平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(その2)

投稿日: 2017/01/31 1:09:32

今日も平成28年(ネ)第10047号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第14006号)について検討します。

まずは特許の内容の確認です。前回書いたように地裁・高裁ともに特許発明2(特許第5362931号の請求項3)についてしか判断していないので、この特許発明のみ説明します。

 

1.特許第5362931号(分説は地裁判決に準ずる。括弧付き番号は筆者が加筆した。)

【請求項3】

a1 ハウジング(11)の周面に形成された嵌合面で互いに嵌合接続されるケーブルコネクタ(10)とレセプタクルコネクタ(50)とを有し、

a2 嵌合面が側壁面(20)とこれに直角をなし前方に位置する端壁面(12)とで形成されており、ケーブルコネクタ(10)が後方に位置する端壁面(12)をケーブル(C)の延出側としている電気コネクタ組立体において、

b ケーブルコネクタ(10)は、突部前縁(21´A)と突部後縁(21´B)が形成されたロック突部(21´)を側壁面(20)に有し、

c1 レセプタクルコネクタ(50)は、前後方向で該ロック突部(21´)に対応する位置で溝部前縁(57´A)と溝部後縁(57´B)が形成されたロック溝部(57´)を側壁面(20)に有し、

c2 該ロック溝部(57´)には溝部後縁(57´B)から溝内方へ突出する突出部(59´)が設けられており、

ケーブルコネクタ(10)は、前方の端壁面(12)に寄った位置で側壁に係止部(22)が設けられ、レセプタクルコネクタ(50)は、前後方向で上記係止部(22)と対応する位置でコネクタ嵌合状態にて該係止部(22)と係止可能な被係止部(60)が側壁に設けられており、

e コネクタ嵌合過程にて上記ケーブルコネクタ(10)の前端がもち上がって該ケーブルコネクタ(10)が上向き傾斜姿勢にあるとき、上記ロック突部(21´)の突部後縁(21´B)の最後方位置が、上記ケーブルコネクタ(10)がコネクタ嵌合終了姿勢にあるときと比較して前方に位置し、

f 上記ロック突部(21´)が上記ロック溝部(57´)内に進入して所定位置に達した後に上記上向き傾斜姿勢が解除されて上記ケーブルコネクタ(10)が上記コネクタ嵌合終了姿勢となったとき、上記ロック突部(21´)の突部後縁(21´B)の最後方位置が上記突出部(59´)の最前方位置よりも後方に位置し、

g 該ケーブルコネクタ(10)が後端側を持ち上げられて抜出方向に移動されようとしたとき、上記ロック突部(21´)が上記抜出方向で上記突出部(59´)と当接して、上記ケーブルコネクタ(10)の抜出が阻止されるようになっていることを特徴とする

h 電気コネクタ組立体。

  この請求項に対応する図面を掲載したファイルを下方に添付してあります。

  この発明はケーブルコネクタ(10)とレセプタクルコネクタ(50)を嵌合させたときに、ケーブルコネクタ(10)に設けられたロック突部(21´)の突部後縁(21´B)とセプタクルコネクタ(50)に設けられたロック溝部(57´)の溝部後縁(57´B)から溝内方へ突出する突出部(59´)が係合するというものです。

  

2.被告製品

参考のため被告製品と思われる商品の画像を掲載したファイルも添付していますが、おそらくこれだけで請求項3の各構成を備えているのか判断することは難しいと思われます。

3.抵触性・有効性について

判決を読む限り、被告が主張する非抵触主張及び無効主張は結構厳しいと思います。

この事件は判決の内容よりも原告(特許権者)が分割出願を多用しているので、次回はそちらの方を検討したいと思います。