アルミサッシ改修工法事件(その1)

投稿日: 2017/04/14 8:30:38

今日は平成26年(ワ)第7643号 特許権侵害差止等請求事件について検討します。この事件の原告はYKK AP株式会社及び日本総合住生活株式会社、被告は三協立山株式会社です。YKK AP株式会社はYKKグループの中の建材事業を担っているそうです。一方、日本総合住生活株式会社は集合住宅管理業務がメインの会社のようです。これに対して三協立山株式会社は建材事業、マテリアル事業、商業施設事業を抱えています。

本件は分割出願と特許無効審判請求が非常に多いです。そのため、ざっと目を通すだけでも大変なので、のんびりのんびり検討していきます。

今日は各手続の時系列の整理まで投稿します。

 

1.1 各手続の時系列の整理(登録まで)

 

1.2 各手続の時系列の整理(登録以降)

 

1.3 各手続の時系列の整理(ファミリ)

 

1.4 各手続の時系列の整理(特願2011-180270(特許第5246721号))

① 分割出願が第一世代、第二世代合わせて7件もあります。このうち第一世代の中の4件は原出願の出願日から約一か月後に分割されているので初めから分割出願するつもりだったと思われます。本件特許出願は原出願の出願日から約3年後に分割されています。この時点では原出願と既に分割した4件を合わせた5件のうちの1件について1年以上前に特許になっており、他の3件については特許庁から拒絶理由通知も受けておらず、また閲覧請求等もされていません。したがって、分割する必要性がありません。そこで、原告・被告のホームページをチェックしたところ、共にこの判決を受けてニュースリリースを発行していました。中でも被告のニュースリリースによれば対象となる工法(HOOK工法)を平成18年5月から提供していた、と書いてありました。平成18年は西暦だと2006年なので本特許出願の分割時期と一致します。分割出願の日は2006年3月17日なのでHOOK工法を販売し始めた2006年5月よりも前ですが非常に近いです。当然販売開始前に広報発表等するでしょうから、原告が当該工法の販売開始以前に情報を得ていた可能性は高いと思います。そう考えると分割出願の動機も時期も納得できます。

② 第二世代の分割出願である特願2011-180270(特許第5246721号)は本件特許出願が拒絶査定不服審判に係属したために保険の意味で行われたと思います。こちらについても被告から特許無効審判が請求されていました。

③ 本件特許に対する特許無効審判は今のところ4件請求されましたが、いずれも被告が請求したものです。本件特許が登録されたのが2011年10月7日ですが、最初の特許無効審判が請求されたのは約5ヶ月後の2012年3月16日です。また、訴訟が起こされたのは2件目の特許無効審判の審決が出た後の2014年です。こういった状況からすると本件の原告であるYKK AP等は当初訴訟を起こすつもりはなく当事者間の交渉で解決するつもりだったと思われます。

④ ここでは各特許無効審判の内容については触れませんが、4件特許無効審判を請求して訂正することもなく特許が維持されていることから新規性や進歩性の無効理由が無かったか、弱かったものと思われます。そうなると、記載要件違反の無効主張がメインではないかと想像されます。この点については次回以降に審決や審決取消訴訟の内容をチェックしてみます。