「部」

投稿日: 2017/03/26 16:19:31

「部」という文字があります。本来の意味は「物事の一部分」といった意味ですが、特許の世界では様々な意味で使われます。

例えば、制御に関する発明を説明するブロック図においてはブロック図全体を「電力制御部」と名付けたうえで個々のブロックについても「電力変換部」、「外部出力部」といったように名付けられます。この場合は「~手段」といった機能的な表現と同じように使われていますが、「手段」に比べよりハード的なイメージを与えると思います。

もう一つは、一部に範囲を持たせる意図で使うケースがあります。針の「先端」と書くと針の最も尖った部分一点のみを指しているように思えますが、針の「先端部」と書くともう少し根本側の方まで含むように思われます。つまり「針の先端およびその近傍」です。

ところで、先日の遮断弁事件の判例の原告製品の説明には原告製品のケース体は「筒状部」と「底部」を有する、とありました。このうち「筒状部」はケース体の一部であることを表すために用いられています。この場合は「部」とすることで「筒状部」がケース体を構成するその他の部分が一体であっても別体であってもよいというニュアンスを含ませています。一方、「底部」における「部」はそれだけではないと思います。

「コップの底」と書いた場合、コップのどの部分を指しているのでしょうか?単に「底」としか定義していない場合だと、コップの内側の下面のみを指しているのか、下側の壁(内側の下面からそれに対向する外側の面まで)を指しているのか解釈がわかれる可能性があります。そのため前者を「底面」、後者を「底部」と呼ぶことで両者を明確に区別します。つまりこの場合の「底部」には「部材」を表す働きも持っています。

このように「部」という言葉は便利です。しかし、そのためにかえって本質がわかりにくくなってしまうこともあります。この点については次回以降に書きます。