平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(その1)

投稿日: 2017/01/30 1:42:33

今日から数回にわたり、平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第14006号)について検討します。

初日は判例等から把握できる範囲で時系列を整理します。

 

1.特許のファミリ

 

2.本件特許の訴訟と特許無効審判の関係

 

3.東京地裁の抵触性及び有効性の判断

被告製品は本件特許発明2の技術的範囲に属するものであり、本件特許2には無効理由もないので、被告製品の本件特許発明1に係る構成要件充足性及び本件特許1の有効性については検討するまでもなく、本件特許権2の侵害に基づく原告の損害額を検討する。

 

4.知財高裁の抵触性及び有効性の判断

被告製品は本件特許発明2の技術的範囲に属し、本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものであるとはいえないから、被告製品を製造、販売等する行為は、本件特許権2を侵害するものであって、被控訴人の控訴人に対する損害賠償請求及び被告製品の製造、販売等の差止請求は、原判決が認容した限度で理由があるものと判断する

 

表を見ていただくとわかるように、侵害訴訟が地裁で審理されていた段階では、特許発明1は特許庁で特許無効と判断され、知財高裁で審理されている状態でした。一方、特許発明2は特許庁で特許無効ではない(有効)と判断され、知財高裁でも特許庁の判断が支持されました。2件の特許権が対象とする被告製品は同一であり、損害賠償請求の期間も同じであったことから、抵触性・有効性が明らかな特許発明2についてのみ判断したと思われます。逆に言えば、被告製品が特許発明1に対しても抵触であった場合でも損害賠償の金額が増えるわけではないということです。

ただ、気になるのは、仮に知財高裁で被告製品が特許発明2に対して非抵触あるいは特許2が無効と判断された場合にはどうするかという点です。被控訴人(一審原告である特許権者)は主位的に特許権2の侵害を請求し、予備的に特許権1の侵害を請求しています。しかし、特許権1は地裁では全く判断されておらず知財高裁で初めて判断されることになります。その結果によっては一方又は双方が最高裁に上告する可能性がありますが、実質的に2審しかチャンスがありません。3審制を採用している日本では問題にならないのでしょうか。もっとも、実際にそのようなケースに陥った事件を見たことがありませんが。

次回は、内容について検討します。