コネクタ特許の審決取消訴訟

投稿日: 2017/06/06 0:50:02

本来は掘削装置事件(その2)を投稿する予定でしたが、審決取消訴訟を取り上げます。このブログでは審決取消訴訟単独については投稿しない予定でした。しかし、以前このブログで取り上げた侵害事件(平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第14006号))の原告であるヒロセ電機株式会社の特許についての訂正審判の審決取消訴訟だったので取り上げることにしました。同日に2件判決があったので何か起こっていそうな感じがします。

もっともまとめるのは手続きの経緯だけです。

 

 

1.手続の時系列の整理

(1)特許第5197216号

(2)特許第5220888号

 

2.検討

① これらの特許は親出願と分割出願の関係です。以前投稿した事件の特許とは異なるファミリです。

② ヒロセ電機株式会社は、これらの特許にもとづいてイリソ電子工業株式会社を被告とする侵害訴訟事件(平成26年(ワ)第18842号 特許権侵害差止等請求事件)を起こしており、2015年7月28日の判決で「被告製品は本件特許の構成要件1B,1F,2B,2Hのいずれも充足しない上,本件特許発明1は新規性を欠き,本件特許発明2-1及び本件特許発明2-2は進歩性を欠くため,本件特許はいずれも無効とされるべきものと認められる。」と判断されています。

③ 訂正審判で独立特許要件に欠けると判断されましたが、その根拠となった文献は平成26年(ワ)第18842号 特許権侵害差止等請求事件で無効と判断される根拠となった文献と同一でした。したがって、今回の一連の訂正審判及び審決取消訴訟は当該侵害訴訟における無効との判断を解消するためであったものと思われます。

④ 侵害訴訟での無効判断は対世的効力を有していないので、通常はわざわざ4年もかけてまで訂正審判及び審決取消訴訟を行わないように思います。ひょっとしたら他の製品に対する権利行使を想定しているのか、それとも既にアクションを起こしているのかもしれません。いずれにせよ、非常に知財に対してポジティブな対応だと思います。