マグボトル

投稿日: 2017/03/04 23:14:14

今日は平成27年(ワ)第8755号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。この事件における特許はマグボトルに関するものです。原告は株式会社上海調林ですが、特許公報を見たら特許権者が株式会社タフコになっていました。特許の登録後に承継されたようです。一方、被告の株式会社ドウシシャですが幅広い分野の製品を扱っています。家電量販店で同社製のシーリングライトを見たことがありますが、マグボトルまで扱っているとは思いませんでした。

この事件の特徴は以下の通りです。

① 特許の有効性について、東京地裁における侵害訴訟と特許庁審判部における特許無効審判で判断が分かれました。侵害訴訟では被告製品が特許に抵触していることは認められましたが、本件特許は無効にされるべきものであるから、原告は被告に対して本件特許権を行使することができないと判断されています。一方、特許無効審判では、同じ証拠に基づいて審理した結果、特許は無効にならないと判断されています。

② 「このストッパは、容器本体の上下方向にスライド移動するように構成すると共に、ロック解除ボタンに接近スライド移動することでこのロック解除ボタンに当接してロック解除ボタンの押動作動を阻止する構成」の解釈において、ストッパをスライド移動させた結果ロック解除ボタンに当接し、それによりロック解除ボタン自体を押すことができなくなってロック解除阻止が可能となる構成だけでなく、ストッパをスライド移動してもロック解除ボタンとの間に隙間が存在しているが、ロック解除ボタン押すとこれがストッパに当接し、ロック解除阻止が可能となる構成も含まれると判断しています(一部クレームの文言を変更しています)。

まずは各手続を時系列に従って整理します。

 

1.各手続の時系列

審査段階で情報提供を受け、登録後も閲覧請求されていることからかなり注目度が高い特許と言えます。

 

2.特許発明の内容(請求項1のみ検討)

【請求項1】

1A 容器本体(1)の上部に筒状の飲口部(2)を突設し、

1B この飲口部(2)を閉塞する閉塞蓋(3)を容器本体(1)の上部に枢着部(7)により起伏回動開閉自在に設けると共に、

1C この閉塞蓋(3)は開放起動する方向に回動付勢されるように構成し、

1D この閉塞蓋(3)に係止して閉塞蓋(3)を閉塞状態に保持する係止部(4)を前記容器本体(1)の上部であって前記枢着部(7)の反対側部に設け、

1E この係止部(4)の閉塞蓋(3)への係止状態を押動することで解除する解除押動部(5)を容器本体(1)に設けて、この解除押動部(5)を押動すると閉塞蓋(3)が自動開放起動するように構成した飲料用容器において、

1F 前記容器本体(1)の上部に取付用凹所(18)を設け、

1G 前記解除押動部(5)に前記係止部(4)を一体に形成すると共に、この解除押動部(5)を前記取付用凹所(18)に配して枢着して、この解除押動部(5)を押動することで係止部(4)が起動回動して前記閉塞蓋(3)への係止状態が解除されるように構成し、

1H 前記解除押動部(5)に対して接離スライド移動するストッパ部(6)を設け、

1I このストッパ部(6)は、前記容器本体(1)の上下方向にスライド移動するように構成すると共に、前記解除押動部(5)に接近スライド移動することでこの解除押動部(5)に当接して解除押動部(5)の押動作動を阻止する構成とし、

1J この解除押動部(5)とストッパ部(6)とは前記容器本体(1)の上部位置に設けて、この容器本体(1)を携帯した手の指でストッパ部(6)をスライド操作した後、同じ指で解除押動部(5)を押動操作し得るように構成したことを特徴とする飲料用容器。


3.被告製品

被告製品は判決文に別紙として添付されていますが、被告のホームページにも掲載されていたので、そちらの写真を引用します。

なお判決文中に被告製品の構成の説明として次の記載があります。「被告製品1は、飲料用容器(水筒)である。ストッパ部を容器本体の下方へスライド移動させると、解除押動部の押動操作が可能となって閉塞蓋を開放することができる。閉塞蓋を閉じた状態でストッパ部を容器本体の上方へ(解除押動部に向けて)移動させると、解除押動部の押動操作が不能となって閉塞蓋を開放することができなくなる。ストッパ部を解除押動部に向けてスライド移動させた場合、ストッパ部は解除押動部の裏側に配されることになるが、ストッパ部と解除押動部の間には0.1~0.5mm程度の隙間(クリアランス)ができる。」

4.原告・被告の主張

(1)抵触性

① 構成要件1Aの充足性

(被告の主張)

「筒」とは「円く細長くて中空になっているもの。管。」を意味するから、構成要件1Aの「筒状」とはこのような形状のものをいうと解される。被告製品1の飲口部(第2蓋本体部)は、容器本体とおおよそ同径の突出壁、突出壁の内側で上下方向の中央に形成される底面及び飲料取出口から構成させる。この突出壁は、ヒンジ側では低く、ロック機構側に行くほど徐々に高くなるように形成されている。したがって、上記第2蓋本体部は、細長くなく、中空にもなっておらず、全体の形状は筒からかけ離れたものとなっているから、「筒状」を充足しない。

また、上記飲料取出口は、第2蓋本体部の底面の一部に形成された穴でしかないから「突設」したものでなく、ラッパ飲みのために唇を添える箇所もないので、「飲口部」に相当するものでもない。上記突出壁は、飲料が漏れることを防止する蓋にすぎないから、「飲口部」でない。

以上によれば、被告製品1は構成要件1Aを充足しない。

(原告の主張)

被告製品1の飲口部は大径であるが、その周壁に口を添えて飲むことができるから、これが「筒状の飲口部」であることは明らかである。

② 構成要件1Hの充足性

(被告の主張)

「接離」とは接触したり離れたりすることをいうところ、被告製品1及び2のストッパ部はスライド移動させても解除押動部に接触せず、ストッパ部と解除押動部の間にはクリアランスが存在するから、構成要件1Hを充足しない。

(原告の主張)

被告製品1及び2のストッパ部はその解除押動部に対して接近方向及び離反方向にスライド移動するから、「接離スライド移動する」ということができる。

③ 構成要件1Iの充足性

(被告の主張)

構成要件1Iの「接近スライド移動することで」は、ストッパ部と解除押動部の「当接」の条件を「解除押動部に接近スライド移動すること」に限定し、「当接して」の文言は、ストッパ部を解除押動部に当接させ、その両者の摩擦力で押動操作阻止状態を保持することを意味する。したがって、本件発明1及び2は、ストッパ部のスライド移動によって、解除押動部がそのままの状態で、ストッパ部が自ら解除押動部に当接する(接する)構成のものに限定される。

また、本件明細書には、ストッパ部自体が、接離・移動スライドすることにより解除押動部に直接に「(圧接)」「当接し(接し)」、それによって解除押動部を「押動操作不能」「押動不能」とする構成、「内側に押動できないように保持」する構成のもののみが開示されている。

さらに、原告は、本件特許の出願経過において、拒絶理由通知(乙1の1)に対して平成19年12月10日付け意見書(乙1の4)を提出し、本件発明1及び2は引用例2(乙1の3)の炊飯器のロック構造を応用したものであると主張した。このロック構造はまさにストッパ部が解除押動部に移動して自ら当接しロックする構造のものであり、クリアランスを設けるような構成は含まれていない。したがって、ストッパ部がスライドしても解除押動部に自ら接触することがない構成(クリアランスが存在する構成)は意識的に除外されているというべきである。

一方、被告製品1及び2は、クリアランスを設けることにより、ストッパ部を解除押動部に対して安定的に阻止位置に保持し、解除押動部が不用意に作動し解除しないようにすることができること、ストッパ部にクリック感を持たせることなどの本件発明1及び2が予定していない顕著な作用効果を奏する。

以上によれば、被告製品1及び2は構成要件1Iを充足しない。

(原告の主張)

構成要件1Iは、その文言上、ストッパ部を解除押動部に接近スライド移動又は上方へスライド移動させることで、解除押動部を押動作動させようとしてもストッパ部と当接して押動作動が阻止される構成を示すものであって、ストッパ部と解除押動部の間にクリアランスが存在する構成は除外されていない。

(2)有効性

当事者間の主張は省略します。

 

5.裁判官の判断

(1)抵触性

① 構成要件1Aの充足性

本件発明1及び2の飲口部は「筒状」であるとされるところ、「筒」とは「円く細長くて中空になっているもの。管」(乙14)をいうものである。そして、本件発明1及び2の飲料用容器が飲口部にそのまま口を付けて飲むことができるものであること(本件明細書の段落【0001】、【0010】)からすれば、この飲口部は、太さや長さに格別の限定はなく、筒状の形態であって容器本体から突き出たものをいうと解される。

被告製品1の容器本体の上部にある飲料の出入口部分の形状は別紙図面記載1のとおりであり、容器本体とほぼ同径で、ヒンジ側とロック機構側で高さが異なった平面視ほぼ円形の突出壁が容器本体の上部に設けられている。そうすると、この部分の全体的な形態は筒状であって、これが容器本体から突き出ているとみることができるから、被告製品1においては筒状の飲口部が突設されていると認められる。

したがって、被告製品1は構成要件1Aを充足するというべきである。

② 構成要件1H及び1Iの充足性

被告製品1は、そのストッパ部を解除押動部に向けスライド移動すると、ストッパ部と解除押動部が直ちに当接することなく両者の間にクリアランスができるが、解除押動部を押動するとこれがストッパ部に当接してそれ以上の押動操作が不可能となり、閉塞蓋を開放することができなくなる。

原告は、このようにクリアランスが存在する場合であっても構成要件1H及び1Iを充足すると主張するのに対し、被告は、本件発明1はクリアランスが存在する構成を含んでいないから被告製品1は上記各構成要件を充足しないと主張するので、以下検討する。

まず、本件発明1の特許請求の範囲の記載をみるに、本件発明1については「ストッパ部は、・・・前記解除押動部に接近スライド移動することでこの解除押動部に当接して解除押動部の押動作動を阻止する構成」(構成要件1I)と記載されている。この記載は、接近スライド移動の完了と同時に当接する、すなわち、ストッパ部と解除押動部の間にクリアランスは存在しないとも、接近スライド移動等の結果として押動作動が阻止され、閉塞蓋が開放されない状態となれば足り、ストッパ部と解除押動部の間にクリアランスが存在してもよいとも解釈することができる。

本件発明1のストッパ部は、スライド移動することで解除押動部の押動可能状態と押動不能状態を切り替えるものであるから、押動作動を阻止する構成として、ストッパ部がスライド移動することにより解除押動部に直ちに当接し、それによって解除押動部を押動不能とする構成に限定されることはなく、ストッパ部と解除押動部との間にクリアランスが存在しても、解除押動部を押動しようとするとこれがストッパ部に当接し、押動作動が阻止されるものであれば、構成要件1H及び1Iを充足するというべきである。

そして、被告製品1は、ストッパ部と解除押動部の間にクリアランスがあるものの、ストッパ部をスライド移動することで解除押動部の押動可能状態と押動不能状態を切り替えることができ、ストッパ部と解除押動部は当接可能な状態となっているから、上記各構成要件を充足するものと認められる。

被告は、(ⅰ)本件明細書には、ストッパ部がスライド移動することにより解除押動部に直接当接し、それによって解除押動部を押動不能とする構成(クリアランスが存在しない構成)のみが開示されている、(ⅱ)原告は、本件特許の出願経過においてクリアランスが存在する構成を意識的に除外した、(ⅲ)被告製品1及び2は、本件発明1及び2が予定していない顕著な効果を奏することからすれば、クリアランスが存在する構成は含まれないと解すべきである旨主張するが、以下のとおり、いずれも採用することができない。

(ⅰ)上記記載の通り。

(ⅱ)本件特許の出願経過において原告が提出した意見書(乙1の4)の説明をみても、解除押動部を押動不能状態とする構成につき、ストッパ部と解除押動部の間にクリアランスが存在しない構成に限定する旨の記載はない。また、拒絶理由通知(乙1の1)で引用された公知文献においても、クリアランスが存在するかどうかは明確でない。そうすると、本件特許の出願経過に照らしクリアランスが存在する構成が除外されたということはできない。

(ⅲ)本件発明1は、解除押動部の誤操作を確実に防止すること、片手で容易に操作可能であることといった効果を奏するものであるところ、被告製品1及び2についても、その構成からすればこれらの効果を奏すると認められるから、被告製品1及び2につき被告が主張するような効果を奏するとしても、構成要件1H及び1Iの充足性の判断を左右しない。

(2)有効性

乙1の2:特開2002-087447号公報(拒絶理由通知で挙げられた引用文献1、無効審判請求書で挙げられた証拠甲3)

乙3:特開2002-209764号公報(無効審判請求書で挙げられた証拠甲4)

乙4:特開2002-065478号公報(無効審判請求書で挙げられた証拠甲5)

乙1の3:実公昭60-024246号公報(拒絶理由通知で挙げられた引用文献2、無効審判請求書で挙げられた証拠甲6)

本件発明1と乙1の2発明の相違点


① 本件発明1においては、解除押動部が取付用凹所に枢着して係止部が起動回動するのに対し、乙1の2発明においては、押しボタンが枢着、回動しない点(相違点1-1)

② 本件発明1においては、ストッパ部がスライド移動することで解除押動部に当接して押動作動を阻止するのに対し、乙1の2発明においては、押しボタン隠蔽体がスライド移動することで押しボタンに当接するのか明確でない点(相違点1-2)

③ 本件発明1においては、容器本体を携帯した手の指でストッパ部をスライド操作した後、同じ指で解除押動部を押動操作し得るように構成したのに対し、乙1の2発明はこのような操作をし得るか否か明示されていない点(相違点1-3)

で相違し、その余の点で一致することは、被告は明らかに争っていない。そこで、本件発明1の進歩性について以下検討する。

「相違点1-1」

乙3公報には、容器本体の上部にある支軸81に支持されたロック部材8の係止部82が起動回動する構成が開示されているところ(段落【0012】、【0013】、【図4】)、ロック部材8は本件発明1の解除押動部、係止部82は本件発明1の係止部にそれぞれ相当すると認められるから、乙3公報には相違点1-1に係る構成が開示されているということができる。

そして、乙3公報に記載された発明は蓋をワンタッチで開いて容器本体内の飲料を直接飲むタイプの飲料用容器の栓体に関するものであって(乙3公報の段落【0001】)、乙1の2発明(乙1の2公報の【0001】~【0005】、【図1】、【図2】)や本件発明1(本件明細書の段落【0001】)と同じタイプの飲料用容器に関するものであることからすれば、乙1の2公報に乙3公報を組み合わせることは容易であると認められる。

「相違点1-2」

乙4公報には,係止手段21を係止解除状態にして直飲みできる状態となるようにする直飲みキー32を有し,直飲みキー32にはこれを操作できないようにロックするロック手段33が働かされている構成、具体的には、ロック手段33であるロック部材57又はロック板72が水平方向にスライド移動し、直飲みキー32の下部に入り込むことで直飲みキー32の押下げ操作を阻止する構成が開示されている(段落【0025】、【0035】、【0041】、【0043】、【0046】、【図1】、【図11】、【図17】、【図20】)。そして、直飲キー32は本件発明1の解除押動部、ロック手段33は本件発明1のストッパ部にそれぞれ相当し、直飲みキー32の押下げ操作は、ロック手段33が直飲みキー32の下部に入り込み、これと物理的に接触することで阻止されると認められるから、乙4公報には相違点1-2に係る構成が開示されているということができる。

そして、乙4公報に記載された発明は直飲みできるタイプの飲料用容器に関するものであって(乙4公報の段落【0001】)、上記イのとおり、乙1の2発明や本件発明1と同じタイプの飲料用容器に関するものであることからすれば、乙1の2公報に乙4公報を組み合わせることは容易であると認められる。

「相違点1-3」

乙1の2公報の記載(【請求項5】、段落【0011】、【0027】、【0037】、【0042】、【図1】~【図3】)によれば、乙1の2公報には、押しボタン12を隠蔽するための押しボタン隠蔽体13が蓋体3の側面に上下スライド自在に設けられている構成が開示されているところ、押しボタン隠蔽体13が押しボタン12を覆い隠すように近接した位置に配置されているという位置関係を考慮すれば、容器本体を携帯した手の指(親指)で押しボタン隠蔽体13を上方へスライド移動した後に、同じ指で押しボタン12を押動操作することができると認められる。したがって、相違点1-3は実質的な相違点に当たらないということができる。

(本件発明1の進歩性の有無)

以上のとおり、乙1の2発明との相違点1-1及び1-2に係る本件発明1の構成を想到することは容易であり、また、相違点1-3は実質的な相違点に当たらないということができる。これに加え、乙1の3公報は、炊飯容器に関するものであるが、相違点1-1及び1-2に係る本件発明1の構成、すなわち、解除押動部を取付用凹所に枢着して係止部を起動回動させるとともに、ストッパ部がスライド移動することで解除押動部に当接して押動作動を阻止するという構成を開示しており、これを飲料用容器に適用することを妨げる事情は見当たらない。そうすると、本件発明1は乙1の2発明及び上記各公知技術に基づいて容易に発明することができたと判断することが相当である。

 

6.感想

(1)審決と判決

本事件は特許庁審判部が担当した特許無効審判の結論は請求不成立(特許有効)、東京地裁が担当した侵害訴訟の結論は請求棄却(特許無効)、と判断が分かれました。特許無効審判については請求人(被告)により知財高裁に出訴されています。侵害訴訟についてはわかりませんが、特許庁が特許は有効と判断している以上原告が知財高裁に控訴している可能性が高いと思います。おそらく今後知財高裁でまとめて審理されるものと思います。

特許無効審判の審決と侵害訴訟の判決の両方に目を通しました。侵害訴訟の判決は、具体的な構成の相違や積極的に適用する理由の有無については全く触れず、特許発明と主引例の相違点と同じ作用効果が働く構成がそれぞれの副引例に開示されており、同じタイプの製品なので組み合わせることができるとあっさり結論付けています。一方、特許無効審判の審決は具体的な構造上の相違点を検討したうえで組み合わせが困難であると判断しています。そのため特許庁の審決の方が東京地裁の判決に比べ説得力があるように思いました。

(2)被告の意図

被告が意見書の記載に基づき意識的除外を主張しましたが、これには少し無理があるように感じました。ただしこの意見書で原告は「本出願人は、引用例2のようなスライド式ロック構造があることは十分に承知しており、本発明は、まさにこの炊飯器用として用いられていたロック構造を、水筒などの飲料用容器の解除押動部のロック構造に応用した点に画期的な発明創作のポイントがあるのです。」と述べています。被告は、この意見書を証拠として提出することで、裁判官に対して本件特許発明が公知の技術を寄せ集めたに過ぎないという印象を持たせようとしたのかもしれません。

(3)「当接」の解釈

「このストッパ部(6)は、前記容器本体(1)の上下方向にスライド移動するように構成すると共に、前記解除押動部(5)に接近スライド移動することでこの解除押動部(5)に当接して解除押動部(5)の押動作動を阻止する構成」における「当接」の解釈はスライド移動の結果として当接する構成に限定されず、スライド移動の結果として当接していなくても押動作動を阻止する際に当接する構成も含まれるとなりました。本件が最初からそのような意図で書かれていたのかわかりませんが、第三者としては悩ましい文言です。明細書に詳しく書いてあれば良いのですが、そうでない場合にはサポート要件違反との関係で広く解釈するか狭く解釈するか悩みます。基本的には広く解釈すると無効になるとか、意識的除外が存在するとかの理由がなければ狭く解釈できない、と考えることになり、サポート要件違反を前面に出して判断はしにくいでしょう。