ライン光照明装置事件

投稿日: 2020/05/04 0:15:14

今日は、平成29年(ワ)第7532号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。原告であるシーシーエス株式会社は、判決文によると、光学機器の製造及び販売等を目的とする株式会社であり、一方、被告である株式会社レイマックは工業用電気機械設備・装置の製作、施工及び販売等を目的とする株式会社だそうです。

 

1.検討結果

(1)本件発明は、光照射装置において、従来、順方向電圧が異なるLED毎に対応して異なる基板を用いていたことを改良するために、電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差が所定の許容範囲となるLEDの個数をLED単位数とし、LED基板に搭載されるLEDの個数を、順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とすることで、同一サイズのLED基板に順方向電圧の異なるLEDを搭載できるようにしたものです。

(2)被告は被告各製品が本件再訂正発明の技術的範囲に属する点については争っておらず、訂正要件違反、進歩性欠如の無効論及び先使用権の主張をしました。新規性ではなく進歩性欠如の主張をしている時点で先使用権が認められる可能性は低そうですが、やはりどちらも認められませんでした。

(3)抵触性について争っていないので、取り上げるつもりではありませんでした。しかし、争点になっていないので当事者の間では当たり前の話なのかもしれませんが、「所定の許容範囲」という文言の意味がよくわからないので取り上げてみました。

(4)本件明細書には「所定の許容範囲」について以下のような記載があります。

「所定の許容範囲」とは、種類の異なるLED21毎に定まるLED単位数の公倍数によりLED基板2にLED21を搭載した場合に、所望の照射領域を1つ又は複数のLED基板2により実現できる条件(より具体的には、種類の異なるLED21毎に定まるLED単位数の最小公倍数を可及的に小さくする条件)、及び種類の異なるLED21毎にそのLED単位数を可及的に大きくする条件により決まる。

ここでは二つの条件が示されています。一つは、種類の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数をできるだけ小さくする条件です。この記載の後に続く例では、電源電圧Vが24Vの場合、順方向電圧Vが2.2Vの赤色LEDのLED単位数を10個、順方向電圧Vが3.3Vの白色LEDのLED単位数を6個、順方向電圧Vが1.5Vの赤外LEDのLED単位数を15個としています。この組み合わせでのLED単位数の最小公倍数は30個となります。ここで、白色LEDについては7個も考えられるが、6個としたのは最小公倍数を小さくするためであると述べられています(ちなみに、白色LEDのLED単位数を7個とすると最小公倍数は210個です。)。

(5)この例では、赤色LED10個のときの電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差である2V、白色LED6個のときの4.2V(7個のときは0.9V)、赤外LED15個のときの1.5Vは算出されておらず、LED単位数を決定する上で利用されたようには思えません。

(6)また、もう一つの種類の異なるLED毎にそのLED単位数をできるだけ大きくする条件を満たす上で電源電圧とLEDを直列に接続したときの順方向電圧の合計との差がどのように関わるのかについての記載もありません。

(7)ここから先は完全に仮定の話です。もし、異なる3種類のLEDにおいて電源電圧に最も近づくように順方向電圧の合計を求めたところ、それぞれのLED単位数が8個、6個、4個になった場合、8個、6個、4個として最小公倍数24を選択すべきなのか、それとも本件明細書の例のように8個を6個に減らして、6個、6個、4個として最小公倍数12を選択すべきなのか本件明細書の記載からでは決定できません。そうすると、「所定の許容範囲」に存在意義はあるのでしょうか?よくわからない発明だな~という印象でした。

2.手続の時系列の整理(特許第4366431号)

① 本件特許出願を優先権の基礎出願として国際出願(PCT/JP2009/059979)がされており、米国、欧州及び中国に移行され、それぞれUS8777450、EP2306069及びCN102105738として特許となっています。欧州特許は大半の指定国で放棄されているようですが、少なくともドイツでは存続しているようです。

② 原告が訴訟を起こしてから2回訂正審判を請求していますが、いずれも本件訴訟で被告が提示した無効理由の根拠となる証拠に対するものでした。

 

3.本件発明

(1)本件当初発明

複数の同一のLED(21)を搭載したLED基板(2)と、

前記LED基板(2)を収容する基板収容空間(301)を有する筐体(3)と、を備えた光照射装置であって、

電源電圧(V)とLED(21)を直列に接続したときの順方向電圧(V)の合計との差が所定の許容範囲となるLED(21)の個数をLED単位数とし、

前記LED基板(2)に搭載されるLED(21)の個数を、順方向電圧(Vの異なるLED毎に定まるLED単位数の公倍数としている光照射装置。

(2)本件訂正発明

複数の同一のLED(21)を搭載したLED基板(2)と、

前記LED基板(2)を収容する基板収容空間(301)を有する筐体(3)と、を備えたライン状の光を照射する光照射装置であって、

電源電圧(V)とLED(21)を直列に接続したときの順方向電圧(V)の合計との差が所定の許容範囲となるLED(21)の個数をLED単位数とし、

前記LED基板(2)に搭載されるLED(21)の個数を、順方向電圧(V)の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数としている光照射装置。

(3)本件再訂正発明

複数の同一のLED(21)を搭載したLED基板(2)と、

前記LED基板(2)を収容する基板収容空間(301)を有する筐体(3)と、を備えた、ライン状の光を照射する光照射装置であって、

電源電圧(V)とLED(21)を直列に接続したときの順方向電圧(V)の合計との差が所定の許容範囲となるLED(21)の個数をLED単位数とし、

前記LED基板(2)に搭載されるLED(21)の個数を、順方向電圧(V)の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし、

複数の前記LED基板(2)を前記ライン方向に沿って直列させてある光照射装置。


4.争点

被告各製品が本件再訂正発明の技術的範囲に属する点については争いがない。

(1)抗弁の成否(争点1)

ア 本件再訂正に係る訂正要件違反(争点1-1)

イ IDB-11/14R及びIDB-11/14W関係(争点1-2)

(ア)進歩性欠如(争点1-2-1)

(イ)先使用権の成否(争点1-2-2)

ウ IDB-C11/14R及びIDB-C11/14B関係(争点1-3)

(ア)進歩性欠如(争点1-3-1)

(イ)先使用権の成否(争点1-3-2)

エ IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WS関係(争点1-4)

(ア)新規性欠如又は進歩性欠如(争点1-4-1)

(イ)先使用権の成否(争点1-4-2)

オ IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明基づく先使用権の成否(争点1-5)

カ LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明基づく先使用権の成否(争点1-6)

なお、上記「IDB-●●」、「IDR-●●」及び「LR-●●」は、いずれもライン状の光を照射する光照明装置の型式及び色を示すものである。以下、単に上記のとおり表記する。

(2)被告の過失の有無(争点2)

(3)原告の損害の発生の有無及び額(争点3)

(4)消滅時効の成否(争点4)

(5)被告の不当利得額(争点5)

5.争点に関する当事者の主張

1 争点1-1(本件再訂正に係る訂正要件違反)

(被告の主張)

本件当初発明は、従来技術では順方向電圧が異なるLEDの種類ごとに専用のLED基板を用意する必要があった点を、同じ大きさのLED基板を用いることができるようにして、部品点数及び製造コストの削減を図るというLED基板単体の構成に関する発明であった。ところが、本件再訂正発明は、本件当初発明では検査対象物の長さによっては1枚のLED基板だけで対応することができない場合もあった点を、複数のLED基板をライン方向に沿って直列させるようにして、検査対象物の長さとの関係で要求されるLED基板の長さを確保するというLED基板の用途を限定する発明である。

このようにLED基板の用途発明である本件再訂正発明は、LED基板単体の構成に関する発明、すなわち物の発明である本件当初発明とは全く異なる発明に変質している。したがって、本件再訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものであるから、特許法126条6項に違反する。そうすると、本件特許権は、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123条1項8号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない(同法104条の3第1項)。

(原告の主張)

本件再訂正のうち、「複数の前記LED基板を」とした訂正は、枚数が限定されていなかったLED基板の枚数を複数枚に限定するものである。また、本件再訂正のうち、「前記ライン方向に沿って直列させてある」とした訂正は、方向が限定されていなかったLED基板の方向を限定するものである。

このように本件再訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものではないから、特許法126条6項に違反しない。

2 争点1-2-1(IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明に基づく進歩性欠如)

(被告の主張)

(1)主引用発明の公然実施

被告は、平成17年3月7日にはIDB-11/14Rを、また、平成18年1月20日にはIDB-11/14Wを、それぞれ販売していた。

(2)相違点の存在

IDB-11/14R及びIDB-11/14Wは、本件再訂正発明の構成のうち、「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成以外の構成を備えている。

(3)相違点に係る構成

「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成は、本件特許出願の当時、被告が製造、販売していた製品(IDB-L600/20RS、IDB15L600/20WS等)で採用されていたり、特許公報(乙18)に記載されたりしている周知な構成である。また、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wは、被告製造等に係る上記製品及び上記特許公報記載の発明と同じ分野のものである。そうすると、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの相違点に係る構成を、周知な構成である「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成に置き換えることには動機付けがあり、阻害要因はない。

(4)小括

したがって、本件再訂正発明は、その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたから、進歩性を欠く(特許法29条2項)。そうすると、本件特許権は、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123条1項2号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

(1)主引用発明の公然実施について

IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの内部構成は、第三者が知り得ないものであるから、その販売は発明の公然実施には当たらない。

(2)相違点の存在について

本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの間に、①「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成を備えている否かという相違点があることは認める。

しかし、本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの間には、さらに、②本件再訂正発明が「ライン状の光を照射する」のに対し、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wが「ライン状の光を照射する」か否かが不明であるという相違点、及び③「前記LED基板に搭載されるLEDの個数を、順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし」たか否かという相違点がある。

(3)相違点に係る構成について

上記①の相違点に係る構成は、周知な構成であるとまではいえない。また、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wには、製造に大きな負担を掛けることなく、ライン状の光の長さをきめ細やかに設定しようとする技術的思想がないことから、上記①の相違点に係る構成を、IDB-L600/20RS、IDB-L600/20WS等が開示する構成に置き換える動機付けがない。

加えて、被告は、上記③の相違点に係る構成を証拠で示していない。また、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wからは、上記③の相違点に係る構成を本件訂正発明のものに置き換えようとする動機付けとなる技術的思想を把握することができない。さらに、上記③の相違点に係る構成は、「LED基板をできるだけ小さくすることに意味はない」という固定観念を打破し、LED基板の汎用性を向上させるという格別の効果を奏するものである。

(4)小括

以上によれば、本件再訂正発明は、IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに基づいて容易に発明をすることができたとはいえないから、進歩性を欠くものではない。

3 争点1-2-2(IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明に基づく先使用権の成否)

(被告の主張)

被告は、前記2(被告の主張)(1)のとおり、本件特許出願の前から、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wを製造、販売していた。これらの製品は、本件訂正発明の構成を全て備えている。そうすると、被告は、上記各製品により具現化された発明の範囲内において、本件特許権について先使用に基づく通常実施権を有していたことになる。

特許請求の範囲が、本件再訂正により、拡張・変更されているのではなく、減縮されているのであれば、上記のとおり、本件訂正発明との関係において本件特許権について通常実施権を有していた被告は、本件再訂正発明との関係においても本件特許権について通常実施権を有していることになる。

したがって、被告は、本件再訂正発明との関係において、IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有する(特許法79条)。そうである以上、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-11/14Wとの間には、前記2(原告の主張)(2)で指摘した相違点がある。したがって、被告は、仮に本件訂正発明との関係ではIDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明の範囲内で本件特許権について通常実施権を有していたとしても、本件再訂正発明との関係では、IDB-11/14R又はIDB-11/14Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有しない。

4 争点1-3-1(IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明に基づく進歩性欠如)

(被告の主張)

(1)主引用発明の公然実施

被告は、平成19年5月23日にIDB-C11/14Rを、また、同年6月12日にはIDB-C11/14Bを、それぞれ販売していた。

(2)相違点の存在

IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bは、本件再訂正発明の構成のうち、「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成以外の構成を備えている。

(3)相違点に係る構成

「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成が、IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bと同じ分野に属する周知な構成であること、これらの製品の上記相違点に係る構成を上記周知の構成に置き換えることに動機付けがあり、阻害要因はないことは、前記2(被告の主張)(3)と同様である。

(4)小括

したがって、本件再訂正発明は、その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたから、進歩性を欠き、特許無効審判により無効にされるべきものであり、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

(1)主引用発明の公然実施について

IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bの内部構成は、第三者が知り得ないものであるから、その販売は発明の公然実施には当たらない。

(2)相違点の存在について

本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの間に、①「複数の前記LED基板を前記ライン方向に沿って直列させてある」という構成を備えている否かという相違点があることは認める。

しかし、IDB-11/14R及びIDB-11/14Wの場合と同様に、本件再訂正発明とIDB-11/14R及びIDB-C11/14Bとの間には、さらに、②本件再訂正発明が「ライン状の光を照射する」のに対し、IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bが「ライン状の光を照射する」か否かが不明であるという相違点、及び③「前記LED基板に搭載されるLEDの個数を、順方向電圧の異なるLED毎に定まるLED単位数の最小公倍数とし」たか否かという相違点がある。

(3)相違点に係る構成について

本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの間の相違点につき、上記①及び③の相違点に係る構成の置換えが容易ではないこと、上記③の相違点に係る構成が格別の効果を奏するものであることは、前記2(被告の主張)(3)と同様である。

(4)小括

以上によれば、本件再訂正発明は、IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに基づいて容易に発明をすることができたとはいえないから、進歩性を欠くものではない。

5 争点1-3-2(IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明に基づく先使用権の成否)

(被告の主張)

前記4(被告の主張)(1)のとおり、被告は、本件特許出願の前から、IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bを製造、販売していた。これらの製品は、本件訂正発明の構成を全て備えている。そうすると、被告は、上記各製品により具現化された発明の範囲内においては、本件特許権について通常実施権を有していたことになる。

このため、本件再訂正がされても、本件訂正発明との関係において本件特許権について通常実施権を有していた被告が、本件再訂正発明との関係においても本件特許権について通常実施権を有していることは、前記3(被告の主張)と同様である。

したがって、被告は、本件再訂正発明との関係において、IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有する。そうである以上、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

本件再訂正発明とIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bとの間には、前記4(原告の主張)(2)で指摘した相違点がある。そうすると、被告は、仮に本件訂正発明との関係ではIDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明の範囲内で本件特許権について通常実施権を有していたとしても、本件再訂正発明との関係では、IDB-C11/14R又はIDB-C11/14Bに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有しない。

6 争点1-4-1(IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明に基づく新規性欠如又は進歩性欠如)

(被告の主張)

(1)新規性欠如

ア 発明の公然実施

被告は、平成17年12月5日にはIDB-L600/20RSを、また、同年11月28日にはIDB-L600/20WSを、それぞれ販売していた。

イ 構成の同一性

IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSは、本件再訂正発明の構成を全て備えている。なお、これらの製品において、LED基板に搭載されるLEDの個数は、順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数ではなく、単に公倍数であるが、単なる公倍数ではなく最小公倍数であることに技術的意義はなく、最小公倍数か公倍数かは、実質的に相違点とはならない。

ウ 小括

したがって、本件再訂正発明は、その出願前に公然実施された発明であるから、新規性を欠く(特許法29条1項2号)。そうすると、本件特許権は、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法123条1項2号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(2)進歩性欠如

ア 相違点に係る構成

仮に、単なる公倍数ではなく最小公倍数であることに技術的意義があり、最小公倍数か公倍数かが相違点となるとしても、LED基板に搭載されるLEDの個数を、順方向電圧の異なるLEDごとに定まるLED単位数の最小公倍数とすることは、IDB-C11/14R、IDB-11/14W、IDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bにおいて採用されているとおり、当業者にとって設計事項である。

イ 小括

したがって、本件再訂正発明は、その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたから、進歩性を欠く。そうすると、本件特許権は、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

(1)新規性欠如

ア 発明の公然実施について

IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSの内部構成は、第三者が知り得ないものであるから、その販売は発明の公然実施には当たらない。

イ 構成の同一性について

本件再訂正発明は、「LED単位数の最小公倍数に設定したLED基板を複数枚並べている」のに対し、IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSは、LED単位数の、最小ではない公倍数に設定したLED基板を複数枚並べている。そうすると、IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSは、本件再訂正発明の構成の全てを備えてはいない。

ウ 小括

したがって、本件再訂正発明は、その出願前に公然実施された発明ではないから、新規性を欠くものではない。

(2)進歩性欠如

ア 相違点に係る構成

前記(1)イの本件再訂正発明における相違点に係る構成は、製造に大きな負担をかけることなく、ライン状の光の長さをきめ細やかに設定できるという課題に気付いて初めてなされたものである。また、この相違点がLED基板を複数枚並べるという構成と有機的に結合することにより、本件再訂正発明は、LED基板の長さを可及的に短くでき、細やかに長さの異なるライン光照射装置のバリエーションを提供できるという極めて顕著な効果を奏し得る。これに対し、IDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSのLED基板は、LED搭載個数が348個という大変大きな長いものであり、それを並べて細やかな長さ設定ができるという技術的思想は見られない。仮に、IDB-11/14R及びIDB-11/14WやIDB-C11/14R及びIDB-C11/14Bといった製品に見かけ上最小公倍数と認められる構成があったとしても、その課題や効果にライン状の光の長さをきめ細やかに設定できるという点は認められないから、これをIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSに係る発明に適用する動機付けはない。

また、本件再訂正発明は、「LED基板をできるだけ小さくすることに意味はない」という固定観念を打破し、LED基板の汎用性を向上させるという格別の効果を奏するものである。

イ 小括

したがって、本件再訂正発明は、その出願前に公然実施された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、進歩性を欠くものではない。

7 争点1-4-2(IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明に基づく先使用権の成否)

(被告の主張)

前記6(被告の主張)(1)のとおり、被告は、本件特許出願の前からIDB-L600/20RS及びIDB-L600/20WSをそれぞれ製造、販売しており、これらの製品は、いずれも本件再訂正発明の構成を全て備えている。

したがって、被告は、上記各製品に係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有する。そうである以上、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

本件再訂正発明とIDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSとの間には、前記6(原告の主張)(1)イで指摘した相違点がある。したがって、被告は、IDB-L600/20RS又はIDB-L600/20WSに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有しない。

8 争点1-5(IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成否)

(被告の主張)

被告は、本件特許出願の前である平成16年時点で、IDR-F60/32R及びIDRF60/32Wをそれぞれ販売していたところ、これらの製品は、いずれも本件当初発明の構成を全て備えている。そうすると、被告は、本件当初発明との関係においては、上記各製品により具現化された発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有していたことになる。

このような場合、本件当初発明との関係において、上記各製品に係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有していた被告は、本件再訂正発明との関係においても、上記各製品に係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有していることになる。

したがって、被告は、IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有する。

(原告の主張)

仮に、被告が、本件当初発明との関係において、IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有していたとしても、上記各製品がいずれも本件再訂正発明の構成を備えていない以上、被告は、本件再訂正発明との関係においては、IDR-F60/32R又はIDR-F60/32Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有しない。

9 争点1-6(LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明に基づく先使用権の成否)

(被告の主張)

被告は、本件特許出願の前である平成19年6月には、LR-F60/32R及びLRF60/32Wを製造し、取引先に対して貸出しをしていた。上記各製品は、いずれも本件当初発明の構成を全て備えている。そうすると、被告は、本件当初発明との関係において、上記各製品により具現化された発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有していたことになる。

このため、本件訂正及び本件再訂正によっても、本件当初発明との関係で本件特許権について通常実施権を有していた被告が、本件再訂正発明との関係においても、上記各製品に係る発明の範囲内で本件特許権について通常実施権を有していることは、前記8(被告の主張)と同様である。

したがって、被告は、LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有する。そうである以上、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。

(原告の主張)

仮に、被告が、本件当初発明との関係において、LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明の範囲内で本件特許権について通常実施権を有していたとしても、上記各製品が本件再訂正発明の構成を備えていない以上、被告は、本件再訂正発明との関係においては、LR-F60/32R又はLR-F60/32Wに係る発明の範囲内で、本件特許権について通常実施権を有しない。

10 争点2(被告の過失の有無)

(被告の主張)

本件においては、本件訂正及び本件再訂正と、訂正が繰り返されているが、本件特許の出願前から公然実施している製品との関係で、本件再訂正発明は進歩性がないか、あっても公知技術と極めて近いものといわざるを得ないことから、仮に本件特許権侵害行為が認められたとしても、被告に過失はない。

(原告の主張)

争う。

11 争点3(原告の損害の発生の有無及び額)

(原告の主張)

(1)逸失利益

ア 被告各製品の販売利益の額

(ア)被告各製品の販売利益の額は、以下のとおりである。なお、被告製品7の販売利益の額は、本件期間4における販売利益の額として計上している。

全期間合計(H24.7~H30.9) ●(省略)●円

内訳:H24.7~H26.7(共有者の存在による推定覆滅及び消滅時効が問題となる損害賠償請求対象期間、以下「本件期間1」という。) ●(省略)●円

H26.8~H26.11(共有者の存在による推定覆滅が問題となる損害賠償請求対象期間、以下「本件期間2」という。) ●(省略)●円

H26.12~H29.7(以下「本件期間3」という。) ●(省略)●円

H29.8~H30.9(以下「本件期間4」という。) ●(省略)●円

(イ)被告製品7の販売利益の額

被告製品7の売上額は、●(省略)●円である。

また、被告製品7の販売利益の額を算定するに当たっては、被告製品7の販売に際して実際に要した材料費を控除すべきである。そして、この材料費は、被告製品7の販売に際して実際に要した●(省略)●円と算定すべきである。

したがって、被告製品7の販売利益の額は、●(省略)●円である。

イ 特許法102条2項の適用

被告は、原告が本件再訂正発明の実施品を販売していないことなどを指摘して、本件においては特許法102条2項の適用が認められないと主張する。

しかし、原告は、本件再訂正発明を実施しており、被告の上記主張は、前提を誤るものである。また、同項は、因果関係等の立証の困難性の軽減を図った規定であり、権利者が特許発明の実施品を販売していなくても、侵害品と競合する製品を販売していれば同項が適用されるのであり、少なくとも原告はそのような製品を販売している。さらに、被告が、本件再訂正発明を実施することにより製造コストを削減し又は維持したままで、原告が販売する製品と競争力を有する価格により多色展開した製品である被告各製品を市場に投入できたことに鑑みても、被告による被告各製品の販売により、原告には売上げ減少による逸失利益が生じている。

したがって、本件においては同項の適用が認められる。

ウ 推定覆滅事由の不存在

推定覆滅事由が存在するという被告の主張は争う。具体的には、以下のとおりである。

(ア)本件再訂正発明の顧客吸引力等について

本件再訂正発明を実施することにより、需要者に対し、白色LEDが搭載されたLED基板、赤色LEDが搭載されたLED基板又は青色LEDが搭載されたLED基板を備えた各種の光照射装置について、それぞれの順方向電圧が異なるにもかかわらず同じサイズのものを選択できるという選択の幅を提示することができ、顧客吸引力につながる。

また、被告各製品は、本件再訂正発明の構成を備えることにより製造コストの削減を図ることができ、原告が販売する製品と同じ価格帯で販売することが可能になっていることに鑑みると、競争上優位な立場に立つことができている。

(イ)競合品の存在について

照明器具としての性能に変わりがない点と、コストダウンや多色・多サイズ展開していることについての顧客吸引力は別のものであり、被告各製品及び原告が販売する製品は、本件再訂正発明を実施することにより、製造コストの削減を図ることができる点や多数のサイズ及び色を展開している点に顧客吸引力がある。そうである以上、被告各製品及び原告が販売する製品の競合品は、多色展開していて、複数のLED基板をライン方向に直列させることで多数のサイズ展開をしている、ライン状の光を照射する光照射装置に限られる。

(ウ)共有特許権者の存在について

a 三菱化学が有した損害賠償請求権の譲渡

原告は、三菱化学から本件特許権の共有持分の譲渡を受けた際、同社から、同社の有する本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を承継した。したがって、原告は、三菱化学に生じた損害分を含めて、本件特許権侵害による損害額全額の請求が可能である。

b 三菱化学の損害分の控除の要否

共有に係る特許権の侵害により各共有権者が受けた損害額は、各共有権者間の公平に資するよう、特許権侵害による損害額を各共有権者の受けた損害額に応じて按分すべきである。そうすると、一方の共有者が不実施で他方の共有者のみが実施している場合、不実施の共有者が特許法102条3項により算定される損害額を現に請求していない限り、実施している共有者は、同条2項により算定される損害額全額について請求可能であるというべきである。

したがって、仮に、原告が三菱化学から本件特許権侵害に基づく損害賠償請求権を承継していなかったとしても、原告は、本件特許権侵害による損害額全額の賠償請求が可能である。

また、仮に、三菱化学に支払うべき損害賠償額が控除されるとしても、三菱化学が本件再訂正発明を実施しておらず、競合品も販売していなかったことに鑑みると、その額は、同条3項によって算定される損害の額、すなわち本件特許権を共有していた期間(本件期間1及び2)における被告製品1~6の売上高●(省略)●円(本件期間1:●(省略)●円、本件期間2:●(省略)●円)に、実施料率5%(後記13(原告の主張)のとおり)及び共有持分の割合2分の1を乗じた額である●(省略)●円となる。

(2)弁護士及び弁理士費用

被告の本件特許権侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士及び弁理士費用相当損害額は、逸失利益の額の●(省略)●に相当する●(省略)●円を下らない。

(3)遅延損害金の起算日

本件期間1~3(H24.7~H29.7)における原告の逸失利益(●(省略)●円)並びに弁護士及び弁理士費用(●(省略)●円)の合計額(●(省略)●円)については、遅くとも訴状送達の日の翌日(平成29年8月11日)から遅延損害金が発生する。本件期間4(H29.8~H30.9)における原告の逸失利益(●(省略)●円)については、遅くとも平成30年10月1日から遅延損害金が発生する。

(被告の主張)

(1)逸失利益

ア 特許法102条2項の不適用

(ア)原告は、本件再訂正発明の実施品を販売していない。

(イ)本件再訂正発明は、光照射装置の性能を向上させる発明ではなく、順方向電圧の異なるLEDを用いた光照射装置を製造する場合に部品点数及び製造コストの削減を図る発明にすぎない。ここで、被告各製品のうち、白色LED搭載製品と青色LED搭載製品とは、順方向電圧は同じであるから、LED基板は共通のサイズのものが利用される。このため、本件再訂正発明は、赤色LED搭載製品の製造に際し、赤色LEDに固有のサイズのLED基板を用意しなくてもよいというメリットがあるにとどまる。ところが、赤色LED搭載製品の販売実績は乏しいことから、その製造上のコストダウンというメリットは零に等しい。

また、本件再訂正発明は、このように製品自体の性能に関わるものでないところ、直列タイプの検査用LED照明において、需要者は、価格との見合いで光の均一性や光量といった性能面を重視して製品選択をするのであって、順方向電圧の異なるLEDが搭載されるLED基板同士の大きさが同一である点に着目して製品選択をするわけではない。しかも、需要者の立場からは、LED基板の設計において、LED単位数の最小公倍数の単位基板が長さ方向に連設されている製品と、最小公倍数ではない公倍数の単位基板が連設されている製品とで、購入意欲に有意な差異を生じるものではない。それどころか、複数のLED基板が直列させてある点は、基板の接続箇所で不具合が起こる可能性が高いとして、製品としての評価を低下させ得る事情である。

(ウ)これらの事情に鑑みると、原告に、被告による本件特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情は存在しないから、特許法102条2項による推定の前提を欠く。

イ 被告各製品の販売利益の額

(ア)被告各製品の販売利益の額については、被告製品7の販売利益の額を除き、認める。

(イ)被告製品7の販売利益の額

被告製品7の売上額が●(省略)●円であることは認める。

他方、被告製品7の販売数量は1台であるところ、乙33では、当該1台の材料費が●(省略)●円と算定されている。しかし、当該1台は、試作品を製品として転用したものであることから、材料費が低く算定されているにすぎない。また、業界の常識として、赤外のLED素子の単価の方が、白色のLED素子と比較して高い。このため、赤外のLED素子を用いている被告製品7の材料費は、白色のLED素子を用いている被告製品4の材料費(●(省略)●円)より高くなると見込まれる。そうすると、被告製品7の材料費は、●(省略)●円と算定すべきである。

したがって、被告製品7の販売利益の額は、●(省略)●円である。

ウ 推定覆滅事由の存在

(ア)本件再訂正発明の顧客吸引力等

前記ア(ア)及び(イ)で指摘した事情は、本件再訂正発明に顧客吸引力がないことなどを示すものであり、推定覆滅事由として考慮すべきものである。

(イ)市場における競合品の存在

被告各製品の販売価格は、原告の同種製品のそれと同等であり、被告が本件再訂正発明を実施したことにより価格競争上優位に立ったがゆえに販売することができたという事情はない。

また、本件再訂正発明の実施品であるライン光照射装置と実施品ではないライン光照射装置とは、照明器具としての性能に変わりがないことから、ライン光照射装置であれば全て被告各製品及び原告が販売する製品の競合品となることに鑑みると、仮に、被告各製品が販売されなかったとしても、被告各製品の販売数量に対応する需要が、別紙競合品(被告主張)一覧表(なお、同表の一番左の欄は、被告各製品の番号及び乙37記載の資料番号である。)記載の原告が販売する製品以外のライン光照射装置にも向かったであろうといえる。

(ウ)共有権者の存在

a 三菱化学が有した損害賠償請求権の譲渡

否認する。

b 三菱化学の損害分の控除について

共有に係る特許権の一方の共有者が不実施で、他方の共有者のみが実施している場合に、実施している共有者に特許法102条2項により算定された損害額全額の賠償請求を認め、不実施の共有者にも同条3項により算定された損害額の賠償請求を認めると、侵害者は、特許権が単独保有の場合と比較して、負担すべき損害額が過大となり、損害の公平な分担の理念に反する。したがって、原告は、三菱化学と本件特許権を共有していた期間(H24.6.18~H26.11.21)における被告の販売分に係る損害額については、持分割合(本件においては50%)に応じて案分した額の限度で請求できるにすぎない。

また、原告は、三菱化学が本件再訂正発明を実施していないことについて、立証していない。

(2)弁護士及び弁理士費用

否認ないし争う。

12 争点4(消滅時効の成否)

(被告の主張)

原告は、遅くとも平成14年頃から被告による商品展開の動向に関心を持っており、被告各製品それぞれの販売直後にその実機を入手して構成を把握し、本件特許権侵害の事実を認識するに至っていた。したがって、本件訴訟を提起した平成29年8月3日から3年前の時点である平成26年8月3日以前の販売分、すなわち本件期間1における被告製品1~6の販売分に係る損害賠償請求権については、時効により消滅する。そこで、被告は、平成31年1月31日付け準備書面(被告第15)の送付によって、原告に対し、この消滅時効を援用するとの意思表示をする。

(原告の主張)

原告が被告各製品による本件特許権侵害の事実を認識するに至ったのは、平成29年1月頃以降である。そうすると、本件訴訟を提起した同年8月3日までに時効期間は完成していない。

したがって、平成26年8月3日以前の販売分、すなわち本件期間1における被告製品1~6の販売分に係る損害賠償請求権は、時効により消滅していない。

13 争点5(被告の不当利得額)

(原告の主張)

仮に、本件期間1における被告製品1~6の販売分に係る損害賠償請求権が時効により消滅しているとしても、被告は、本件期間1に被告製品1~6を販売して得た利益、すなわち本件再訂正発明の実施に対して受けるべき金銭の額を不当利得として、原告に返還する義務を負う。その額は、以下のとおりである。また、被告は悪意の受益者であるから、その利得に利息を付して原告に返還する義務を負う。

(1)被告製品1~6の本件期間1における売上額

被告製品1~6の本件期間1における売上額は、●(省略)●円である。実施料を算定するに当たって実施料率を乗じる対象は、売上高とするのが一般的であり、削減できたコストの額を基礎とするのは一般的ではない。

(2)実施料率

本件特許が属する技術分野における実施料率別契約件数においては5%が最頻値とされていること、実施に対し受けるべき料率は通常の実施料率よりも高率となるであろうことに鑑みると、本件における実施料率は5%を下らない。

(3)小括

以上によれば、被告が、本件期間1に被告製品1~6を販売して得た不当利得の額は、●(省略)●円となる。

(被告の主張)

ア 被告製品1~6の本件期間1における売上額が●(省略)●円であることは、認める。

イ 原告は、本件期間1における被告製品1~6の全売上額に実施料率(5%)を乗じて不当利得の額を算定している。しかし、前記のとおり、赤色LED搭載製品の販売実績が乏しいことに鑑みると、白色LED搭載製品及び青色LED搭載製品を含めた被告製品1~6の合計売上額に基づいて不当利得の額を算定するのは相当ではない。赤色LED搭載製品を製造するに当たってコストを削減できた価額を基礎として、不当利得の額を算定すべきである。

また、本件再訂正発明の技術的意義や進歩性の程度、被告各製品の販売に対する寄与の程度、本件特許権が共有に係るものであったことに鑑みると、本件における実施料率は、販売額の0.1%が限度である。