掘削装置事件(その2)
投稿日: 2017/06/06 23:24:34
今日も引き続き平成25年(ワ)第10958号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。
2.発明の内容
(1)本件特許1(特許第2981164号)
【請求項1】(本件訂正発明1の1)
A 昇降可能に支持される回転駆動装置(1)と、
B 先端に掘削ビット(27)を有し、回転駆動装置下部の回転駆動軸(3)に一体回転可能に連結される掘削軸部材(2)と、
C 掘削軸部材(2)に套嵌されると共に、回転駆動装置の機枠(6)に一体的に垂下連結される固定ケーシング(5)と、
D 掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼からなる一対の支持部材(19)上に載設固定され、固定ケーシング(5)を上下方向に自由に挿通させるが該固定ケーシング(5)の回転を阻止することができるケーシング挿通孔(8)を有するケーシング回り止め部材(7)と、
E からなる掘削装置。
【請求項2】(本件訂正発明1の2)
F 固定ケーシング(5)は円筒状のケーシングからなり、
G この円筒状固定ケーシング(5)の外周面に係合用突条部(17)が長手方向全長に亘って条設されており、
H ケーシング回り止め部材(7)は、前記円筒状固定ケーシング(5)が挿通可能な円形孔部(8a)と、この円形孔部(8a)の内周部に凹設されていて前記係合用突条部(17)が挿通可能な係合用凹部(8b)とからなるケーシング挿通孔(8)を備えてなる、
I 請求項1に記載の掘削装置。
(2)本件特許3(特許第3640371号)
【請求項1】(本件発明3)
A 先端に掘削ビット(10)を挿着したインナーロッド(9)を回転駆動装置(6)に連結し、重機のブーム先端から懸垂状態で当該回転駆動装置(6)を吊下げ、上記インナーロッド(9)の外周側に設けたアウターケーシング(7)の回転を拘束しながら、当該回転駆動装置(6)の回転力を用いて掘削を行う穿孔工法に用いる回転反力支持装置において、
B 上記回転駆動装置(6)に連結されたインナーロッド(9)の外周に、着脱自在に併設したアウターケーシング(7)と、
C 上記アウターケーシング(7)の外側面であって軸方向に固設された第1の反力プレート(12)と、
D 上記回転駆動装置(6)に設けられ、上記アウターケーシング(7)の第1の反力プレート(12)に対して干渉するようになっている第2の反力プレート(12´)と、
E 穿孔芯を確保するための枠組み状のガイドフレーム(13)に設けられ、上記アウターケーシング(7)の径に相当するスパンを介して当該ガイドフレーム(13)に固設されている反力アーム(18)と、を有しており、
F 上記アウターケーシング(7)と上記回転駆動装置(6)とは、互いに固定連結されておらず、
G 上記アウターケーシング(7)に設けられた第1の反力プレート(12)に対しては、上記回転駆動装置(6)側に設けた第2の反力プレート(12´)が、上記インナーロッド(9)の回転方向において自在に係合するようになっており、
H 上記回転駆動装置(6)によって上記インナーロッド(9)に回転力を付与し始めた際に、当該回転駆動装置(6)の第2の反力プレート(12´)が、上記アウターケーシング(7)の第1の反力プレート(12)に対して係合し、
I 上記回転駆動装置(6)によって上記インナーロッド(9)に回転力を付与している間、上記アウターケーシング(7)の第1の反力プレート(12)を、穿孔芯を確保する上記ガイドフレーム(13)に固設された反力アーム(18)に係合させ、それによって上記回転駆動装置(6)の反力を確保するようになっている
J ことを特徴とする穿孔工法用回転反力支持装置。
(3)本件特許4(特許第4553629号)
【請求項1】(本件訂正発明4)
A 地盤を掘削するための掘削ビット(55)をハンマシャフト(53)の先端に備えたダウンザホールハンマ(50)と、
B 前記ハンマシャフト(53)の一端が連結され、前記ダウンザホールハンマ(50)を回転駆動するための回転駆動装置(60)と、
C 前記回転駆動装置(60)から垂下し、前記ダウンザホールハンマ(50)を囲繞するように設けられ、下端側から前記ダウンザホールハンマ(50)の掘削ビット(55)が突き出るように形成されたケーシング(70)と、
D 前記ダウンザホールハンマ(50)の掘削ビット(55)によって削り出される掘削土が吹き上げられた際に通過するようになっており、前記ケーシング(70)の内壁と前記ダウンザホールハンマ(50)との間に形成された通路(80)と、
E 前記ケーシング(70)に形成され、前記通路(80)を通り抜けて吹き上げられた掘削土を前記ケーシング(70)の外側に排出するための排土口(73)と、を有する掘削装置(5)を用いた掘削施工において排出される前記掘削土が、当該掘削装置(5)の周囲に飛散するのを防止するための掘削土飛散防止装置であって、
F 前記掘削土飛散防止装置は前記ケーシング(70)の少なくとも一部を囲繞するように、前記回転駆動装置(60)から前記ハンマシャフト(53)に沿って垂下した状態で取り付け可能に構成されたを含んでおり、筒状部(11)は蛇腹状の側壁を有するように形成され、自在に伸縮できるように構成され、
G また、前記掘削土飛散防止装置は前記排土口(73)を介して前記ケーシング(70)の外側へ排出された前記掘削土が衝突するようになっている衝突部(13)を含んでおり、
H 前記排土口(73)から所定距離離隔した状態で、前記衝突部(13)が前記ケーシング(70)の外側から前記排土口(73)を臨むように設けられ、
I 前記掘削土飛散防止装置は、さらに、蛇腹状の側壁を有する前記筒状部(11)の下端近傍に、その一端が連結されたワイヤー(19)と、少なくとも掘削作業中において、垂下された状態の前記筒状部(11)の上端から下端までの長さを調整するために、前記ワイヤー(19)を自在に巻き取りまたは繰り出すことができるように構成されており、前記ワイヤー(19)の他端が連結されている巻き取り装置(17)と、を有しており、
J 前記巻き取り装置(17)によって前記ワイヤー(19)が巻き取られた際には、巻き取りに伴って前記筒状部(11)が縮退し、前記巻き取り装置(17)によって前記ワイヤー(19)が繰り出された際には、繰り出しに伴って前記筒状部(11)が排土口(73)のみならずケーシング(70)を取り囲むことができる筒状部(11)が伸展するようになっていて、サイレンサーとして機能するようにもした、
K 前記衝突部(13)に衝突した前記掘削土は、当該掘削装置(5)の周囲に飛散することなく、前記衝突部(13)と前記排土口(73)との間の間隙を介して、自重によって前記衝突部(13)の下方へ向かって落下するようになっている
L ことを特徴とする掘削土飛散防止装置。
3.争点
(1) 被告装置1は本件訂正発明1の1及び1の2の技術的範囲に属するか
① 本件訂正発明1の1及び1の2に対応した被告装置1の構成
② 本件訂正発明1の1(構成要件C及びDの充足性)
ア 構成要件Cにつき、「掘削軸部材に套嵌されると共に、回転駆動装置の機枠に一体的に垂下連結される固定ケーシング」の充足性
イ 構成要件Dにつき
a 「ケーシング回り止め部材」の充足性
b 現場⑦について「掘削地盤上の掘孔箇所を挟んでその両側に水平に敷設された長尺状の横向きH形鋼」の充足性
c 均等侵害の有無
③ 本件訂正発明1の2(構成要件F、G、H及びIの充足性)
ア 構成要件Fにつき、「固定ケーシング」の充足性
イ 構成要件Gにつき、
a 「長手方向全長に亘って」の充足性
b 均等侵害の有無
ウ 構成要件Hにつき、「前記係合用突条部が挿通可能な」の充足性
エ 構成要件Iの充足性
(2) 被告装置2は本件発明3の技術的範囲に属するか
① 本件発明3に対応した被告装置2の構成
② 構成要件Aにつき、「穿孔工法に用いる・・・装置」の充足性
③ 構成要件Dにつき
ア 現場①ないし③及び⑦につき、「第2の反力プレート」の充足性
イ 現場④ないし⑥につき、「干渉」の充足性
④ 構成要件Eにつき、
ア 「反力アーム」の充足性
イ 均等侵害の有無
⑤ 構成要件Hにつき、「第1の反力プレート」及び「第2の反力プレート」の充足性
⑥ 構成要件Iにつき、「第1の反力プレートを・・・反力アームに係合」の充足性
(3) 被告装置3は本件訂正発明4の技術的範囲に属するか
① 本件訂正発明4に対応した被告装置3の構成
② 構成要件E、G、H、J及びKにつき、「排土口」の充足性
③ 構成要件G、H及びKにつき、「衝突部」の充足性
④ 構成要件I及びJにつき、「ワイヤー」の充足性
(4) 損害発生の有無及びその額
① 特許法102条2項の適用の可否
② 原告の損害額