上引きフード事件
投稿日: 2020/04/20 4:56:30
今日は、平成29年(ワ)第39602号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。原告である株式会社野田ハッピーは、判決文によると、焼肉無煙ロースター、上引きクリアーフード、集塵機、脱臭機等の開発、製造、販売、施工等の事業を行う株式会社だそうです。一方、被告であるサンタ株式会社はカウンター排煙装置、串焼用排気装置等の製造、販売等の事業を行う株式会社、東産業株式会社は焼肉無煙ロースター、上引きフード排気設備システム等の仕入れ、販売等の事業を行う株式会社、山岡金属工業株式会社は業務用調理機器等の仕入れ、販売等の事業を行う株式会社だそうです。
1.検討結果
(1)本件訂正発明1は、要は、加熱調理部付きテーブルの上方に設置する個別排気用の排気装置に関するもので、従来は排気ダクトの先端に加熱調理部よりも開口部が大きいスカート状の吸気部を設けていた構造であったものを排気ダクトの先端に加熱調理部よりも開口部が小さいパイプからなる吸気部を設ける構造としたものです。また、本件発明2は本件訂正発明1と同様な構成の排気装置の吸気部について、人が立った状態で操作できる位置にフィルタ装着部を設けるものです。
(2)判決では抵触性については判断されず、本件各特許は実施可能要件違反であるため特許無効審判により無効にされるべきであると判断されました。具体的には、本件各発明に記載されている「吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされている」という構成について明細書の詳細な説明に当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されていない、というものです。
(3)このように、被告が本件明細書の記載では熱気流の上部を特定することができないので、本各発明は実施可能要件に違反するとした主張が認められました。その過程をみると、裁判所は、まず、「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」は、本件明細書1に添付された図2(本件明細書2に添付された図3)に示された加熱調理部の上部にある本件三角形状の頂点である熱気流の上端部を吸引端が包むことができる位置であり、熱気流の上部とは、本件三角形状の頂点である熱気流の上端部である、と認定しました。さらに、本件各発明の加熱調理部から焼き網を通過して立ち上る熱気流は排気装置の吸引端における吸引をしない状態で本件三角形状になるとされているものと認められ、原告も、このことを前提として、その上部(上端部)を知ることができると主張していることを押さえました。
その上で、原告・被告双方が提出した加熱調理部である炭火コンロから発生する煙の様子を通常のカメラで撮影した動画を基に、加熱調理部から発生した煙は、いずれも上方に行くにしたがって徐々に拡散しており、加熱調理部の上方のいずれかの位置において、本件図に示された本件三角形状のように収束する様子は見られない、と認定し、本件各発明を実施しようとする者が、煙の動きを観察したとしても「熱気流の上部」の位置を特定することができるとは認められない、と判断しました。
(4)本件を簡単に言うと、本件明細書中に「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」の特定の仕方についての記載がない上、従来技術に生じる課題を解決する上で発明者が想定した現象が実際の現象と異なるために当業者が本件明細書の記載から導くこともできないので、実施可能要件違反ということです。
(5)ロウソクの炎の温度分布のように加熱調理部上方での温度分布であれば本件図のような三角形状になるのかもしれません。しかし、例えば焚火の煙の上がり方等を考えると、煙が三角形状に上がるのではなく、上方で拡散します。そういう身近な例からも、原告の主張する熱気流の形状はちょっと信じかねます。実際に動画でもそのようになったそうなので、裁判所の判断はやむを得ないように思います。
(6)本件特許明細書1に添付された図面のうち、本件訂正発明1に係る図1及び図2と従来の排気装置に係る図3とを比較すると加熱調理部から排気装置の吸引端までの距離がかなり異なります。本件各発明は実際にはこの距離の近さによるところが大きいのではないでしょうか?吸気部の開口がスカート形状のものに比べ小さいので加熱調理部に近づけても利用者の邪魔になりにくいので、開口を大きくしなくても排気効率が良い、とした方が良かったように思います。
(7)本件だけでなく多くの特許明細書で発明の原理について記載しているものが見受けられます。確かに発明の原理まで書ければ技術的に高尚で信頼性が高い発明のように思う人が多いと思います。しかし、原理の妥当性が実験等により立証でき、かつ、普遍的なものであれば良いのですが、そうでなく発明者の想像を含む場合には、書くことによるリスクが大きいと思います。
まず、原理が間違っていると判断される場合は、発明として効果を奏するものであっても、その原理と発明とは無関係ということになるので、本件のように記載要件違反に結びつけられて特許自体を無効とされかねません。
次に、原理は正しいが、発明者が発明完成時点で気づいていないその他の要因も課題を解決する上で寄与するために、その他の要因によって明細書で想定している範囲を超えた領域でも発明と同じ効果を奏する場合があります。この場合は、無効まではならないかもしれませんが非抵触であると判断されるものと思われます。
もちろん技術分野にもよりますが、機械系の分野では、無理に原理まで書く必要が無いケースが多いように思われます。原理をいくら書いても拒絶理由通知を受けた場合の補正には使えません。それよりも構成について詳しく書いた方がよっぽど良いと思います。
2.手続の時系列の整理
(1)特許第3460996号
(2)特許第3460998号
3.本件発明
(1)本件訂正発明1
ア 本件訂正発明1-1(請求項1)
1-1A 天井の排気ダクト(2)に接続された吸気部(11)がその吸引端(12)を加熱調理部付きテーブル(T)の焼き網を備えた焼肉用の炭火コンロ又はガスコンロからなる加熱調理部(K)に上方から臨ませ、この吸引端(12)を介して吸引することにより、前記加熱調理部(K)に対する排気を前記加熱調理部付きテーブル(T)ごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
1-1B 前記吸気部(11)がパイプで形成され、
1-1C かつ前記吸引端(12)が前記パイプの先端部開のみで形成され、
1-1D さらにこの吸引端(12)のサイズが前記加熱調理部(K)のサイズよりも小さくされ、
1-1E そしてこの吸引端(12)は、前記加熱調理部(K)から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部(K)に臨まされている
1-1F ことを特徴とする加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
イ 本件訂正発明1-2(請求項3)
1-2A 前記吸気部(11)がその吸引端(12)を上下動させるように形成されている
1-2B 請求項1または請求項2に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
ウ 本件訂正発明1-3(請求項4)
1-3A 前記吸気部(11)は、径の異なるパイプを継ぎ合わせることで伸縮できるように形成され、この伸縮により吸引端(12)の上下動をなせるようにされている
1-3B 請求項3に記載の加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
(2)本件発明2
2A 排気ダクト(2)に接続された吸気部(11)がその吸引端(12)を加熱調理部付きテーブル(T)の加熱調理部(K)に上方から臨ませ、この吸引端(12)を介して吸引することにより、前記加熱調理部(K)に対する排気を前記加熱調理部付きテーブル(T)ごとになせるようにされている、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置において、
2B 前記吸気部(11)がパイプで形成され、
2C かつ前記吸引端(12)が前記パイプの先端部開口のみで形成され、
2D さらにこの吸引端(12)のサイズが前記加熱調理部(K)のサイズよりも小さくされ、
2E そしてこの吸引端(12)は、前記加熱調理部(K)から立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部(K)に臨まされており、
2F さらに前記吸気部(11)の途中に、前記加熱調理部付きテーブル(T)の傍で人が通常の立ち状態で操作できる高さ位置でフィルタ装着部(30)が設けられ、
2G このフィルタ装着部(30)に、前記排気中に含まれる油分の分離・回収用のグリースフィルタが着脱可能に装着されている
2H ことを特徴とする加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置。
4.争点
(1)被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか否か(争点1)
ア 「先端部開口のみで形成」(構成要件1-1C、2C)の充足性(争点1-1)
イ 「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」(構成要件1-1E、2E)の充足性(争点1-2)
ウ 「吸引端を上下動させるように形成」(構成要件1-2A、1-3A)の充足性(争点1-3)
(2)本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点2)
ア 実施可能要件違反の有無(争点2-1)
イ 本件訂正発明1-1につき乙23文献に記載された発明(以下「乙23発明」という。)に基づく新規性欠如の有無(争点2-2)
ウ 明確性要件違反の有無(争点2-3)
(3)本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)
ア 実施可能要件違反の有無(争点3-1)
イ 公然実施による新規性欠如の有無(争点3-2)
(4)損害の数額(争点4)
5.争点に対する当事者の主張
(1)「先端部開口のみで形成」(構成要件1-1C、2C)の充足性(争点1-1)
(原告の主張)
構成要件1-1C、2Cの「前記吸引端が前記パイプの先端部開口のみで形成され」とは、本件明細書1の図3及び本件明細書2の図5(これらの2つの図は同じ図)に示されている、従来技術の排気装置の吸引端3に設けられているフード構造を備えていないという意味である。すなわち、本件各明細書には、従来技術のフード構造の吸気部の問題点として、①吸引・排気の効率が必ずしも高くない(本件明細書1の段落【0003】【0004】、本件明細書2の【0003】【0004】。以下、本件明細書1の段落については、「【0003】Ⅰ」などと示し、本件明細書2の段落については「【0003】Ⅱ」などと示す。)、②飲食の邪魔になる(【0004】Ⅰ、【0004】Ⅱ)、③部屋の空調に大きな容量を必要とする(【0005】Ⅰ、【0005】Ⅱ)、④吸気部を可動構造にする場合にその構造が大掛かりになる(【0006】Ⅰ、【0006】Ⅱ)という問題があったことが記載されている。本件各発明は、これらの課題を解決することを目的とするものであり、「吸引端の開口サイズを小さくして吸引・排気を行うのが有効であるという知見」(【0007】Ⅰ、【0007】Ⅱ)に基づいてされたものである。
被告製品の下端部は、フード構造やこれに準ずる構造は設けられておらず、パイプの先端開口部のみで形成されている。
したがって、被告製品は構成要件1-1C及び2Cを充足する。
(被告らの主張)
ア 被告製品には、先端部の筒内には箸袋等の雑物の吸引を防止するための侵入防止ネットと油溜めが設けられているから、「先端部開口のみで形成」の要件を充足しない。
イ 原告は、「先端部開口のみで形成」との要件は従来技術のフード構造や遮板を備えていないという意味である旨主張するが、同主張は本件各明細書に根拠を有するものではなく、失当である。
(2)「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」(構成要件1-1E、2E)の充足性(争点1-2)
(原告の主張)
ア 被告製品の吸引部は、上下に20㎝伸縮できる構造となっており、この長さを適当に調整することにより、吸引端を加熱調理部から立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で加熱調理部に臨まされることができる構造を備えているから、構成要件1-1E及び2Eを充足する。
イ 被告らは、被告製品の吸引端は焼き面から23㎝の位置に固定されて設置されており、本件特許1が吸引端の通常の高さ位置とする15cm ないし20㎝(【0024】Ⅰ)と異なると主張するが、「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」は加熱調理部の種類や大きさ、火力、吸引端の開口サイズ、吸引端から吸引・排気する風量の設定等によって異なる。15cm ないし20㎝という高さ位置は加熱調理部が炭火コンロである場合の実施例の数値にすぎず、被告製品の吸引端が23㎝であったとしても、構成要件1-1E及び2Eを充足しないとはいえない。
被告は被告製品の吸引端が固定されていると主張するが、被告製品の吸引筒を下げた状態での高さ位置が「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」である以上、被告製品が構成要件1-1E及び2Eを充足するから、吸引端の位置が固定されているか否かは、充足の有無に影響を与えない。
ウ 被告らは、熱気流は目視することができないにもかかわらず、被告製品は熱気流を検知し、「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」に吸引端を臨ませる技術手段を備えていないとも主張するが、煙は加熱調理部から立ち上る熱気流に沿って流れる傾向にあり(【0009】Ⅰ、【0019】Ⅰ、【0008】Ⅱ、【0012】Ⅱ)、煙や水蒸気は容易に目視することができるから、加熱調理部から立ち上る煙を観察することで、「加熱調理部から立ち上る熱気流」の状態を把握することができる。
(被告らの主張)
ア 本件各明細書においては、「熱気流の上部」が熱気流の上端部であることが繰り返し説明されているから(【0009】Ⅰ、【0019】Ⅰ)、本件各発明は、排気装置の吸引端が熱気流の上端部を包み込むことのできる高さ位置にあることを技術的範囲とする発明と解される。しかし、熱気流は目視することができず、被告製品は熱気流を検知し、当該熱気流の上端部位置に吸引端を臨ませる技術手段を備えていない。
イ 構成要件1-1E「加熱調理部から焼き網を通過して立ち上がる熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」は火源から立ち上り焼き網を通過する「熱気流の上部」(上端部)に着眼、把握し、これに基づいて定める高さ位置であって、従来からの慣行技術である専ら焼き網上の食材から立ち上る煙に着眼して定める高さ位置は含まれない。被告製品は、加熱調理部に臨ませる吸引端の位置を加熱調理部から発生する煙を十分に吸引できる高さ位置とするものであり、熱気流に着眼しているものではなく、「熱気流の上部」を把握することなく吸引端の高さ位置を定めている。
ウ 被告製品は、吸引筒部分を収納時位置から22cm降下させて使用するのであり、吸引筒の上下動は、収納時と使用時の切り替えのためだけに用いられ、中間位置に停止することはできないから、使用時に現場で吸引端の高さ位置を調整することはできない。
また、吸引端の位置は、排気装置を設置する段階で、通常焼き面から23cmの高さ、火源から24cmないし25cm程度の高さに固定して設置される。そして、この高さ位置は、本件明細書1において、吸引端の通常の高さ位置とする15cmないし20cm(【0024】Ⅰ)とは異なるから、被告製品の吸引端の位置は「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」に設置されていない。
エ したがって、被告製品は構成要件1-1E、2Eを充足しない。
(3)「吸引端を上下動させるように形成」(構成要件1-2A、1-3A)の充足性(争点1-3)
(原告の主張)
被告製品は、その吸引端を上下動させるように形成されているから、構成要件1-2A、1―3Aを充足する。
これに対し、被告らは、被告製品の吸引端は使用時に上下動させるものではないと主張するが、被告製品は、その設置時に吸引端の高さ位置を熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置に設定することができるのであり、吸引端を上下動させることができる。
また被告らは、使用時における被告製品の吸引端はコンロ上部から23cmの高さ位置に固定されるとも主張するが、23cmは被告サンタが推奨する高さ位置にすぎず、利用者はこの数値に拘束されることなく最適な高さ位置に吸引端を設定することができるから、被告らの反論には理由がない。
(被告らの主張)
被告製品は、吸引端を収納時の位置から20cm降下させて使用するが、これは収納時と使用時の切り替えのためであって、吸引端として使用時に上下動させるものではない。被告製品において、使用時は必ず上記降下位置に固定され、その位置は排気装置の設置時にこんろの上部から23cmの高さ位置となるように固定されるから、使用者は、使用時に吸引筒を上下させて高さ位置を移動させることができない。
したがって、被告製品は「吸引端を上下動させるように形成」を充足しない。
(4)本件特許1につき実施可能要件違反の有無(争点2-1)
(被告らの主張)
ア 構成要件1-1Eは、「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」とするが、本件各明細書には、熱気流や熱気流の上端部がいかなるものであり、これをどのような技術手段をもって認識することができるのかについて記載はなく、熱気流や熱気流の上端部に関わる実施例も存在せず、課題解決手段に係る技術的説明は一切存在しない。
イ 原告は、熱気流や熱気流の上端部は、サーモグラフィーによって認識することができるかのように主張するが、本件明細書1にはそのような記載は存在しない上、本件特許1の出願時において、サーモグラフィーを用いることは当業者(加熱調理部付テーブル個別排気用の排気装置の製造者・使用者)の技術常識ではなかった。
サーモグラフィーを用いるとしても、被告が実施した実験結果(乙27、33、34)によれば、加熱調理部から立ち上る熱気流らしきものは収束することなく、高さ位置らしきものは常に変動し、特定することがない。そうすると、当業者は、どの位置をもって熱気流の上端部と特定することも困難であり、熱気流及び熱気流の上端部を特定することはできないから、本件各発明が解決すべき課題を解決することはできない。
ウ したがって、本件明細書1には、当業者がその技術常識に基づいて、課題解決手段その他の技術上の意義を理解、実施することのできる明確かつ十分な開示がなく、実施可能要件に違反することは明らかである。
(原告の主張)
ア 本件明細書1は、【0009】及び【0019】において熱気流がローソクの炎のように立ち上がる旨を説明した上で、図2(本件明細書2の図7と同じ図であり、別紙図面のとおりの図である。以下「本件図」という。)において熱気流Hの上部又は上端部を明確に図示している。
イ また、加熱調理部から発生する熱気流はローソクの炎のようなパターンで立ち上っていること、加熱調理部から発生する煙もこの熱気流に乗って流れる傾向にあること、熱気流の上部(上端部)は煙を目視することによって知ることができることは、実験結果(甲37、42、44ないし47)から明らかである。
ウ 被告は、サーモグラフィーを用いても「熱気流」及び「熱気流の上部」を特定できないと主張するが、熱気流は熱い気体の流れであるため揺れ動くのは当然であるし、サーモグラフィーに映し出された熱気流を観察すると、上昇するに伴い、熱気流が一定程度、中央部分に三角形状に収束し、その後空中に拡散している。また、煙の形と熱気流の形には一定の共通性を見出すことが可能であり、煙が拡散する位置と熱気流が拡散する位置は概ね一致していることが明確に見て取れるから、煙が熱気流に沿って流れる傾向にあることも強く裏付けられている。
(5)本件訂正発明1-1につき乙23に基づく新規性欠如の有無(争点2-2)
(被告らの主張)
本件特許1の出願前である平成12年9月15日に公開された乙23文献には、以下のとおり、本件訂正発明1-1の構成要件を全て充足する乙23発明が開示されているから、本件訂正発明1-1は特許法29条1項3号に該当して新規性を欠き、同法123条1項2号に該当して無効とされるべきものである。
ア 構成要件1-1A
乙23発明では、天井の排気管260に接続された煙吸入管242が伸長して吸入管入口242aを食卓の上面近傍に位置させ、吸入管入口242aを、焼き網270を備えた焼肉用の七輪210からなる加熱調理部に上方から臨ませ、一つの七輪ごとに排気させていて、これは、構成要件1-1Aと同一の構成であり、同構成が開示されている。
イ 構成要件1-1B
乙23発明では、直立形成されたパイプである煙吸入管242が連結されていて、これは、構成要件1-1Bと同一の構成であり、同構成が開示されている。
ウ 構成要件1-1C
乙23発明では、煙吸入管242にはフードが設けられておらず、その吸引端は吸入管入口242a の開口部のみで形成されていて、これは構成要件1-1Cと同一の構成であり、同構成が開示されている。
エ 構成要件1-1D
乙23発明では、煙吸入管242の直径と七輪の直径の比は1:3ないし1:5が好ましいとしていて、これは構成要件1-1Dと同一であり、同構成が開示されている。
オ 構成要件1-1E
乙23発明は、専ら煙の流れ方に着眼し、煙を最も効率的に吸引する高さ位置として、煙吸入管の端と前記焼き網の隔離した高さは8cmないし15cmであることを特徴とする。原告の主張するように、構成要件1-1Eの「熱気流の上部」(上端部)を煙の流れから判断することが可能であったとした場合、この高さ位置は乙23発明の吸入管入口(242a)の高さ位置と何ら異なることがない。
したがって、乙23発明の吸入管入口は「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」に臨まされているから、構成要件1―1Eの構成と同一であり、同構成が開示されている。
カ 構成要件1-1F
乙23発明は、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置に係る発明であるから、構成要件1-1Fの構成と同一である。
(原告の主張)
乙23文献には構成要件1-1Eが開示されていないから、本件訂正発明1-1が新規性を欠くことはない。
すなわち、本件訂正発明1-1は、熱気流が上昇することによって収束することに着目し、熱気流が最も絞り込まれた位置に吸引端を設置することによって、少ない吸引量でもって効率的に排気することを可能にし、その結果、より少ない空調容量で足りるようにし、空調コストを抑えることを可能にしたものである。これに対し、乙23発明は「七輪(210)から発生する煙がスムーズに前記吸引管に吸引される」ようにするために、吸引端を、8cmという火災ややけどの危険性がある高さまで可能な限り加熱調理部に近づけることが妥当であるとの技術思想に基づくものである。このように、本件訂正発明1-1と乙23発明は技術思想が異なり、乙23文献は本件訂正発明1-1の上記技術思想を何ら開示していないから、構成要件1-1Eを開示していない。
また、乙23の吸引端の高さ位置の上限は15cmとされており、本件訂正発明1-1の15cm(【0024】Ⅰ)と同じであるが、構成要件1-1Eの「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」は、加熱調理部の種類によって異なり、また、加熱調理部の大きさや火力の大小によっても異なり得るため、特定の数値をもって発明の技術的範囲を画していない。これに対して、乙23文献には、15cmが「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」であることの直接的な記載が一切ないことはもちろんのこと、加熱調理部の種類や加熱調理部の大きさ、火力の大小など「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」に影響を与え得る情報に関する記載も一切ない。
したがって、乙23文献に記載された吸引端の高さ位置の上限である15cmは、構成要件1-1Eの開示には当たらないことが明らかである。
(6)本件特許1につき明確性要件違反の有無(争点2-3)
(被告らの主張)
構成要件1-1Eには「熱気流の上部」とあり、その文言から熱気流の最上部となる位置を意味するとも思われるが、本件明細書1の記載を参酌しても、排気装置を使用する際に熱気流の部分と熱気流でない部分が存在すること自体も、熱気流がいかなる基準で非熱気流と区分されるものであるかも、その技術的概念を明確に理解することができない。
また、「熱気流の上部」は当該技術分野における確立した技術用語ではないから、「熱気流の上部」を基準として定める吸引端の高さ位置は、当業者にとって明瞭な高さ位置ではない。
したがって、構成要件1-1Eは技術上の明確性を欠き、本件訂正発明1-1ないし1-3は明確性要件に適合しない。
(原告の主張)
構成要件1-1Eにおける「熱気流」が「熱い気流」を意味することは、通常の日本語の意味として明らかである。また、本件明細書1においては「熱気流」が「加熱調理部から炎のようなパターンで立ち上る」(【0009】Ⅰ、【0026】Ⅰ)ものであるとされていることや、加熱調理部から発生する空気を「熱気」(【0003】Ⅰ)と表現されていることから、「熱気流」とは加熱調理部で発生した高温の燃焼ガスの流れであると明確に理解できる。
そして「熱気流の上部」とは、【0019】Ⅰ、【0009】Ⅰ及び図2の「熱気流H」の記載から、加熱調理部で発生した高温の燃焼ガスがローソクの炎のパターンで立ち上り、吸引端の径よりも小さく収束する位置(実施例についていえば本件図の「熱気流H」の上部)であることが、明確かつ容易に理解できる。
したがって、「熱気流の上部」の意義は、請求項の記載文言及び本件明細書1の記載から明らかであり、明確性要件違反はない。
(7)本件特許2につき実施可能要件違反の有無(争点3-1)
(被告らの主張)
構成要件2E「吸引端は、前記加熱調理部から立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされており」について、前記(4)と同様の理由によって、本件特許2には、実施可能要件の違反がある。
(原告の主張)
前記(4)と同様の理由(ただし、熱気流がローソクの炎のように立ち上がる旨を説明しているのは本件明細書2【0008】【0012】)により、本件特許2に実施可能要件の違反はない。
(8)本件特許2につき公然実施による新規性欠如の有無(争点3-2)
(被告らの主張)
原告は、本件特許2の出願日である平成14年10月9日より前である同年5月31日頃より、本件特許2の実施品であり、本件発明2に係る構成要件2Aないし2Hを全て充足する「クリアーフードNC-02-IFC」(以下「クリアーフード」という。)を製造、販売していた。その結果、例えば焼肉店「しちりん南流山店」には、平成14年8月30日までにクリアーフードが譲渡、引き渡され、同店で顧客に焼肉を提供するために使用されていた。
したがって、本件発明2は、出願前に日本国内において公然実施されたものであり、特許法29条1項2号により無効とされるべきものである。
(原告の主張)
争う。
(9)損害の数額(争点4)
(原告の主張)
原告は、以下のとおり、被告サンタの行為により6億6000万円、被告東産業の行為により2億2000万円、被告山岡金属の行為により8800万円の各損害を被った。
ア 特許法102条2項に基づく損害
被告サンタは、平成15年10月27日から口頭弁論終結時に至るまで、被告製品を製造し、販売又は販売の申出をしているところ、販売台数は3万台を下らず、これにより得た利益は1台当たり2万円、総額6億円(3万台×2万円)を下回らない。
被告東産業は、上記期間、被告製品を被告サンタから仕入れ、販売又は販売の申出をしているところ、販売台数は1万台を下らず、これにより得た利益は1台当たり2万円、総額2億円(1万台×2万円)を下回らない。
被告山岡金属は、上記期間、被告製品を被告サンタから仕入れ、販売又は販売の申出をしているところ、販売台数は4000台を下らず、これにより得た利益は1台当たり2万円、総額8000万円(4000台×2万円)を下回らない。
イ 弁護士費用相当損害金
前記アの各損害額の1割を下回らない。
(被告らの主張)
争う。
6.当裁判所の判断
1 本件訂正発明1及びその意義
(1)本件明細書1には、以下の記載がある。
-省略-
(2)本件訂正発明1の意義
前記(1)によれば、本件訂正発明1の意義は以下のとおりであると認められる。
加熱調理部付きテーブルに対する個別排気のための排気装置における従来の技術は、吸気部をフード構造にしてその吸引端のサイズを加熱調理部のサイズより大きくするというものであった。しかし、この技術には、必ずしも効率的な吸引・排気がされておらず、周辺の空気にわずかな流れがあってもそれで吸引流が乱されて漏れのない吸引・排気ができなくなる、加熱調理部付きテーブルを囲んでの飲食の邪魔になる、空調に大きな容量を必要とする、吸気部が重いため吸気部を可動構造にする場合にはその構造が大掛かりになるといった問題点があった。
本件訂正発明1は、加熱調理部付きテーブルの焼き網を備えた焼き肉用の炭火コンロ又はガスコンロにおいて、加熱調理部からはローソクの炎のようなパターンで熱気流が立ち上り、加熱調理部からの煙もその熱気流に乗って流れる傾向にあるとの知見を前提として、この熱気流の上端部に、熱気流の上端部の広がりより若干大きい程度のサイズ(実際的な目安は加熱調理部のサイズの3分の1以下)の吸引端を臨ませる排気装置とすることによって、より効率的な排気を行なうことができ、また、吸気部の吸引端のサイズを小さくすることができ、これにより飲食の邪魔になることを避け、空調コストの低減が可能になるとの作用効果を奏するものであると認められる。
2 争点2-1(実施可能要件違反の有無)について
事案に鑑み、まず争点2-1について判断する。
(1)平成14年法律第24号による改正前の特許法36条4項は、明細書の発明の詳細な説明の記載は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない」と定める。物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、同条にいう記載がされているというためには、物の発明については、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用することができる必要があるといえる。
(2)ア 本件訂正発明1-1についてみると、構成要件1-1Eは「吸引端は、前記加熱調理部から前記焼き網を通過して立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされている」とするから、本件各発明を実施するためには、排気装置の生産、使用に当たり、その吸引端をこの「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」とする必要があり、熱気流の上部を検知できなければならない。また、本件明細書1には、課題を解決するための手段として、前記の記載があり、発明の実施形態として、同エの記載があり、本件図が掲載されている。これらによれば、本件訂正発明1は、加熱調理部付きテーブルの加熱調理部からはローソクの炎のようなパターンで熱気流が立ち上っており、その熱気流には、上記の炎と同じような上端部があるという前提に基づき、この熱気流の上端部に吸引端を臨ませて、集中的な吸引をするというものである(【0009】Ⅰ)。また、その立ち上るという熱気流は、本件図のとおりとされていて、本件図において、「熱気流(H)」として、加熱調理部の上部から吸引端の付近まで三角形に似た形状(以下「本件三角形状」という。)が示されている(【0019】Ⅰ)。
これらによれば、本件明細書1によれば、「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」は、本件図に示された加熱調理部の上部にある本件三角形状の頂点である熱気流の上端部を吸引端が包むことができる位置であり、熱気流の上部とは、本件三角形状の頂点である熱気流の上端部をいうものといえる。
イ 被告は、熱気流の上部を特定することができず、本件訂正発明1が実施可能要件に違反すると主張する。
熱気流そのものは目視できないものの、原告は、本件明細書1には、「加熱調理部からの煙もこの熱気流に乗って流れる傾向にある」(【0009】Ⅰ)等の記載があることを挙げて、熱気流に乗って流れる煙を目視することで、熱気流の上部を知ることができる旨主張する。
なお、本件明細書1において、その記載に照らせば、本件訂正発明1の加熱調理部から焼き網を通過して立ち上る熱気流は排気装置の吸引端における吸引をしない状態で本件三角形状になるとされているものと認められ、原告も、このことを前提として、上記のとおり、その上部(上端部)を知ることができると主張する。
ウ ここで、炭火コンロにおける煙の立ち上り方等についてみると、加熱調理部である炭火コンロから発生する煙の様子を通常のカメラで撮影した動画(甲37、46、47、乙27、34)及び乙29(30枚目)によれば、加熱調理部から発生した煙は、いずれも上方に行くにしたがって徐々に拡散しており、加熱調理部の上方のいずれかの位置において、本件図に示された本件三角形状のように収束する様子は見られない。
原告は、上記動画(甲46)の30秒及び52秒時点における煙の動き(甲43の画像10及び画像11)を見ると、炭火コンロから発生した煙は炭火コンロの中央上部に向かって収束するように立ち上っていることが見て取れると主張する。しかし、煙がコンロの中央上部に向かって立ち上るようにみえる動きをする瞬間があったとしても、一定の時間を通じて見ると、加熱調理部から発生した煙は、いずれも上方に行くにしたがって徐々に拡散しており、加熱調理部の上方のいずれかの位置において、本件図に示された本件三角形状のように収束する様子は見られない。
これらによれば、本件各発明を実施しようとする者が、煙の動きを観察したとしても「熱気流の上部」の位置を特定することができるとは認められないというべきである。
エ 原告は、炭火コンロをサーモグラフィー(物体から放射された赤外線をレンズでサーモパイルと呼ばれる検出素子に集光し、これを増幅し、放射率補正を行って温度を色により表示する計測器、乙31の2)によって撮影した動画(甲37、44ないし45)を見ると、加熱調理部から発生する高温部分は、上昇するに伴い中央部分に三角形状に収束し、その後空中に拡散している様子が観察でき、これが本件三角形状である旨主張する。
原告が提出する上記各動画(甲37、42、44、45)を見ると、加熱調理部である炭火コンロの上部に三角形状の高温部分が存在することが認められるものの、被告が撮影した同様の動画(乙27、33、34)には、原告の上記各動画に現れているような三角形状の高温部分は撮影されていない。気体は赤外線の放射エネルギー量が非常に小さく、サーモグラフィーは気体の温度測定に適さないこと(乙31の1、31の2)に照らしても、原告の提出する各動画において観察される三角形状の高温部分は、加熱調理部から発生する熱気流のうち、サーモグラフィーで捉えられる一部のみが撮影された可能性があり、これらの動画から、直ちに炭火コンロから発生する熱気流が三角形状に収束し、サーモグラフィーにより熱気流の上端部を知ることができると認めることは困難である。また、原告が同一の炭火コンロをサーモグラフィーと通常のカメラの両方で撮影したとみられる動画(甲37)によれば、煙は、サーモグラフィーで撮影された上記高温部分に沿うことなく、これとは関係のない形状で上昇していると認められる。本件明細書1によれば煙は熱気流に乗って流れるというのであるから、熱気流に乗って流れる煙の形状とも異なる上記高温部分の存在により、熱気流の上端部を認識することができるとも認められない。
以上によれば、本件特許1の出願当時(平成14年)において、仮に当業者においてサーモグラフィーを使用することがあったとしたとしても、本件明細書の記載や技術常識に基づいて、加熱調理部から立ち上る熱気流の全体やその熱気流の上部を検知することはできない。
オ 以上によれば、本件訂正発明1-1を実施するためには、排気装置の生産、使用に当たり、その吸引端を「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」(構成要件1-1E)とする必要があるところ、本件明細書1において、当業者が「熱気流の上部」を検知して本件訂正発明1-1を生産、使用することができる程度に明確かつ十分な記載がされているとは評価できない。
(3)本件訂正発明1-2及び1-3は、加熱調理部付きテーブル個別排気用の排気装置の発明であるところ、いずれも構成要件1-1Eをそれらの排気装置の構成とする。したがって、前記(2)と同様の理由により、本件明細書1において、当業者が「熱気流の上部」を検知して本件訂正発明1-2及び1-3を生産、使用することができる程度に明確かつ十分な記載がされているとは評価できない。
(4)したがって、本件訂正発明1に係る特許は、特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告は、特許法104条の3第1項により、本件訂正発明1に係る特許権を行使することができない。
3 本件発明2及びその意義
(1)本件明細書2には、発明の属する技術分野として、本件明細書1と同じ記載(前記1(1)ア)があり、従来技術として本件明細書1と同じ記載(同イ)があるほか、引き続き、以下の記載がある。また、本件明細書2の図7は、本件明細書1の図2と同じ図であり、本件図である。
-省略-
(2)本件発明2の意義
前記(1)によれば、本件発明2は、本件訂正発明1について、グリースフィルタの交換や清掃の作業負担が大きくなるとの課題があったことから、その技術に対して、吸気部の途中に加熱調理部付きテーブルの傍で人が通常の立ち状態で操作できる高さ位置でフィルタ装着部を設け、このフィルタ装着部に、前記排気中に含まれる油分の分離・回収用のグリースフィルタを着脱可能に装着することにより、本件訂正発明1における作用効果に加えて、グリースフィルタの交換や清掃を容易に行なえるとの作用効果を奏するものであると認められる。
4 争点3-1(実施可能要件違反の有無)について
本件発明2の構成要件2Eは、本件訂正発明1の構成要件1-1Eと基本的に同じであり、「そしてこの吸引端は、前記加熱調理部から立ち上る熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置で前記加熱調理部に臨まされており」というものである。
そして、この技術的な意義等に関する本件明細書2の記載は、本件明細書1の記載と同じものである。
本件発明2を実施するためには、排気装置の生産、使用に当たり、その吸引端をこの「熱気流の上部を包み込むことのできる高さ位置」(構成要件2E)とする必要があるところ、前記2によれば、本件明細書2において、当業者が「熱気流の上部」を検知して本件発明2を生産、使用することができる程度に明確かつ十分な記載がされているとは評価できない(特許法36条4項1号)。
したがって、本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから、原告は、特許法104条の3第1項により、本件発明2に係る特許権を行使することができない。