平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(その3)

投稿日: 2017/02/01 4:02:53

今日も平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第14006号)について検討します。

「その1」で書いたように本件の特許は親出願(特願2010-011225)から見るとそれぞれ第2世代(本件特許1:特願2013-081080)及び第3世代(本件特許2:特願2013-154475)の分割出願に当たります。

これら分割出願、特許無効審判及び1審の関係をまとめると以下の表のようになります。 

 

以下、この表からの推測です。

原告は2012年から2013年くらいに本件特許の親出願に開示されている内容に近い製品が存在していることに気づきました。しかし、第0世代の特許は請求項を限定しすぎていたために製品が技術的範囲に属さず、第1世代の出願は拒絶無しで登録になったので補正する機会もありませんでした。

その後、特許査定となった第1世代の分割出願から第2世代の分割出願を行い、早期審査請求して権利化を進め、同時にこの第2世代の分割出願から第3世代の分割出願を行い、こちらも早期審査請求して権利化を進めます。どちらも特許査定となり登録となった2013年9月13日以降に被告に警告状を送付しました。

その後、当事者間で書面のやり取りや面談を行ったが決裂したために、被告が特許無効審判を請求し、原告が侵害訴訟を提起しました。

原告は訴訟をしながらも常に第3世代や第4世代の分割出願を維持しています。これは戦略的に行っているものと思われます。まだ特許請求の範囲が変更可能な分割出願を維持することで、被告に対するプレッシャーになるとともに、裁判外で当事者間の和解をする場合にも有利に働く可能性があります。

この事件は原告が分割出願を利用して上手に戦ったという印象を持ちました。たまには事件の背景を想像するのも楽しいものです。