アルミサッシ改修工法事件(その3)

投稿日: 2017/04/16 22:59:19

今日も平成26年(ワ)第7643号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。

今日は、被告製品の内容、争点及び裁判所の判断まで投稿します。

3.被告製品の内容

判決によると被告製品は商品名が「HOOK工法」(イ号装置)及び「HOOK SLIM」(ロ号装置)と呼ばれるものです。判決にも書いてありましたが、被告はイ号装置を遅くとも平成18年(2006年)5月1日から、ロ号装置を遅くとも平成22年(2010年)6月1日から、製造・販売していたようです。

判決には被告物件目録が添付されていないので、被告のホームページの2010年6月4日付のニュースリリース「集合住宅用改修サッシ「HOOK SLIM」発売」から図を引用します。このニュースリリースによると図の青色に着色された部分が既設枠、緑色に着色された部分が新設枠、オレンジ色に着色された部分が補助材です。


本件発明のポイントはほぼ下枠側にあります。本件特許の図面に比べ鉛直方向に大分ボリューミーなので驚きましたが、よく見ると単に新設枠上にガラスが嵌められた引戸の図まで描いてあっただけでした。この図からは「既設竪枠」、「室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され」、「改修用竪枠」及び「スペーサ」といった構成やビス止めされているのかという点まではわかりません。

 

4.争点(侵害論に関するもの)

(1)抵触性

被告は、構成要件Bの「室内寄り」及び「固着」、構成要件Cの「挿入」、構成要件Dの「支持」、構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」及び構成要件Fの「固定」、それぞれの解釈及びその独自解釈に基づく構成要件の有無について争っています。

(2)有効性

被告の特許無効主張(1)~(5)のうち(1)~(4)はいずれも36条違反(記載要件違反)、(5)は29条2項違反(進歩性欠如)です。原告の主張を読むと侵害論の段階で被告は特許無効主張をせず損害論に入ってから主張したようです。

 

5.裁判所の判断

(1)抵触性

被告の主張はすべて採用されていません。

このうち「ほぼ同じ高さ」に関しては以下のように判断されています。

「・・・背後壁の上端と改修用下枠の上端を「ほぼ同じ高さ」とするのは、広い開口面積を確保するという効果を得るための構成であるということができる。

そして、上記課題及び効果からすると、背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が、少なくとも従来技術における改修用下枠の上端と背後壁の上端の差よりも小さいものである必要があると認められる。すなわち、改修用下枠が既設下枠に載置された状態で固定されたり、改修用下枠の下枠下地材が既設下枠の案内レール上に直接乗載されて固定されたりした場合の改修用下枠の上端と背後壁の上端の高さの差異よりも、改修用下枠の上端と背後壁の上端の差が相当程度小さいものであれば、「ほぼ同じ高さ」であると認められるというべきである。」

(2)有効性

被告の無効の主張は、時機に後れた攻撃防御方法であるので、却下されています。