ウェットティッシュ事件

投稿日: 2020/03/31 5:09:00

今日は、平成29年(ワ)第28189号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。本件の原告である株式会社フクヨーは、判決文によると、紙類及び化学薬品の加工並びに販売等を目的とする株式会社であり、ウェットティッシュ等を製造、販売しているそうです。一方、被告である株式会社PPJ及び株式会社Life-do.Plusは、いずれも、ウェットティッシュ等の紙加工品、衛生用品の企画、開発、製造、販売、輸出入等を目的とする株式会社であり、ウェットティッシュ等の紙加工品を製造、販売しているそうです。また、同じく被告である株式会社大創産業は、日用雑貨等の卸売業及び小売業等を目的とする株式会社であり、国内外において店舗「100円SHOPダイソー」をチェーン展開し、同店舗においてウェットティッシュ等の日用品を販売しているそうです。

 

1.検討結果

(1)本件発明は、折り畳んだシートの折った部分をかみ合わせるようにして積層し、1枚取り出すと次の1枚の一部が少し引っ張り出される状態となるようなウェットティッシュに関するものです。かなり簡単に説明すると、従来は二つ折りのシートの一方を中央付近でさらに外側に折り曲げたようなものを組み合わせて積層していましたが、このままだと一方向だけでもより大きなシートに変更した場合に全体的に大きくせざるを得ませんでしたが、本件発明は二つ折りのシートの他方をさらに長くし、これを外側に折り曲げることで、全体のサイズを変えずに従来よりも大きなシートを収納できるようにしたものです。

もう少し請求項の文言に合わせて書くと以下のようになります。本件発明では折りたたんだシート全体をシート状物、また、二つ折りにしたシート状物の一方を第2の中間片と第1の切片とし、この第1の切片をさらに外側に折り曲げています。さらに、シート状物の他方を第1の中間片とし、この第1の中間片からさらに延びる第2の切片を設けています。

(2)本件発明では第2の中間片の幅が第1の中間片の幅の略1/2であると規定されています。原告は略1/2とは1/2より短いものは広く含まれるように解釈すべき、と主張し、被告は第2の中間片の幅が、第1の中間片の幅に1/2を乗じた値の90%を下回る場合は第2の中間片の幅の略1/2とは認められないと解釈すべき、と主張しました。裁判所は、「「略」(ほぼ)とは、一般に、数値との関係で用いられる場合は「おおかた、おおよそ」といった意味を有し、正確又は完全にその数値と一致しないとしても、その数値と同様ということができる程度に近似することを表す語」と述べた上で、「第1の中間片の2分の1との乖離の幅が1割程度の範囲内にない場合は「略1/2」に該当しないと解するのが相当である」、と認定し、被告各製品は構成要件Cを充足しない、と認定しました。

(3)まず、原告の主張ですが、原告の主張の内容は、裁判所も指摘するように、本件明細書に書かれていない事柄でした。また、この争点について本件発明の主眼ではない、と述べるだけで、1/2よりも短いものを広く許容すべき技術的根拠が不明のままでした。主眼でないというのであれば、均等侵害にシフトするのかと思いましたが、そのような主張もありませんでした。次に被告の主張ですが、こちらも第1の中間片の幅に1/2を乗じた値の90%を下回る場合は第2の中間片の幅の略1/2とは認められない、とする根拠は特にありませんでした。

しかし、「略」という言葉の意味に最も近い、というか原告の主張には具体的な範囲が全く提示されていないので、具体的かつそれほど狭すぎない範囲を示した被告の主張が採用された、のではないでしょうか。。もともと「略」の意味を説明する義務は原告にあるので、原告がきちんと説明できなければ勝ち目は無いでしょう。明細書中で定義しておかなければならない事項です。

(4)それにしても出願当初から特許請求の範囲には「略1/2」と記載されていました。何のために限定したのか理解に苦しみますが、本件特許は特許無効審判及びその審決取消訴訟で一貫して無効である、と判断されているので、このような限定があろうがなかろうが結局は同じことになったと思います。

2.手続の時系列の整理(特許第3877000号)

① 本件特許は出願から登録までは株式会社岸製作所が保有しており、その後本件原告に譲渡されたものです。

3.本件発明

(1)本件発明

A 折り畳まれた複数枚のシート状物(10)が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、

B 上記シート状物(10)の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片(11)と、

C 上記シート状物(10)の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片(11)の略1/2の幅に、上記第1の中間片(11)に隣接して形成された第2の中間片(12)と、

D 上記第2の中間片(12)から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片(12)と略同じ幅に形成された第1の折片(13)と、

E 上記第1の中間片(11)から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片(11)の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片(11)の幅の1/2以下となる第2の折片(14)とを有するように折り畳まれ、

F 積層される上記シート状物(10)の偶数番目の上記シート状物(10)と奇数番目の上記シート状物(10)とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、

G 各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物(10)の上記第1の中間片(11)及び上記第2の中間片(12)によってできる谷部に、上記シート状物(10)の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物(10)の上記第1の中間片(11)及び上記第2の折片(14)によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。

(2)本件訂正発明

A 折り畳まれた複数枚のシート状物(10)が連続して取り出せるように積層されたシート状物(10)の積層体において、

A2 上記シート状物(10)はスパンレース不織布からなり、

B 上記シート状物(10)の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片(11)と、

C 上記シート状物(10)の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片(11)の略1/2の幅に、上記第1の中間片(11)に隣接して形成された第2の中間片(12)と、

D 上記第2の中間片(12)から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片(12)と略同じ幅に形成された第1の折片(13)と、

E’ 上記第1の中間片(11)から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片(11)の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片(11)の幅の1/2未満で、

E2 かつ、上記第1の折片(13)の幅より短い幅となる第2の折片(14)とを有するように折り畳まれ、

F 積層される上記シート状物(10)の偶数番目の上記シート状物(10)と奇数番目の上記シート状物(10)とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、

G 各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物(10)の上記第1の中間片(11)及び上記第2の中間片(12)によってできる谷部に、上記シート状物(10)の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物(10)の上記第1の中間片(11)及び上記第2の折片(14)によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。


4.被告製品説明書

a 上面中央に開口が設けられた包装物に内包され、折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して上記開口から取り出せるように積層された積層体であって、

a2 上記シート状物はスパンレース不織布からなり、

b 上記シート状物の各々は、図2に示すように、第1の中間片と、

c 上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、

d 上記第2の中間片から積層方向下側に折り返されて形成された第1の折片と、

e 上記シート状物の他方の一辺と平行な折れ線で上記第1の中間片から積層方向上側に折り返されて形成された第2の折片とを有するように折り畳まれてなり、

f 積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、図3に示すように、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、

g 図3に示すように、各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。


5.争点

(1)被告各製品が本件発明及び本件訂正発明(以下、併せて「本件発明等」という。)の各技術的範囲に属するか(争点1)

ア 構成要件Cの充足の有無(争点1-1)

イ 構成要件E(E’及びE2)の充足の有無(争点1-2)

ウ 作用効果不奏功の抗弁の成否(争点1-3)

(2)本件発明が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点2)

ア 乙A2発明に基づく新規性又は進歩性の欠如(争点2-1)

イ 乙A7発明に基づく進歩性の欠如(争点2-2)

ウ 実施可能要件違反(争点2-3)

エ 明確性要件違反(争点2-4)

(3)本件訂正により無効理由が解消するか(争点3)

(4)本件訂正発明が公然実施発明により無効にされるべきものと認められるか(争点4)

(5)原告の損害及びその金額(争点5)

6.争点に関する当事者の主張

1 争点1(被告各製品が本件発明等の各技術的範囲に属するか)について

(1)争点1-1(構成要件Cの充足の有無)について

(原告の主張)

被告各製品の第2の中間片は、シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、第1の中間片に隣接して形成されており、その幅は第1の中間片の幅の略1/2であるから、被告各製品は本件発明等の構成要件Cを充足する

ア 構成要件Cの解釈について

(ア)本件発明の構成要件Cは、「上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、」というものである(下記の図は本件明細書等の図2に符号についての説明を付したものである。)。

本件発明等は、包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供することを課題としているが、その解決手段として、第2の折片の幅を加減可能なものとして設定することで、シート全体を大きくしても、第2の折片以外の片の幅は変更せず、第2の折片の幅だけを広げることで、従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成できるという効果を有している。

また、本件発明等は、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを課題としているが、その解決手段として、端部に第2の折片を形成することで、シート状物積層体の端部近傍において、第2の折片の大きさ分だけ肉厚部分が形成され、積層体の躯体部分が補強されることになり、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる(本件明細書等の段落【0004】~【0009】)。

このような、本件発明等の課題及びその解決手段に照らすと、本件発明等の特徴的な点は、第2の折片という構成にあるということができる。

(イ)本件特許請求の範囲において、「所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さ」(構成要件B)、「第1の中間片の略1/2の幅」(構成要件C)、「第2の中間片と略同じ幅」(構成要件D)における「略」の意味は、それぞれ「同じ長さ」、「1/2の幅」、「同じ幅」であることを原則としつつも、寸法誤差、設計誤差あるいはシート状物の伸縮や歩留まり等の理由により完全に「同じ長さ」、「1/2の幅」、「同じ幅」とならない場合もあり得ることから、そのような場合も含まれることを含意した表現である

そして、本件発明等は、スパンレース不織布等の容易に伸縮する素材を用いることを前提とし、第2の中間片及び第1の折片の幅について、上記理由により目標値(被告ら主張の理想値)から誤差が生じた場合にも、第2の折片によりその誤差を吸収して、積層体が所望とする幅寸法になるように調整し、従来どおりの包装容器に収容することができることを目指すものであるから、本件発明等の構成においては、第1の中間片を所望とする積層体の幅寸法となるように調整することに主眼があるのであって、第2の中間片及び第1の折片の幅寸法が第1の中間片の幅の1/2であることに主眼があるのではない。

むしろ、本件発明等は、第2の中間片及び第1の折片の幅に誤差が生じたり、シート全体の幅が長くなったりすることを当然の前提として、そのような場合でも、積層体の幅を所望とする幅に維持することを課題とし、その課題を解決するために、その幅を加減できる第2の折片という構成を発明したものである。このことは、特許請求の範囲の文言において、所望とする積層体の幅寸法があり、第1の中間片、第2の中間片、第1の折片については全てに「略」が付され、第2の折片は加減できる幅として記載されていることからも明らかである。

(ウ)「略」の許容範囲については、第2の中間片及び第1の折片が所定の幅より長い場合と短い場合があり得る。

a 所定の幅より短い場合

例えば、シート状物の幅が約200mm、所望とする積層体の幅寸法(第1の中間片の幅)を約100mmとすると、本件発明をより限定した本件訂正発明において規定された「第2の折片の幅は、第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、第1の折片の幅より短い幅」であるという条件を満たしながら、第2の折片が調整できる範囲は、第2の中間片50~34mm、第1の折片50~34mm、第2の折片0~32mmとなるから、本件発明等の課題、解決手段及び効果に鑑みれば、かかる範囲内であれば「略」の許容範囲に含まれると解すべきである。

b 所定の幅より長い場合

本件明細書の段落【0028】は、第2の折片が第1の中間片の1/2以上の長さとなると、積層体の中央付近で各折片が重なり合って、全体の嵩高状態が、中央部が膨らみ不安定なものとなることを述べているが、同じことは第2の中間片にもいえ、第2の中間片の幅が第1の中間片の1/2より長い場合、右図のように中央部が膨らんだ嵩高状態となるため、本件発明等の課題を解決することができない。

一方、第2の中間片の幅が第1の中間片の1/2未満であれば、各片が積層体の中央付近で重なり合うことがなくなるため、積層体の中央付近が嵩高状態となることはない。

c 以上によれば、本件発明等における「略1/2」の語は、1/2を超える場合は含まないが、1/2より短いものは、前記aに規定する範囲で広く許容する意味と解釈すべきである

イ 被告各製品が構成要件Cを充足することについて

(ア)原告及び被告PPJらが被告製品②及び③を測定した結果(データの平均値)は、下記a~fのとおりであり、被告製品②の構成は、被告製品③のそれと変わらないものであって、いずれも、第2の中間片は、第1の中間片の略1/2の幅を有している。

a 被告製品②(原告測定:YRC24/3FM13:59)(甲25)

第1の中間片98mm、第2の中間片41mm、第1の折片43mm、第2の折片14mm

b 被告製品②(被告PPJ測定:YRC24/3FM16:40)(乙A39)

第1の中間片98.2mm、第2の中間片41.2mm、第1の折片42.8mm、第2の折片13.8mm

c 被告製品③(原告測定:YRF09/3FM08:12)(甲21)

第1の中間片98mm、第2の中間片41mm、第1の折片43mm、第2の折片16mm

d 被告製品③(原告測定:YRF09/3FM13:35)(甲22)

第1の中間片97mm、第2の中間片39mm、第1の折片42mm、第2の折片14mm

e 被告製品③(被告PPJ測定:YRF09/3FM08:12)(乙A26)

第1の中間片98.1mm、第2の中間片39.6mm、第1の折片42.4mm、第2の折片15.7mm

f 被告製品③(被告PPJ測定:YRF09/3FM13:35)(乙A27)

第1の中間片98.1mm、第2の中間片39.6mm、第1の折片42.0mm、第2の折片15.0mm

また、被告製品①についても、上記サンプルにおいてほぼ同じ結果が得られていることからすると、同じ構成であることが強く推認できる。

(イ)前記(ア)a~fにおける第2の中間片、第1の折片、第2の折片の数値は、いずれも前記ア(ウ)aの数値(第2の中間片50~34mm、第1の折片50~34mm、第2の折片0~32mm)の範囲内のものであり、また、各シートにおいて、第2の中間片の幅が、第1の中間片の幅の1/2より短いものは存在しても、これを超えるものは存在しない。

したがって、被告各製品における第2の中間片の幅は、本件発明等における課題、解決手段及び効果に沿った構成であるといえるから、第1の中間片の「略1/2」の幅を有しており、構成要件Cを充足する。

(被告らの主張)

被告各製品の第2の中間片の幅は第1の中間片の略1/2ではないから、被告各製品は、いずれも構成要件Cを充足しない

ア 被告各製品が構成要件Cを充足するためには、第2の中間片の幅が第1の中間片の幅の「略1/2」でなければならないが、「略」との記載は、特許発明の技術的範囲を不確定にさせる表現であるから、その解釈に当たっては、技術的範囲を不当に拡張させて公示の名宛人である公衆に不利益を及ぼすべきでない。

また、本件発明は、第2の折片が設けられていることにより、その面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができるという作用効果を奏するものである。そして、本件明細書において従来の積層構造とされている【図4】の積層構造では、積層体の幅寸法の約2倍の幅のシート状物を積層することが可能であったから(右図参照)、本件発明は、シート状物の幅寸法が積層体の幅寸法の約2倍を超えた場合に初めてその作用効果を奏したものと評価できる。

そうすると、①第2の中間片の幅が、第1の中間片の幅に1/2を乗じた値の90%を下回る場合又は同値の110%を上回る場合、②被告各製品が本件発明の作用効果を奏しない場合のいずれかに該当する場合には、そのような第2の中間片の幅の「略1/2」とは認められず、被告各製品は構成要件Cを充足しないと解すべきである

イ 被告PPJらや原告による被告各製品の計測結果(甲21、22、25、乙A14、26、27、39)によれば、第2の中間片の幅の平均値は、いずれも第1の中間片の幅に1/2を乗じた値の90%を下回っており、また、上記計測結果によれば、被告各製品のシート状物全体の幅寸法は、積層体の幅寸法の2倍を有意に上回るものではなく、とりわけ、第2の折片の面積分大きいサイズのシート状物は存在せず、被告各製品は、本件発明の作用効果を奏していない。

ウ したがって、被告各製品は、構成要件Cを充足しない。

(2)争点1-2(構成要件E(E’及びE2)の充足の有無)について

(原告の主張)

被告各製品における第2の折片は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という機能を有し、第1の中間片の幅の1/2未満であり、かつ、第1の折片の幅より短い幅であるから、本件発明の構成要件E並びに本件訂正発明の構成要件E’及びE2をいずれも充足する。

ア 構成要件Eの第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という記載は、シート状物全体の大きさを第2の折片の面積分を限度に大きいサイズに変更した場合や、伸縮性のある繊維素材を用いたウェットシートを前提とする(段落【0002】)本件発明等において、製造過程でシート全体の長さに多少のばらつきが出た場合であっても、第2の折片が、第1の中間片の幅の1/2以下という幅を持たせたものとして設計されているため、この第2の折片をもって、第1の中間片の幅を設計されている幅になるように調節しているという機能を有することを意味している。例えば、全長が210mm、213mm、215mmというばらつきの長さのシート状物があった場合でも、A=100mm、B=50mm、C=50mmとして、第2の折片の長さDをそれぞれ10mm、13mm、15mmとすることで、従来と変わらないサイズ(A=100mm)の積層体を形成することができるのである(【図1】参照)。

そして、このような構成で形成された積層体は、異なる長さのシート状物を含みながらも、積層体全体としては従来と変わらないサイズに収まっているのであるから、「物」として見た場合であっても、ばらつきを解消する作用効果を有する。

イ 製品の製造には、設計段階において設定した必要な幅よりもやや長い幅、すなわち、第1の中間片の幅を決定し、これに第2の中間片及び第1の折片の幅を加えた幅よりもやや長い幅のシート状物が用いられるため、端の部分がやや余ることになる。そのため、単に折り目を形成するのみでは、第1の中間片を所望の幅とすることはできず、端のやや余った部分を折り返して第2の折片とすることにより、初めて第1の中間片が所望の幅となるのである。このように、第2の折片は、シート状物の端のやや余った部分(長さはシート状物でばらつきがあってもよい)を折り返して形成されることで、第1の中間片を所望の長さにしているのであるから、インターホルダーを用いて製造された被告各製品における「第2の折片」は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という機能(構成要件E)を具備している。

なお、インターホルダーを用いた製造においては、折り加工用ロール(甲12・符号17)の円周上に設けられた摘まみ部(甲12・符号17a)により各折り目が形成された後、各偶数番目(奇数番目)のシート状物の第1の中間片及び第2の中間片によってできる谷部に、次に積層される各奇数番目(偶数番目)のシート状物の端部が奥まで挿入され、第2の折片が折れ目によって折れ曲がった状態で装置に掴まれて積層されていくため、第2の折片が必ず形成される仕組みとなっている(甲11、12)。

(被告らの主張)

被告各製品における第2の折片は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という機能を有しないから、被告各製品は構成要件Eを充足しない。

ア 本件発明における「第2の折片」は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という機能を有する折片として特定されているから、そのような機能を有する全ての物を意味すると解釈される。

イ 被告各製品の設計に際しては、その折り方の特性上、まず、シート状の積層体であるウェットティッシュの仕上り寸法が決定され、次に仕上り寸法のうち幅寸法を基にして、第1の中間片の幅が決定され、その後、第1の中間片の幅方向の中心を超えず、かつ、第1の中間片の外へはみ出さない範囲において、その他の片である第2の中間片、第1の折片及び第2の折片の幅が適宜決定される。このように、被告各製品の製造段階においては、第1の中間片の幅は、シート状の積層体であるウェットティッシュの幅寸法から直接導かれるものにすぎず、かかる幅を決定する過程において、被告各製品の第2の折片は一切関与しないから、設計段階において、第2の折片は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という機能を有しない。

また、製造段階では、第1の中間片は、製造機械であるインターホルダーの折り加工用ロールの円周上に等間隔に設けられた摘まみ部が、ロールの回転に伴って所定の位置に達すると、第1の中間片の一方側の折り目が形成され、次の摘まみ部が所定の位置に達すると、他方側の折り目が形成されるといった一定のピッチで、その両側に折り目が設けられることによって形成される。製造の一連の工程は、【図①】~【図③】のとおりであり、【図①】は、インターホルダーにより原紙が折られている様子を全体的に示した図、【図②】は「第1の折片」に相当する部分が形成される過程をコマ送りで示した図、【図③】は原紙同士が左右互い違いに折りたたまれながら積層される過程をコマ送りで示した図である。


第1の中間片の幅は、上記の摘まみ部同士の間隔によって決定されるものであり、かかる間隔は、製造に用いられた個々のインターホルダーに由来する固有のものであって、製造時にオペレーターが自由に変更できるものではない。このように、第1の中間片の幅は、上記間隔から直接導かれるものにすぎず、第2の折片はその幅を決定する過程に一切関与しないから、第2の折片は、製造段階においても、上記の機能を有しない。

したがって、被告各製品の構成eは、構成要件E(E’及びE2)を充足しない。

ウ 原告は、本件発明の構成要件Eは、製造過程でシート全体の長さに多少のばらつきが出た場合であっても、第2の折片が、第1の中間片の幅の1/2以下という幅を持たせたものとして設計されているため、この第2の折片をもって、第1の中間片の幅を設計されている幅になるように調節しているという機能を有すると主張する。

しかし、これによれば、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整」された結果、「第2の折片」が形成されることになるが、調整の結果「第2の折片」が形成されること(すなわち、調整の副産物として生じる物であること)と、「第2の折片」が調整機能を有していること(調整の主体であること)とは同視できない。「第2の折片」が「第1の中間片」の調整の副産物として生じるものであるということは、「第2の折片」が「第1の中間片」の調整という工程を経て形成されるということであり、「第2の折片」が「第1の中間片」を調整する機能を有することを意味するものではないから、原告の上記主張は失当である。

(3)争点1-3(作用効果不奏功の抗弁の成否)について

(被告らの主張)

本件発明の作用効果を奏したものといえるのは、シート状物の幅寸法が積層体の幅寸法の約2倍を超えた場合であるが、被告各製品は、かかる作用効果を奏していないから、実質的にみて、本件発明の技術的範囲に属しない。

(原告の主張)

被告各製品の第1の折片及び第2の折片は第1の中間片の略1/2であるから、本件発明の作用効果を奏する。

2 争点2(本件発明が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか)について

別紙3に記載のとおり

3 争点3(本件訂正が有効になされ、これにより無効理由が解消するか)について

別紙4に記載のとおり

4 争点4(本件訂正発明が公然実施発明により無効にされるべきものと認められるか)について

別紙5に記載のとおり

5 争点5(原告の損害及びその金額)について

(原告の主張)

被告大創産業が平成28年11月から平成29年7月末までの9か月間に販売した被告各製品の数量は794万6963個であり、被告らが被告各製品の製造、販売により得た利益額は1個当たり10円を下らないから、被告らは、少なくとも7946万9630円の利益を得た。そこで、そのうちの一部である2000万円を請求する。

弁護士・弁理士費用相当損害額としては、200万円が相当である。

(被告らの主張)

争う。

7.裁判所の判断

1 本件発明等の内容等について

(1)本件明細書等(甲2)には、以下の記載が存在する。

-省略-

(2)本件発明等に係る特許請求の範囲及び上記(1)の記載によれば、本件発明等は、①ウェットティッシュを連続して取り出せるように積層したシート状物の積層体に関する発明であり、②包装体の大きさは従前どおりとしながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを課題とし、③第1の中間片、第2の中間片及び第1の折片を有するシート状物に、第1の中間片から積層方向上側に折り返され第1の中間片が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、第1の中間片の幅の1/2以下ないし未満となる第2の折片を設け、シート状物が左右対称となるように折り畳まれた状態で積層されたときに、各偶数番目(奇数番目)のシート状物の第1の中間片及び第2の中間片によってできる谷部に、その次に積層される各奇数番目(偶数番目)のシート状物の第1の中間片及び第2の折片によってできる山部を重ね合わせてシート状物の積層体が形成されるようにすることにより、④従来と比較して第2の折片の面積分だけ大きいサイズのシート状物によって、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができ、また、第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上することができるという効果を得られることを特徴とする発明であると認められる。

2 争点1-1(構成要件Cの充足の有無)について

(1)構成要件Cの解釈について

ア 本件発明等の積層体の各シート状物は、第1の中間片、第2の中間片、第1の折片及び第2の折片で構成されているところ(構成要件B~E)、第1の中間片は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成され(構成要件B)、第2の中間片は、第1の中間片の略1/2の幅に形成され(構成要件C)、第1の折片は第2の中間片と略同じ幅に形成される(構成要件D)ものであるから、第2の中間片は、積層体の幅寸法と略同じ長さの第1の中間片の略1/2の幅であり、第1の折片の幅寸法と略同じ長さに形成されるものとして特定されているということができる。

イ 構成要件C等にいう「略」(ほぼ)とは、一般に、数値との関係で用いられる場合は「おおかた、おおよそ」といった意味を有し、正確又は完全にその数値と一致しないとしても、その数値と同様ということができる程度に近似することを表す語であり、本件発明等における寸法に関する発明特定事項としての「略」という語も同様の意味を有するものと解するのが自然である

ウ また、本件明細書等には、「多用途に用いられるウェットティッシュは、1枚のウェットティッシュの大きさが大きいものが望まれている。」(段落【0004】)、「そこで、本発明は、…包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを目的とする。」(段落【0008】)、「本発明は、従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので、その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる。」(段落【0011】)、「形成されるシート状物積層体自体は、各シート状物の上記第1の折れ線及び上記第3の折れ線近傍において、第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。」(段落【0012】)、「第2の中間片12の長さにあたる部分、つまり第1の折れ線15と第2の折れ線との距離Bは、第1の中間片11の長さ11aの略1/2の長さである。」(段落【0018】)、「以上のように構成されたシート状物積層体1は、従来の積層構造においてはない第2の折片14を有することで、従来と変わらない積層体の幅としても、第2の折片14の面積分だけ従来よりもサイズの大きいシート状物10を積層させることができる。具体的には、シート状物10は、従来使用されるシート状物の大きさと比較して、第2の折片14の面積分、つまり上述のD<Cの関係を有する範囲内で大きさを変更することができ、約25%まで大きいサイズのシート状物を使用することができる。」(段落【0026】)、「第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dが距離C(判決注:第1の折片の距離)よりも大きくなると、出来上がるシート状物積層体1において、…第2の折片14と…第1の折片13とが重なり合い、全体の嵩高状態が、中央部が膨らみ不安定なものとなる。」(段落【0028】との記載がある。

上記記載によれば、本件発明等の課題は、①包装体の大きさを従来と同様に維持しつつ、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供すること、②包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することにあり、本件発明等の効果は、③従来と比較して第2の折片の面積分だけ大きいサイズのシート状物によって、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができ、また、第2の折片が設けられた大きさ分だけ肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上することができるという効果を得られることにあると認められ、本件発明等においては、上記①の課題を解決して上記③の効果を得るために第2の折片を設けているが、本件発明等に係るシート状物のサイズを従来のものより大きくするためには、その前提として、第2の折片以外の部分を可能な限り大きくすることが必要となるものと解される。

すなわち、本件発明等の第1の中間片の幅は積層体の幅と略同じ長さと規定されているところ、第2の中間片及びこれと略同じ幅の第1の折片の長さを第1の中間片の幅の2分の1より小さくすると、第2の折片を設けたとしても、シート状物全体のサイズがその分だけ従来のものよりも小さくなってしまい、上記①の課題を解決して上記③の効果を得ることができなくなる一方、第2の中間片の幅を第1の中間片の2分の1よりも長くすると、第2の中間片同士が中央部で重なり合い、全体の嵩高状態が不安定なものになってしまい、上記②の課題解決に支障が生じることとなる。そうすると、本件発明等の上記課題①及び②を解決し、所期の効果を奏するには、第2の中間片の幅を、第1の中間片の1/2を超えない範囲でこれに限りなく近づけることが望ましいものと認められる

エ 前記のとおりの「略」という語の通常の意義及び構成要件Cにおいて第2の中間片の幅寸法が規定されている技術的意義に照らすと、同構成要件にいう「略1/2」とは、正確に2分の1であることは要しないとしても、可能な限りこれに近似する数値とすることが想定されているものというべきであり、各種誤差、シート状物の伸縮性等を考慮しても、第1の中間片の2分の1との乖離の幅が1割程度の範囲内にない場合は「略1/2」に該当しないと解するのが相当である

オ これに対し、原告は、本件発明等は、容易に伸縮する素材を用いることを前提とし、第2の中間片及び第1の折片の幅に誤差が生じた場合にも、第2の折片によりその誤差を吸収して、積層体が所望とする幅寸法になるように調整することに主眼があるのであって、本件発明等における「略1/2」の語は、1/2を超える場合は含まないが、1/2より短いものは広く許容する意味と解釈すべきであると主張する。

しかし、本件明細書等には、第2の中間片が第1の中間片の幅の1/2より小さい幅となったときに第2の折片がその誤差を吸収することにより積層体の幅寸法を維持することが本件発明等の課題である旨の記載は存在しない。むしろ、前記判示のとおり、本件明細書等には、積層体の幅を従来と同様とした上で、第2の折片を設けることにより「第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物」(段落【0011】)を形成することが本件発明等の課題である旨が記載されているのであって、その課題解決のためには、前記のとおり、第2の中間片の幅を、可能な限り第1の中間片の1/2を超えない範囲でこれに近づけることが望ましいものというべきである。

したがって、原告の主張は採用し得ない。

(2)被告各製品との対比

上記(1)に基づき、被告各製品が構成要件Cを充足するかどうかについて、以下検討する。

ア 構成要件Cの充足性に関し、被告各製品の測定結果として提出されている証拠(甲21、22、25、乙A14、26、27、39)のうち、被告製品②に関する甲25及び乙A39は、本訴の審理中に原告と被告PPJが測定対象について協議の上、原告はロット番号「RC24/3FM13:59」の製品を測定し、被告PPJらはロット番号「YRC24/3FM16:40」の製品を測定することに合意し、それぞれが対象製品を測定した結果を提出したものであり、被告製品③に関する甲21、22、乙A26、27も、同様に、原告と被告PPJらが測定対象について協議の上、原告及び被告PPJらそれぞれの提案に係る同一ロットの製品について、それぞれが測定した結果(原告提案のロット番号「YRF09/3FM13:35」の製品について、甲22、乙A27、被告PPJら提案のロット番号「YRF09/3FM08:12」の製品について、甲21、乙A26)であることは当裁判所に顕著である。

なお、別紙6-1~6-9は、被告各製品の測定結果(乙A14を含む。)であるが、各別紙のA~D欄の単位はmmであり、「平均値」欄には1~80枚目の平均値を、「平均値(1、80枚目)を除く」欄には、異常値を示すことが多いとうかがわれる1枚目と80枚目を控除した2~79枚目の平均値を表示している。

イ 被告製品②について

被告製品②については、上記アの審理経過に照らし、信用性が高いと認められる甲25及び乙A39に基づいて検討することが相当であるところ、原告が被告製品②(YRC24/3FM13:59)について測定した結果(甲25:別紙6-2)によれば、同製品の各シート状物の第1の中間片の幅の2分の1に対する第2の中間片の幅の比率(以下、単に「第2の中間片の比率」ということがある。)が90%~100%の範囲内にあるものは、全80枚のうち3枚にすぎず、その平均値(「平均値(1、80枚目除く)」欄のもの。以下同じ。)も83%にとどまるものと認められる。

また、被告PPJが被告製品②(YRC24/3FM16:40)について測定した結果(乙A39:別紙6-4)によれば、第2の中間片の比率が90%~100%の範囲内にあるものは、全80枚のうち30枚であるものの、同比率がその範囲内にあるものは、いずれも偶数番目のシート状物であって、奇数番目のシート状物にはこれが存在しない上、全体の平均値も84%にとどまるものと認められる。

上記の被告製品②全体における第1の中間片の幅の2分の1に対する第2の中間片の幅の平均比率、その比率が90%~100%の範囲内にあるものの割合及びその分布等に照らすと、被告製品②の第2の中間片が構成要件C「第1の中間片の略1/2の幅」との要件を充足するとは認められない。

ウ 被告製品③について

被告製品③については、上記アの審理経過に照らし、信用性が高いと認められる甲21、22、乙A26、27に基づいて検討することが相当であるところ、原告及び被告PPJがそれぞれ被告製品③(YRF09/3FM08:12)について測定した結果によれば、第2の中間片の幅の比率が90%~100%の範囲内にあるものの枚数及び平均値は、原告測定に係るもので3枚及び82%(甲21:別紙6-5)、被告PPJ測定に係るもので0枚及び81%(乙A26:別紙6-8)であると認められる。

また、原告及び被告PPJがそれぞれ被告製品③(YRF09/3FM13:35)について測定した結果によれば、第2の中間片の幅の比率が90%~100%の範囲内にあるものの枚数及び平均値は、原告測定に係るもので6枚及び82%(甲22:別紙6-6)、被告PPJ測定に係るもので1枚及び81%(乙A27:別紙6-9)であると認められる。

上記の被告製品③全体における第1の中間片の幅の2分の1に対する第2の中間片の幅の平均比率及びその比率が90%~100%の範囲内にあるものの割合等に照らすと、被告製品③の第2の中間片が構成要件C「第1の中間片の略1/2の幅」との要件を充足するとは認められない。

エ 被告製品①(別紙6-1)

被告製品①については、審理の過程において原告と被告PPJが協議の上で対象製品を測定した結果は存在しないが、その第1の中間片の幅の2分の1に対する第2の中間片の幅は、被告製品②及び③と同様であると推認される。また、同被告の提出した測定結果(乙A14:別紙6-1)によれば、同製品における第2の中間片の幅の比率が90%~100%の範囲内にあるものは、全80枚のうち2枚にすぎず、その平均値は80%にとどまるものと認められるところ、同測定結果は、被告製品①における第2の中間片の比率が被告製品②及び③と同様であることを裏付けるものということができる。

したがって、被告製品①の第2の中間片が構成要件C「第1の中間片の略1/2の幅」との要件を充足すると認めることはできない。

(3)小括

以上のとおり、被告各製品における第2の中間片は、構成要件Cの「第1の中間片の略1/2の幅」との要件を充足するとは認められないので、被告各製品が本件発明等の技術的範囲に属するということはできない。