継手事件(その後)
投稿日: 2017/05/22 2:30:08
今日は以前検討した継手事件(平成26年(ワ)第8137号 損害賠償請求事件)についてのその後について検討します。なお、新たな情報及びそれに基づき検討した事項は青字で記載しています。また、特許発明や製品の説明は省略しています。
1.各手続きの時系列の整理
① 2017年2月1日に2回目の特許無効審判(無効2015-800159)の審決がありました。この審決は訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。本件審判の請求は、成り立たない、というものでした。
② これに対して請求人(侵害訴訟の一審被告)は知財高裁に出訴しました。侵害訴訟については一審原告が2016年6月23日に知財考査に控訴しているので、まとめて審理されると思われます。
2.特許発明の内容
【請求項1】(訂正後の内容)
継手本体(1)に、弾性シールリング(2)、抜止めリング(3)、及びテーパ付リング(4)を備えており、
前記継手本体(1)は軸心方向一端部に内外二重筒体(5、6)を有し、内筒体(5)は継手本体(1)と一体に形成され、外筒体(6)は、継手本体(1)とは別体に形成されて、内筒体(5)の外周との間に管差込み間隙(15)を形成するよう継手本体(1)に結合されており、
前記内筒体(5)の外周にはシールリング溝(16)を形成し、このシールリング溝(16)に、前記管差込み間隙(15)内に挿入される樹脂製の管(P)の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリング(2)が嵌め込まれており、
前記抜止めリング(3)は、前記外筒体(6)の内部に配備され、内径部に前記管(P)の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯(11)を設けており、該食込み歯(11)は食込み歯逃がし用のテーパ(12)と対向され、
前記テーパ付リング(4)は内径部に前方拡がり状のテーパ(17)を付けており、このテーパ付リング(4)が前記内筒体(5)の外周の前記弾性シールリング(2)より軸方向外方部位と、前記外筒体(6)の内周の前記抜止めリング(3)より軸方向内方部位との間に、前記管(P)の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙(15)の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれており、
前記食込み歯(11)は、前記抜止めリング(3)の内径部から前記食込み歯逃がし用のテーパ(12)側に傾斜されており、
前記食込み歯逃がし用のテーパ(12)は、前記外筒体(6)に有し、前記食込み歯(11)の軸方向内方側に形成されていて前記食込み歯の前記食込み歯逃がし用のテーパ(12)側に傾斜された長さの面に対して向かい合う状態で対向されており、
前記外筒体(6)と前記内筒体(5)の外周とによって形成された管差込み間隙(15)は、前記食込み歯逃がし用のテーパ(12)の最小内径部から形成されていて前記テーパ付リング(4)を前記弾性シールリング(2)の部位よりも更に内奥へ差し込むことができる長さに形成されており、
前記食込み歯(11)の軸方向外方側には、前記管(P)を外から受け入れる管受入部が設けられていることを特徴とする、差込み式管継手。
3.検討
(1)特許権者は2014年(平成26年)4月10日に請求した訂正審判で特許請求の範囲を訂正しましたが、侵害訴訟ではその訂正後の特許請求の範囲が無効であると判断されました。今回、特許無効審判において更に訂正することで特許が維持されました。
(2)以前も書きましたが、地裁での侵害訴訟では抵触性についての判断はされておらず有効性の判断のみでした。今後は知財高裁で審決取消訴訟及び侵害訴訟の控訴審について特許の有効性についての判断がなされ、裁判官が有効との心証を得た場合には改めて抵触性の判断がなされると思われます。