畦塗り機事件(その1)

投稿日: 2017/08/06 23:27:16

今日は 平成27年(ワ)第8517号 特許権侵害差止請求事件について検討します。原告である小橋工業株式会社は、判決によると、農機及びその部品の製造販売並びにこれに付帯する一切の業務等を業とする株式会社だそうです。J-PlatPatを使って会社名で特許件数を検索したら574件ヒットしました。このうち現在も存続しているのは400件くらいだと思います。一方、被告である松山株式会社は松山式犂其他機械器具類の製作修繕及び販売、並びにこれに付帯関連する一切の業務等を業とする株式会社だそうです。こちらは503件ヒットしました。このうち現在も存続しているのは300件くらいだと思われます。

 

1.手続の時系列の整理

1.1 本件特許(特許第5706569号)の手続の時系列の整理

① 特許異議申立が2件申し立てられ、そのうちの1件は本事件の被告が申立人でした。もう1件は個人からです。

② 特許無効審判も本事件の被告が請求人です。侵害訴訟の判決言渡し後に特許無効審判の審決が出て、これに対して請求人(被告)が知財高裁に出訴しましたが数カ月後に取り下げています。

③ 本件訴訟を提起した日ははっきりしませんが、本件特許が登録になってからそれほど間を置かずに提訴したと思われます。

1.2 ファミリの権利化手続の時系列の整理

① 本件特許のファミリをまとめました。全部で10件あります。

② 被告は自ら申立人になって特許異議申立をしています。名称を明らかにして問題ないのであれば特許無効審判を請求する方が戦いやすい気がします。

③ 分割件数も多いですが、刊行物等提出及び閲覧請求も多いです。特許異議申立が本件被告以外の自然人からもあったことからも、被告以外にも一連の特許を気にしている同業者がいるように思います。

1.3 特許第5000051号の手続の時系列の整理

① 大本の特許である特許第5000051号も被告から特許無効審判が請求されていましたが、無効にはなりませんでした。

② 特許無効審判が請求された時期と本件特許が特許異議申立された時期が近いので、被告はファミリ全てをウォッチングしていたと思われます。

1.4 特許第5922695号(第2世代)の手続の時系列の整理

① この特許は本件特許に関する侵害訴訟が提起された後に登録になりました。おそらく被告がこの特許をウォッチングしていて新たな訴訟が起こされる可能性もあるので特許無効審判を請求したものと思われます。

② この特許に対する特許無効審判も本件特許に対する特許無効審判と同日に取り下げています。本件特許を含め包括的に和解したものと思われます。