抗器群R38)の側面を覆う第3枠23aのうち、少なくとも他の抵抗ユニット(第1抵抗ユニット21や第4抵抗ユニット24や第5抵抗ユニット25)と対向する位置関係にあるものが、上から見て(水平方向に)第1距離d1だけ、第3土台部13の側面よりも内側に配置されるように、第3土台部13と第3抵抗ユニット23の寸法や位置関係が決定される。」(【0048】)

上記各記載と上記図面(【図3】)を併せみれば、本件明細書等においては、①「抵抗ユニット」は、「抵抗器群」と「枠」を構成要素とするものであること、②「抵抗器群」は、上面と下面が開口し、側面の全て(四面)が「枠」で覆われているものであること、③「枠」は、「前面」、「背面」、「側面の一方」及び「側面の他方」の四面を有しており、これら全てが「絶縁素材」で構成されているものであること、④「抵抗器群」が「絶縁素材で出来た枠」で「側面が覆われ」るようにするのは、「隣り合う抵抗ユニットとの絶縁性を高めるため」(ひいては、抵抗ユニット間の絶縁を維持し、運搬や設置が容易な負荷試験機を提供するため)であることが、いずれも容易に理解できる。

すなわち、本件明細書等において、「枠」という用語は、角筒状の「抵抗ユニット」の外側面全体(四面)を指すもの、すなわち「抵抗器群」の「上面」及び「下面」を除く四面を各筒状に取り囲む部分全体を示すものとして用いられており、抵抗器群の「側面」とは、「上面」及び「下面」を除く四面を意味するものとして用いられているといえる

そして、上記のような理解は、特許請求の範囲における「絶縁素材で構成され前記抵抗器群の側面を覆う枠を含む抵抗ユニットが2以上設けられ、」(構成要件A-3)、「前記枠のうち、少なくとも他の抵抗ユニットと対向する位置関係にあるものは、上から見て第1距離だけ、前記抵抗ユニットを取り付けた土台部の側面よりも内側に配置され、前記2以上の抵抗ユニットは、隣り合う抵抗ユニット間の絶縁のために、隣り合う抵抗ユニットにおける前記枠の間隔が第2距離以上になるように、並べられ、」(構成要件D、同E)との記載(下線は、裁判所が付した。)とも整合している。

したがって、本件発明の構成要件A-3にいう「絶縁素材で構成され前記抵抗器群の側面を覆う枠を含む抵抗ユニット」とは、「絶縁素材で構成され(た)」「枠」であって、「前記抵抗器群の側面」(すなわち、「上面」及び「下面」を除く四面)「を覆う枠」「を(構成要素として)含む」「抵抗ユニット」を意味すると解するのが相当というべきである(なお、仮に、「前記抵抗器群の側面」を「上面」及び「下面」を除く四面の全てと解することが相当でないとしても、「隣り合う抵抗ユニット間の絶縁のために」という目的ないし「隣り合う抵抗ユニットとの絶縁性を高める」という作用効果からすれば、少なくとも、互いに隣り合う関係にある「枠」が「絶縁素材で構成され」ていることは、最低限、必要であると解するべきである。)。

(オ)この点、原告は、特許請求の範囲の「含む」との文言を根拠として、絶縁素材で構成されない「枠」の存在は排除されておらず、「抵抗器群の側面」のいずれかを「覆う枠」が「絶縁素材」であれば、「絶縁素材で構成され前記抵抗器群の側面を覆う枠を含む」との要件を充足する旨主張する。

しかし、本件明細書等において、「抵抗ユニット」が「抵抗器群」と「枠」を構成要素とするとされていることは、前示のとおりであるから、構成要件A-3にいう「含む」という用語は、「枠」が「抵抗ユニット」の構成要素であること、すなわち、「抵抗ユニット」が「枠」を「含む」ことを規定したものと理解すべきであるし、本件明細書等において、「前記抵抗器群の側面」という用語が「上面」及び「下面」を除く四面を意味するものとして用いられていることも、前示のとおりである(特許請求の範囲における「前記枠のうち、少なくとも」との記載も、「前記枠」、すなわち、「絶縁素材で構成され前記抵抗器群の側面を覆う枠」が「他の抵抗ユニットと対向する位置関係にあるもの」に限られないことを示している。)。

また、実質的に考えても、本件明細書等の記載に照らせば、「前記抵抗器群の側面」を「絶縁素材で構成され(た)」「枠」で「覆われ」るようにする技術的意義は、「隣り合う抵抗ユニットとの絶縁性を高めるため」であると解されるところ、「前記抵抗器群の側面」の中に絶縁素材で構成されない「枠」で「覆われ」るものがあれば、その「枠」と「隣り合う抵抗ユニットとの絶縁性を高める」ことができないことに帰するといえる。

したがって、構成要件A-3における「含む」との文言は、「抵抗ユニット」が「前記抵抗器群」の「上面」及び「下面」を除く四面「を覆う枠」「を(構成要素として)含む」」ことを規定したものであり、「隣り合う抵抗ユニットとの絶縁性を高める」という作用効果からすれば、最低限、互いに隣り合う関係にある「枠」が「絶縁素材で構成され」ていることを要するというべきである。原告の上記主張は、特許請求の範囲及び本件明細書等の記載に基づかずに、「含む」という文言を形式的に解釈しようとするものであって、採用することができない。

イ 構成要件A-3、同D及び同Eと対比すべき被告物件の構成について

被告物件が構成a-1、同a-2、同b、同c及び同hを備えていることは、当事者間に争いがない。

証拠(甲4ないし6)及び弁論の全趣旨によれば、被告物件においては、次の図(甲4の1の右上図及び甲6の【写真3】〔いずれも被告物件1号機〕並びに甲6の【写真18】〔被告物件2号機〕に当裁判所が若干の説明を付記したもの。)に示されるように、①抵抗ユニット(ヒーターユニット)の「上面」及び「下面」を除く四面のうち、抵抗器(ヒーター)が挿通されない二面にはアルミ側板(非絶縁素材のパネル)がはめられ、抵抗器が挿通される残りの二面(抵抗体端部側)にはガラスエポキシ側板(絶縁素材のパネル)がはめられていること、②抵抗器群(ヒーター群)は、上記四面の側板に囲まれて載置されていること、③抵抗ユニットの上下端には、上記側板よりも外側方に突出したアルミフレーム(非絶縁素材の骨組材)が四面全てに付されていること、④互いに隣り合う抵抗ユニットは、アルミ側板同士が向かい合う位置関係にあることが認められる。


ウ 構成要件A-3、同D及び同Eと被告物件との対比

(ア)前記アの認定説示及び上記イの認定事実によれば、被告物件の抵抗ユニットは、その「上面」及び「下面」を除く四面の側板が絶縁素材でないアルミ側板を構成要素としており、しかも、互いに隣り合う抵抗ユニットは、このアルミ側板同士が向かい合う位置関係にあることからすれば、本件発明の構成要件A-3にいう「絶縁素材で構成され前記抵抗器群の側面を覆う枠を含む抵抗ユニット」には該当しないというべきであり、被告物件は、同構成要件を充足しない。

(イ)構成要件D(「前記枠のうち、少なくとも他の抵抗ユニットと対向する位置関係にあるものは、上から見て第1距離だけ、前記抵抗ユニットを取り付けた土台部の側面よりも内側に配置され、」)にいう「前記枠」とは、構成要件A-3にいう「絶縁素材で構成され」た「枠」を意味することは、特許請求の範囲の記載から明らかであり、構成要件E(「前記2以上の抵抗ユニットは、隣り合う抵抗ユニット間の絶縁のために、隣り合う抵抗ユニットにおける前記枠の間隔が第2距離以上になるように、並べられ、」)の「前記枠」も同様である。

上記イの認定事実によれば、被告物件の互いに隣り合う抵抗ユニットは、アルミ側板同士が向かい合う位置関係にあり、このアルミ側板が、少なくとも「絶縁素材で構成され」た「枠」に該当しないことは、明らかである。そうすると、被告物件においては、絶縁素材製の側板と絶縁素材製の側板が対向する位置関係にあることはないから、構成要件Dにいう「第1距離」及び構成要件Eにいう「第2距離」に相当するものが存在し得ないというほかはなく、被告物件は、これらの構成要件を充足し得ないものであり、したがって、構成要件F及び同Gを充足することもあり得ない。

エ なお、原告は、弁論準備手続の終結が予定されていた平成29年3月8日の第7回弁論準備手続期日において陳述した同日付け第4準備書面(10頁以下)において、抵抗ユニットを取り外し、運搬した後、設置する態様に言及したものの、これを請求原因事実として主張しているとは解されない(原告は、差止請求、廃棄請求及び損害賠償請求の対象とする被告物件の具体的構成としては、別紙被告物件説明書(1)及び別紙被告物件説明書(2)のとおりであるとしている〔同期日に陳述した同日付け訴状訂正申立書〕。)。

したがって、当裁判所としては、同態様について検討するには及ばない(仮に、これについて検討したとしても、原告は、同態様において、互いに隣り合う抵抗ユニットのガラスエポキシ側板同士が向かい合う位置関係にあることを主張しておらず、その立証もしていないから、本件の結論には、何ら影響しない。むしろ、証拠〔甲6〕によれば、被告物件の場合、絶縁素材であるガラスエポキシ側板同士を対向させるように設置することは、著しく困難であることがうかがわれるところである。)。

(2)争点1-3(被告物件は、本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について

原告は、構成要件A-3にいう「枠」につき、四面の全てが「絶縁素材で構成され」ることは、本件発明の本質的部分ではないなどとして、被告物件が本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属する旨主張する。

しかし、前記(1)アで説示したところによれば、本件発明は、単に簡単に設置するというだけでなく、複数の抵抗ユニットと土台が組み立てられる際に、抵抗ユニット間の絶縁を維持した状態で簡単に設置できるようにしたという点において、従来技術では達成することのできなかった新たな作用効果を奏するものとされているのであって、これを実現するための本件発明に特有の構成として、「前記抵抗器群の側面」(「上面」及び「下面」を除く四面。少なくとも、「枠」のうち「他の抵抗ユニットと対向する位置関係にあるもの」)を「絶縁素材で構成され(た)」「枠」で「覆われ」るようにしたものというべきである。そうすると、本件相違部分は、本件発明の本質的部分に係るものであるというべきであり、均等侵害を論ずる余地はないといえる。

5.検討

(1)被告製品の抵抗ユニットの4面の枠がすべてアルミ製なら当然原告も権利行使しなかったと思います。問題は向かい合う2面はアルミ製、他の向かい合う2面はガラスエポキシ製、という点です。ガラスエポキシは絶縁材としてプリント基板等で用いられているので、全部ではないが一部には絶縁材を用いているので権利行使したと思います。

(2)例えば、抵抗ユニットの4面すべてをアルミ製の枠にしても絶縁上問題ないのだが、コストが嵩むために一部を安価なガラスエポキシに置き換えたい状況で本件特許の存在を知ったとします(アルミよりもガラエポの方が圧倒的に安いという仮定です)。これを知財の専門家に相談すると、おそらく以下のような見解が示されると思います。

4枠のうち2枠をガラエポにすると相対的なコスト評価は中になります。しかし、アルミの2枠を隣接する冷却ユニットに対向する面に設置する場合とガラエポの2枠を隣接する冷却ユニットに対向する面に設置する場合とでは、特許の場合、異なる意味で捉えられる可能性があります。つまり、ガラエポの2枠を隣接する冷却ユニットに対向する面に設置すると特許発明と同じように絶縁性が必要なためにそのように設置した、と捉えられる可能性があります。

(3)本件特許の明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄に、「したがって本件発明の目的は、複数の抵抗ユニットで構成される負荷試験機で、運搬や設置が容易な負荷試験機を提供することである」とありますが、請求項1の構成とすることでこの目的を達成できる理由がよくわかりませんんでした。