LED照明装置事件
投稿日: 2018/11/15 23:28:57
今日は、平成29年(ワ)第13794号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。原告である億光電子工業股份有限公司は、判決文によると、台湾法に基づき設立された法人であり、LED発光素子(光源)の製造販売等を業としているそうです。被告であるシチズン電子株式会社は、電子及び電気部品並びに電子及び電気機器の製作並びに売買等を業とする株式会社、日亜化学工業株式会社は、半導体及び関連材料、部品、応用製品の製造、販売並びに研究開発等を業とする株式会社、大光電機株式会社は、電気照明器具の製造及び販売等を業とする株式会社だそうです。
1.手続の時系列の整理(特許第3989794号)
① 原告のホームページに訴訟が提起された年月日が掲載されていました。
② 訴訟中に被告のシチズン電子株式会社及び日亜化学工業株式会社から特許無効審判が請求されましたが、その審決が出る前に判決が出ました。
2.本件訂正発明
(1)本件発明1(請求項7)
1A 基板(51)と、前記基板の片面に実装されたLED(53)とを備えたLED照明光源であって、
1B 前記基板(51)のうち前記LED(53)が実装されている前記基板(51)片面の一端側に、当該LED照明光源が取り付けられるLED照明装置のコネクタ(55)によって前記基板(51)片面から基板裏面への方向に押圧されて前記コネクタ(55)に接続される給電端子(54)が設けられており、
1E´前記基板(51)の一部にマークが形成されており、
1C´前記コネクタ(55)に設けられたバネ性を有する端子部(56)が前記給電端子(54)を押圧することにより、前記基板(51)片面から基板裏面への方向に押圧されるとともに、前記コネクタ(55)により、前記基板(51)片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて、前記LED照明装置に着脱可能に固定される、
1D LED照明光源。
(2)本件発明2(請求項1)
2A LED(53)が片面に実装された基板(51)の当該面に給電端子(54)を有する着脱可能なLED照明光源と、
2B 前記基板(51)のうち前記LED(53)が実装されていない基板裏面と接触する熱伝導部材(50)と、
2C 前記基板(51)裏面と前記熱伝導部材(50)とを押圧しながら前記給電端子(54)に接続される少なくとも1つのコネクタ(55)と、
2D 前記コネクタ(55)を介して前記LED照明光源と電気的に接続される点灯回路と、を備えるLED照明装置であって、
2G´前記基板(51)の一部にマークが形成されており、
2E´前記コネクタ(55)に設けられたバネ性を有する端子部(56)が前記給電端子(54)を押圧することにより、前記基板(51)裏面を前記熱伝導部材(50)に押し付けるとともに、前記コネクタ(55)により、前記基板(51)片面において、隣接する少なくとも3つの外周辺が、それぞれその過半が覆われて、前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する
2F LED照明装置。
3.被告製品
1 被告照明光源1
(1)被告照明光源1は、略正方形状の薄板の基板の片面(以下、この面を「表面」という。)に円形状のLEDを実装したLED照明光源である。この被告照明光源1を、LED照明装置に搭載し、電気的に接続することで、被告照明光源1が発光し、照明装置として使用することができる。
(2)被告照明光源1は、LEDが実装されている基板表面の略正方形状の一端側にLED照明装置と電気的に接続するための給電端子が設けられている。略正方形状の他端側、対角線方向の箇所にも同様の給電端子が設けられている。
(3)被告照明光源1を、LED照明装置のコネクタに取り付けて、LED照明装置の熱伝導部材(ヒートシンク)にねじ止めすることで、被告照明光源1がLED照明装置に着脱可能に固定される。このとき、被告照明光源1は、その裏面がLED照明装置の熱伝導部材と接触する。LED照明装置のコネクタの電極部はバネのように付勢されており、被告照明光源1は、基板表面から基板裏面への方向に押圧されて、コネクタと給電端子が電気的に接続される。
2 被告照明光源2
(1)被告照明光源2は、略正方形状の薄板の基板の片面(以下、この面を「表面」という。)に円形状のLEDを実装したLED照明光源である。この被告照明光源2を、LED照明装置に搭載し、電気的に接続することで、被告照明光源2が発光し、照明装置として使用することができる。
(2)被告照明光源2は、LEDが実装されている基板表面の略正方形状の一端側にLED照明装置と電気的に接続するための給電端子が設けられている。略正方形状の他端側、対角線方向の箇所にも同様の給電端子が設けられている。
(3)被告照明光源2を、LED照明装置のコネクタに取り付けて、LED照明装置の熱伝導部材(ヒートシンク)にねじ止めすることで、被告照明光源2がLED照明装置に着脱可能に固定される。このとき、被告照明光源2は、その裏面がLED照明装置の熱伝導部材と接触する。LED照明装置のコネクタの電極部はバネのように付勢されており、被告照明光源2は、基板表面から基板裏面への方向に押圧されて、コネクタと給電端子が電気的に接続される。
3 被告照明装置
(1)被告照明装置は、光源として薄板状のLED照明光源を用いるLED照明装置である。
(2)被告照明装置に用いるLED照明光源は、略正方形状の薄板の基板の片面(以下、この面を「表面」という。)に円形状のLEDを実装したLED照明光源である。このLED照明光源を、被告照明装置に搭載し、電気的に接続することで、LED照明光源が発光し、照明装置として使用することができる。
(3)LED照明光源は、LEDが実装されている基板表面の略正方形状の一端側に被告照明装置と電気的に接続するための給電端子が設けられている。略正方形状の他端側、対角線方向の箇所にも同様の給電端子が設けられている。
(4)LED照明光源を、被告照明装置のコネクタに取り付けて、被告照明装置の熱伝導部材(ヒートシンク)にねじ止めすることで、LED照明光源が被告照明装置に着脱可能に固定される。このとき、LED照明光源は、その裏面が被告照明装置の熱伝導部材と接触する。被告照明装置のコネクタの電極部はバネのように付勢されており、LED照明光源は、基板表面から基板裏面への方向に押圧されて、コネクタと給電端子が電気的に接続される。
4.争点
(1)被告各製品は、本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)
ア 被告各照明光源は「一端側」(構成要件1B)を充足するか(争点1-1)
イ 被告各製品は「着脱可能」(構成要件1C、2A及び2E)を充足するか(争点1-2)
ウ 被告照明装置は「基板裏面と接触する熱伝導部材」(構成要件2B)を充足するか(争点1-3)
エ 被告照明装置は「コネクタ」(構成要件2C及び2E)を充足するか(争点1-4)
(2)被告各照明光源の製造等は間接侵害を構成するか(争点2)
(3)本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点3)
ア 本件発明1について(争点3-1)
(ア)本件特許は特許法36条6項2号に違反しているか(無効理由1・争点3-1(1))
(イ)本件特許は特許法36条6項2号に違反しているか(無効理由2・争点3-1(2))
(ウ)本件発明1は新規性又は進歩性を欠くものであるか(無効理由3・争点3-1(3))
イ 本件発明2について(争点3-2)
(ア)本件特許は特許法36条6項1号及び2号に違反しているか(無効理由1・争点3-2(1))
(イ)本件特許は特許法36条6項2号、同条4項1号、同条6項1号に違反しているか(無効理由2・争点3-2(2))
(ウ)本件特許は特許法29条の2に違反しているか(無効理由3・争点3-2(3))
(エ)本件特許は乙12に基づき新規性又は進歩性を欠くものであるか(無効理由4・争点3-2(4))
(オ)本件特許は乙13に基づき新規性又は進歩性を欠くものであるか(無効理由5・争点3-2(5))
(カ)本件特許は乙5に基づき新規性又は進歩性を欠くものであるか(無効理由6・争点3-2(6))
(キ)本件特許は乙15に基づき新規性又は進歩性を欠くものであるか(無効理由7・争点3-2(7))
(ク)本件特許は乙16に基づき新規性又は進歩性を欠くものであるか(無効理由8・争点3-2(8))
(4)訂正の再抗弁は認められるか(争点4)
(5)損害の発生の有無及びその額(争点5)
5.裁判所の判断
1 本件各発明の意義について
(1)本件明細書の発明の詳細な説明の記載
-省略-
(2)本件特許の出願経過
証拠(丙5ないし7)及び弁論の全趣旨によれば、本件特許の出願経過として、以下の事実が認められる。すなわち、特許庁審査官は、平成19年3月20日を起案日とする拒絶理由通知書(丙5)において、当時の特許請求の範囲請求項1ないし17に係る各発明について、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知した。これに対し、出願人は、平成19年5月21日提出の手続補正書(丙7)において明細書を補正し、請求項1に「前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する、」との構成を付加して変更した。そして、出願人は、上記補正をするに当たり、特許庁審査官に対して意見書(丙6)を提出したところ、同意見書には、「「LED照明装置がコネクタの押圧によってLED照明装置に固定される」という発明特定事項は、本願明細書(…)の段落【0168】に記載されています。段落【0168】では、特別の押圧手段を設けた場合に給電端子への機械的押圧をあまり大きくする必要がない旨、記載されています。このことは、特別の押圧手段の有無にかかわらず、図14(b)に示されるようなコネクタ電極56が給電端子を押すことにより、LED照明光源がLED照明装置に対して(着脱可能に)固定されることを意味しています。」(図14(b)は別紙「本件明細書の図面」記載2のとおりである。)、「上記の構成を有する発明によれば、明細書の段落【0168】などに記載されている通り、LED照明光源をコネクタに装着することにより、LED照明光源の基板裏面が熱伝導部材に押し付けられ、LED照明装置に固定されるため、人の指によるLED照明光源の着脱操作が容易に行えます。このため、LED照明光源の取替えが一般の照明器具使用者によっても容易に行えるため、現在普及している電球や蛍光管をLED照明光源で代替してゆくことが可能になります。」との記載がある。その結果、特許庁審査官は上記補正がされた後の出願に対して特許査定をした。
(3)本件各発明の意義
以上の本件明細書の発明の詳細な説明の記載、本件特許の特許請求の範囲請求項1及び7の記載並びに本件特許の出願経過によれば、本件各発明は、LED照明装置及びカード型LED照明光源に関するものであり、LED素子の高密度化、放熱性、及び光利用効率の向上を同時に解決できるLED照明光源及びLED照明装置を提供することを目的とするものであって、本件発明2において、照明光源を着脱可能なカード状構造物によって構成することにより、照明光源における各LED素子で発生した熱をスムーズに放熱させる効果を高めるとともに、寿命の尽きた照明光源だけを新しい照明光源と取り替え得るようにすることによって照明装置の照明光源以外の構造体を長期間使用できるようにするとともに、本件発明1において、LED素子の高密度化、良好な放熱性及び発生した光の利用効率の向上を同時に実現するものである、と認められる。
2 争点1(被告各製品は、本件各発明の技術的範囲に属するか)について
(1)争点1-1(被告各照明光源は「一端側」(構成要件1B)を充足するか)について
ア 構成要件1Bは、「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、…給電端子が設けられており、」と規定している。
「一端」とは、一般に「一方のはし。かたはし。」を意味する用語であるとされているから、「基板片面の一端側に、…給電端子が設けられて」いる構成とは、給電端子は基板片面の一方のはしに設けられており、他方のはしには設けられていないこと、すなわち、給電端子は基板片面の一方のはしのみに設けられている構成を意味すると解するのが自然かつ合理的な解釈である。そして、本件明細書の段落【0077】、【0142】及び【0143】の記載において、「一端」という表現は、給電端子が基板片面の4辺のうちの1辺のみに設けられていることを意味するものとして使用されており、本件明細書において上記の態様以外の給電端子を設ける態様の記載も見当たらないことを考慮すると、「基板片面の一端側に、…給電端子が設けられて」いる構成とは、基板片面の複数の辺のうち1つの辺のみに給電端子を設ける構成を意味するものと解される。
これに対し、原告は、「基板片面の一端側に」とは、基板の中心部ではなく、周辺部に給電端子を形成することを規定しているものであるから、一端側に給電端子が設けられていれば足り、それ以上に一端側「のみ」に集中的に給電端子が設けられている必要はない旨を主張する。しかしながら、「一端側」が周辺部を意味するものであるとすれば、日本語の通常の用法とは離れた意味となるし、段落【0077】において、「周辺部」と「一端(一辺)」とを異なった態様として使用していることとも整合しないから、上記主張を採用することはできない。
イ そして、証拠(甲3、4、6及び7)及び弁論の全趣旨によれば、被告各照明光源の給電端子は、略正方形状の基板片面の一対の対角付近に設けられていることが認められる。そうすると、「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、…給電端子が設けられて」いる構成を有しているとはいえず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、その余の点を判断するまでもなく、被告各照明光源は、構成要件1Bを充足しないから、本件発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
(2)争点1-4(被告照明装置は「コネクタ」(構成要件2C及び2E)を充足するか)について
ア 構成要件2Cは、「コネクタ」について、「前記基板裏面と前記熱伝導部材とを押圧しながら前記給電端子に接続される」と規定し、構成要件2Eは、「前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」と規定している。そして、前記1(2)において認定したとおり、上記構成要件2Eは出願過程において拒絶理由を回避するために補正されたものであり、その際に提出された意見書において、この構成要件は、コネクタ電極が給電端子を押すことにより、LED照明光源がLED照明装置に対して固定されることを意味する旨記載されている。そうすると、本件発明2における「コネクタ」とは、その電極が基板裏面と熱伝導部材とを押圧しながら給電端子に接続されるとともに、その押圧力により基板裏面が熱伝導部材に押し付けられ、それによってLED照明光源をLED照明装置に着脱可能に固定する構成を有するものであると解される。
イ これを被告照明装置についてみるに、証拠(甲6、8、11、乙1、2、丙1、2)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(なお、甲6及び11において「コネクタ」と示されているものは、甲8によればホルダーに該当すると解される。)。すなわち、被告照明装置のうち、別紙被告製品目録記載3(1)の製品(型番「LZS-92134YW」)は、被告照明光源1を搭載しており、同目録記載3(2)の製品(型番「LZD-91835AW」)は、被告照明光源2を搭載しているものであるが、いずれも、被告各照明光源の裏面をヒートシンクに接するように置き、それをホルダーで覆った上で、ホルダーをヒートシンクにねじ止めすることにより、被告各照明光源が被告照明装置に固定される。そして、ホルダーには、被告各照明光源が収納される形状の凹部が設けられ、その範囲内に被告各照明光源の形状よりも狭い面積の円形状の開口部が設けられているところ、被告各照明光源をホルダーで覆うことにより、被告各照明光源の周辺部がホルダーに接し、被告各照明光源が固定される。他方、ホルダーの電極部は、バネのように付勢されており、これが被告各照明光源の給電端子に接触してはいるが、被告各照明光源をホルダーで覆ってねじ止めすれば、電極部の接触の有無にかかわらず、被告各照明光源は固定される。
そして、ホルダーの電極部の押圧力が被告各照明光源を固定する役割を担っていることを認めるに足りる証拠はない。
このように、被告照明装置は、被告各照明光源の周辺部に接するように置かれたホルダーがヒートシンクにねじ止めされることにより、被告各照明光源を固定しているのであり、ホルダーの電極部の押圧力が被告各照明光源を固定する役割を担っているとは認められない。したがって、被告照明装置におけるコネクタは、そのホルダーの電極部の押圧力により被告各照明光源の裏面がヒートシンクに押し付けられ、これによって被告各照明光源を被告照明装置に着脱可能に固定しているということはできないから、「コネクタ」に関する上記構成を有すると認めることはできず、その余の被告照明装置についても、上記構成を有することを認めるに足りる証拠はない。
ウ これに対し、原告は、被告照明装置のホルダーの電極部は、バネのように付勢されているから、ホルダーが基板裏面と熱伝導部材を押圧し、基板裏面を熱伝導部材に押し付けて固定しているといえ、構成要件2C及び2Eを充足する旨を主張する。
しかしながら、前記イのとおり、被告照明装置では、ホルダーの電極部の被告各照明光源への接触の有無にかかわらず、被告各照明光源が固定されているのであり、ホルダーのバネのように付勢されている電極部の押圧力が被告各照明光源を固定する役割を担っているとは認められないのであって、原告の上記主張は採用することができない。
エ したがって、その余の点を判断するまでもなく、被告照明装置は、構成要件2C及び2Eを充足しないから、本件発明2の技術的範囲に属するとは認められない。
(3)小括
以上のとおり、被告各製品は、本件各発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
6.検討
(1)発明自体は、①LEDが実装されている基板の片面の一端側に給電端子が設けられ、②基板の一部にマークが形成され、③この給電端子を押圧することで固定され、基板の片面の隣接する少なくとも三つの外周片の過半を覆うコネクタ、を備えるLED照明光源です。
(2)争点の一つは、被告照明光源が構成要件1B「前記基板のうち前記LEDが実装されている前記基板片面の一端側に、…給電端子が設けられており、」の「一端」についてでした。判決文には、被告照明光源の給電端子は略正方形状の基板片面の一対の対角付近に設けられている、と書かれていますが図面や写真はありませんでした。そのため、被告製品目録の中から「CLL042」についてネットで検索したところ、下記のような画像がありました。この画像の「+」、「-」が被告照明光源の給電端子に相当するのでは?と思います。
(3)判決では、構成要件1Bにおける「一端」について①一般に「一方のはし。かたはし。」を意味する用語であるとされているから、給電端子は基板片面の一方のはしのみに設けられている構成を意味すると解するのが自然かつ合理的な解釈である、②本件明細書において上記の態様以外の給電端子を設ける態様の記載も見当たらないことを考慮すると、基板片面の複数の辺のうち1つの辺のみに給電端子を設ける構成を意味するものと解される、と述べています。
(4)これが「端部」や「周辺部」であれば被告照明光源が構成要件1Bを充足すると考える余地がないわけでもありませんが、本件明細書の記載ぶりからして「一端」と書いてしまうと、被告照明光源が構成要件1Bを充足しない、と判断されてもやむを得ないように思います。
(5)また、他の争点としては被告照明装置が構成要件2E「前記コネクタは、前記基板裏面を前記熱伝導部材に押し付けることによって前記LED照明光源を前記LED照明装置に着脱可能に固定する」を充足するか否かでした。これも残念ながら図面や写真が無く、ネットで検索しても照明装置の外観図等はあるのですが、コネクタ部分の図面等が見つかりませんでした。そのため判決文における被告製品の説明だけに基づいて考えてみます。判決文によると、被告照明装置はホルダーがヒートシンクにねじ止めされることで照明光源が固定されており、電極部の押圧力によって固定されているとはいえない、というものでした。裁判官は本件発明が押圧により固定される、と認定しているので、そうなると被告照明装置は構成要件2Eを充足しない、という結論になってしまうように思います。
(6)本件明細書や意見書の内容を見直すと気になる点があります。判決で引用されている意見書の記載「図14(b)に示されるようなコネクタ電極56が給電端子を押すことにより、LED照明光源がLED照明装置に対して(着脱可能に)固定されることを意味しています。」についてですが、本件明細書【0168】には「上記押圧手段によってカード型LED照明光源の基板裏面を熱伝導部材に強固に押し付けることができる」と記載されているのみであり「固定」とは一言も書かれていません。したがって、この意見書と同時に提出された補正書により補正された本件発明の内容が本当に明細書の意図に沿ったものであったのか疑問が残ります。