圧縮機事件(その2)

投稿日: 2017/05/02 8:56:03

今日は平成26年(ワ)第34678号 特許権侵害行為差止等請求事件の続きです。今日は特許の内容までです。圧縮機は断面図の引き出し線が多く、この分野に慣れていない人には少々わかりにくいものなので、ここでは訂正クレーと図面を引用し、掲載しますが、説明は基本動作についてのみにします。

2.特許の内容(訂正後)

【請求項1】

A シリンダブロック(11、12)における回転軸(21)の周囲に配列された複数のシリンダボア(27、28)内にピストン(29)を収容し、前記回転軸(21)の回転にカム体(23)を介して前記ピストン(29)を連動させ、前記回転軸(21)と一体化されていると共に、前記ピストン(29)によって前記シリンダボア(27、28)内に区画される圧縮室(271、281)に冷媒を導入するための導入通路(31、32)を有するロータリバルブ(35、36)を備えたピストン式圧縮機において、

B 前記シリンダボア(27、28)に連通し、かつ前記ロータリバルブ(35、36)の回転に伴って前記導入通路(31、32)と間欠的に連通する吸入通路(33、34)と、

C 吐出行程にある前記シリンダボア(27、28)内の前記ピストン(29)に対する圧縮反力を前記ロータリバルブ(35、36)に伝達して、吐出行程にある前記シリンダボア(27、28)に連通する前記吸入通路(33、34)の入口に向けて前記ロータリバルブ(35、36)を付勢する圧縮反力伝達手段とを有し、

D 前記シリンダブロック(11、12)は、前記ロータリバルブ(35、36)を回転可能に収容する軸孔(112、122)を有し、

E´前記導入通路(31、32)の出口は、前記ロータリバルブ(35、36)の外周面上にあり、前記ロータリバルブ(35、36)の外周面は、前記導入通路(31、32)の出口を除いて円筒形状とされ、前記吸入通路(33、34)の入口は、前記軸孔(112、122)の内周面上にあり、前記軸孔(112、122)の内周面に前記ロータリバルブ(35、36)の外周面が直接支持されることによって前記ロータリバルブ(35、36)を介して前記回転軸(21)を支持するラジアル軸受手段(113、123)となっており、前記ラジアル軸受手段(113、123)は、前記カム体(23)から前記ロータリバルブ(35、36)側における前記回転軸(21)の部分に関する唯一のラジアル軸受手段(113、123)であり、

F´前記ピストン(29)は両頭ピストン(29)であり、前記両頭ピストン(29)を収容する前後一対のシリンダボア(27、28)に対応する一対のロータリバルブ(35、36)が前記回転軸(21)と一体的に回転し、前記ロータリバルブ(35、36)の各導入通路(31、32)は前記回転軸(21)内に形成された通路(212)を介して連通し、前記カム体(23)は、前後一対のスラスト軸受手段(25、26)によって挟まれて前記回転軸(21)の軸線の方向の位置を規制されており、前記一対のスラスト軸受手段(25、26)の少なくとも一方は前記圧縮反力伝達手段の一部をなし、該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段(26)は、前記シリンダブロック(12)の端面に形成された環状の突条(121)と前記カム体(23)の端面に形成された環状の突条(234)とに当接し、前記カム体(23)の突条(234)の径を前記シリンダブロック(12)の突条(121)の径よりも大きくした

G ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造。


先に述べたようにここではピストン式圧縮機の基本的な動作を説明します。細かい発明の構成は当事者間の主張や裁判所の判断おいおいわかると思います。

この発明のピストン式圧縮機は、回転軸(21)に軸方向に傾いた斜板(23)を取り付け、この斜板(23)の先端部に取付けられたシュー(301、302)が回転することでこれらシュー(301、302)と接続する両頭ピストン(29)が往復動作します。例えば左図では両頭ピストン(29)が左側にありますが、斜板(23)が回転することで両頭ピストン(29)が左側から右側に移動します。この動作により、回転軸(21)内の通路(212)内の冷媒がシリンダブロック(11)側の導入通路(31)及び吸入通路(33)から両頭ピストン(29)が収納されたシリンダボア(27、28)内に吸入されます。そして、さらに斜板(23)が回転することで両頭ピストン(29)が右側から左側に移動します。この動作により導入通路(33)と吸入通路(33)の連通が遮断され、行き場がなくなった圧縮冷媒は吐出ポート(131)へ吐出されます。一方、シリンダブロック(12)側は、シリンダブロック(11)側が吸入工程の際に吐出工程、シリンダブロック(11)側が吐出工程の際に吸入工程となります。