カーナビ事件2

投稿日: 2017/07/01 1:03:10

今日は以前投稿したカーナビ事件(平成28年(ネ)第10096号 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第25928号))の特許無効審判の審決取消訴訟の判決について少し検討します。

 

1.各手続の時系列の整理

① 青字で記入した部分が本判決で明らかになった事項です。

② 知財高裁の裁判官は侵害訴訟の控訴事件と同じでした。したがって、両方を同時に進めて2017年4月25日に同時に口頭弁論を終結したものと考えられます。

 

2.検討

(1)侵害訴訟と審決取消訴訟の判決言渡しの日にずれがありますが、侵害訴訟は一審、二審ともに原告の訴えは非抵触という理由で棄却されているので影響はないと思います。

(2)既に侵害訴訟で請求棄却されているのに審決取消訴訟を取り下げずに判決を求めた点に疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、本事件は特許無効審判における請求不成立(特許維持)という審決に対して、審判請求人(侵害訴訟の被告)が知財高裁に審決の取り消しを求めた事件です。したがって、被告の立場からすると、侵害訴訟の控訴審で再び非抵触という判断を得ても特許権者が最高裁に上告することで、非抵触という非侵害理由が覆る可能性も考慮しなければなりません。そのため知財高裁で審決を覆して特許無効という判決を求めたと思われます。もっとも口頭弁論終結時点で裁判官から特許は無効にならないという心証を得ていた可能性もあります。その場合でも、非抵触という判断が覆る可能性が0ではないのと同様に特許無効という判断が覆る可能性も0ではないので上告すると思います。