洗濯機のフィルター事件(その1)

投稿日: 2017/05/11 1:30:36

今日は平成28年(ワ)第298号 特許権侵害差止等請求事件(第1事件)及び平成28年(ワ)第2610号 債務不存在確認等請求事件(第2事件)について検討します。最初にネタバラシすると、この事件は抵触性について裁判所は判断していません。また、有効性についても構成の対比はされていません。したがって、いわゆる特許技術的な面で検討すべき点はほぼありません。

一方、この事件は弁理士試験の短答式筆記試験やひょっとしたら口述試験で出題されそうな内容です。新規性喪失の例外について争いになった事件です。

今日は各手続きの時系列の整理までです。

 

1.各手続きの時系列の整理

◎ 特許権者は最初実用新案で出願しましたが、後にこの実用新案登録出願を基礎として優先権を伴う特許出願を行い、それが本件特許となっています。

◎ 実用新案登録出願日の約6か月前に東都生活協同組合チラシにより新規性を喪失しているために新規性喪失の例外適用の手続きをとっています。

◎ 原告は被告製品が遅くとも平成27年(2015年)1月頃に販売等されていたと主張しています。そうすると原告は被告製品の情報を入手後に実用新案登録出願を基礎とする優先権を伴う特許出願をしたものと考えて間違いないと思われます。

◎ 被告が請求人となった特許無効審判についての審決はまだ出ていませんが、侵害訴訟での無効主張と同じ理由に基づくものであれば、審決の予告が出ているので、請求成立(特許無効)になる可能性が高いと思われます。